【元プロが本音で解説】ペットショップ店員の仕事内容は?求人サイトに書いていないリアルな情報を教えます
「動物が好きだから、ペットショップで働きたい!」
「ペットショップって、動物を販売する以外にどんな仕事があるの?」
そんな疑問に、大手ペットショップにて表彰経験のある「元・プロのペットショップ店員」がお答えします。
今回は、ペットショップ店員の仕事内容やリアルなお話をご紹介します。
ペットショップでの仕事に興味がある方は、ぜひ最後まで読んでいただき今後の参考にご活用ください。
【生体管理編】ペットショップ店員の仕事内容
1日2回+αの給餌
ペットショップでは生体に1日2回の給餌を行います。
生体の月齢や状態に合った状態のフードを与え、食べ方・残し方によって健康状態を把握する業務です。
月齢の若い生体を取り扱うことが多いペットショップでは「完食」を絶対的な前提とし、残した場合でも粉ミルクや補助食を追加して与え「必要量を必ず食べてもらうこと」を最優先事項とします。
食欲が少ない個体や自力での完食が難しい個体は、ミキサーでペースト状にしたフードをシリンジやスプーンなどを使って与えます。
投薬や獣医師連携
生体の状態に合った投薬プランをスケジューリングし、実際に投薬を行ったり、低血糖のリスクが高い小さく若い個体には、給餌時間以外に栄養補助を行うことがあります。
本部や提携先の獣医師と連携を取りながら、最善の投薬・処置を行います。
投薬は飲み薬だけではなく、塗り薬や目薬なども含まれます。
また適切な月齢に達した個体がいれば、混合ワクチン接種のために獣医師にアポイントメントを取ることもあります。
排泄物処理・清掃
生体の排泄物の処理・清掃を行います。
ウンチやおしっこを片付けてペットシーツを取りかえるのはもちろん、犬舎入れ替えのタイミングでは犬舎全体の清掃・消毒を行います。
また、激しい嘔吐や水下痢が発生した場合は、最悪の可能性のひとつとして「パルボウイルスの発生(※)」を疑い、常に危機意識を高く持つよう努めます。
※パルボウイルス:子犬・子猫に発生する感染症。特に犬パルボウイルスは致死率・感染率共に高い。
簡単なトリミング
健康維持のためにはもちろん、常にベストな状態でお客さんに触れあってもらうためにも、定期的にトリミングを行います。
主なケアは爪切りや耳掃除、ブラッシング、簡単なカット(犬の場合は髭のカットも含む)、シャンプーなどです。
トリミングを通してスキンシップができるため「触られること」に慣らせられ、同時に体調不良や疾患・病気に気づきやすくなります。
人慣れ・生体慣れをさせる
実際にお客さんに触れられた時に脅えてしまわないよう、スキンシップをして人慣れをさせます。
また同じ犬舎やスペースに複数体の生体を入れ、生体同士でコミュニケーションを取らせて社交性を養わせるのもペットショップ店員の仕事です。
たとえば犬同士でコミュニケーションを取ることで、甘噛みの力加減を覚えさせることもできます。
犬舎から出しすぎると疲れが溜まり免疫力低下に繋がるため、対人・対生体コミュニケーションの量は健康状態を見て判断します。
【接客編】ペットショップ店員の仕事内容
お客さんへのヒアリング
来店したお客さんに飼育の意思をヒアリングし、お客さんの希望する生体を勧める仕事です。
ヒアリングの内容によっては特定の種類や個体を発注したり、別の店舗から移動をさせたりする場合もあり、柔軟な対応が必要です。
家族構成や予算、ライフスタイルなどから理想の生体を決定し、売約や相談期間などのシステムを交えながら一緒に「家族」を見つけます。
ペットショップ店員は、実質的には「命の売買をする仕事」です。そのため、お客さんも「信頼できるスタッフか」を見定めています。
信頼に応えるために、日頃から勉強をして生体への理解を深めておくことが大切です。
徹底的な飼育説明
晴れて新しい家族が決定した際には、お客さんに徹底的な飼育説明をします。
各会社のマニュアルに沿い、お客さんの不安がなくなるまでとことん寄りそい説明することが、販売担当者としての責務です。
健康・しつけ状態のシェアや次回ワクチンの予定日、給餌や家庭でのしつけの方法などを細やかに伝え、お客さんの「ペットオーナー」としての自覚を後押しします。
ペット保険やサービスの紹介
生体販売にあたり、会社が提携している(もしくはオリジナルの)ペット保険や生命補償のサービスを紹介・販売します。
飼育説明も各種サービス紹介も、基本的にはお客さんと一緒に資料を読みながらの説明になるため練習が必要です。
ペット販売にあたり、お客さんの金銭負担・不安の軽減も重要なミッションです。
お客さんのライフプランに沿った提案ができるよう、ここでもカウンセリングを行いながら不安を取りのぞきます。
【雑務編】ペットショップ店員の仕事内容
毎日の消毒
子犬や子猫は免疫力が低く、さまざまな病気に感染しやすい状態です。
ペットショップでは毎日生体を1匹ずつ犬舎の外に出し、中を手作業で消毒します。
床や壁やガラスはもちろん、トイレや給餌用トレーなども消毒して清潔な状態をキープします。
年末年始などでお店がお休みの日も、消毒や給餌のために従業員の誰かは出勤しなくてはいけません。
夜のベッド作り
閉店後も空調は適温のまま維持しますが、生体が暖かい場所で安心して眠るために毎晩ベッドを用意する必要があります。
多くのショップで用いられているのは、新聞紙やいらない紙を縦に何枚も割き、大量の細長い紙屑で犬舎をいっぱいにする方法です。
翌朝出勤したら前日の紙屑を捨ててから消毒を行い、夜にはまた紙屑を作って退勤します。
生体の発注
生体が売れたり店舗間移動をした際には、新しい生体を発注します。
本社側で店舗環境に見合った生体を届けることもありますが、店舗側からある程度のリクエストができるケースも多くあります。
また、お客さんからのリクエスト(主に種類やカラー、大きさ、血統など)があった場合、条件を本社に伝えて発送を待ちます。
ポップ作りなど販売促進の努力
ペットショップの仕事の基本は、接客販売と生体管理の繰り返しです。手が空いた際にはポップを作ったりインテリアを変えたりして、販売の促進を狙います。
特に生体ごとの性格説明のポップは、見ただけでは分からない生体の魅力を伝えるためにとても役立ちます。
お客さんとの会話や接客の糸口にもなるため、積極的に作成するべきでしょう。
マニュアルに応じた事務作業
一般的な販売業と同じように、ペットショップ店員にも細かな事務作業があります。
販売頭数のレポートやノルマ・目標の確認、雑貨やフード・薬の発注、日報の送信などがあります。
また、百貨店のテナントの場合は百貨店専用マニュアルに従った売上計上方法も存在するため、現場のルールに従います。
会社によっては、販売後のお客さんにアフターサービスとして電話をかける仕事もあります。
ペットショップ店員に必要な資格・経験
無資格でも店員にはなれる
ペットショップ店員になるためには、資格は必要ありません。
アルバイトでも正社員でも、無資格で働くことができます。
トリミング作業で刃物を使う際も、人間の美容師と違って特別な資格はいりません。
動物を愛する気持ちと仕事への情熱があれば、誰でも面接を受けられます。
専門知識を持った人材が重宝される
無資格で働ける仕事ではありますが、専門的な知識を持っている人はとても重宝されます。
動物関連の専門学校や通信教育で学んだ実績がある人は、採用の際にも優遇されるでしょう。
ペットショップ店員になった後で、愛玩動物飼養管理士やペット販売士、トリマー、動物看護士などの民間資格を取得する人も多いです。
ペット保険の販売には資格が必要
ペットショップで生体を販売する際には、同時にペット保険を紹介・販売するケースがあります。
生体販売は無資格で可能ですが、ペット保険の販売には専用の資格が必要になります。
ペット保険の内容によって必要な資格は異なりますが、主には少額短期保険保証人や損害保険募集人の試験を受験し、合格しなくてはなりません。
会社や資格によっては会社の費用で受験することも可能です。
開業するためには「動物取扱責任者」の登録が必要
ペットショップ企業に入社して働く場合は必要ありませんが、ペットショップを開業する場合は「第一種動物取扱責任者」の登録が必要です。
第一種動物取扱責任者の登録は、営利目的で哺乳類・鳥類・爬虫類を取りあつかう際に必要になり、各都道府県の動物愛護担当部局などに申請をして取得します。
動物取扱責任者は各店舗に最低1人の設置が必ず必要で、取得のためには実務経験が必須です。
そのため既存の動物取扱責任者が異動や退社をした際は、自分が取得をする必要があるかもしれないと覚えておきましょう。
ペットショップ店員のリアル
ペットショップ店員の平均収入
ペットショップ店員の平均年収は200万~400万円程度です。アルバイトの場合は平均時給900円~1100円とされています。正社員もアルバイトも、特別に高収入ではありません。
会社によっては販売した頭数や金額によってインセンティブが入るため、販売の腕に自信がある人は収入を増やすことが可能です。
また大手ペットショップであればキャリアアップシステムも完備されているケースがあるため、求人内容をしっかりと確認しましょう。
ペットショップ店員の将来性
ペット文化が廃れない以上、将来的にも安定感がある仕事だといえます。
しかしアメリカを含む欧米のほとんどの国ではペットショップが廃止されているように、世界的に見るとペットショップ事業自体が縮小傾向にあることは事実です。
無資格で働けるペットショップ店員ですが、関連資格を取得することで将来の選択肢が広がります。
昨今はトリミングサロンやペットホテル、動物病院が併設されているペットショップも多いことから、専門的な知識・技術を習得すればよりニーズが高まるでしょう。
ペットショップ店員に必要な適性
まず大切な要素は「動物が好きであること」です。
動物を愛して慈しむ心を持っていることが大前提になります。
命を扱う職業のため、責任感が強い人材が求められます。また、給餌や投薬は毎日根気よく続ける作業です。掃除や消毒などの肉体労働も多いため、体力があり忍耐強い人に向いています。
そしてペットショップ店員は「動物と触れられる仕事」である前に「販売員」であることも忘れてはいけません。
人との会話やコミュニケーションが好きな人や、数字で評価されるとモチベーションが上がる人が向いているでしょう。
まとめ
今回は、ペットショップ店員の仕事内容やリアルなお話をご紹介しました。
ペットショップ店員は、生体という「商品」を扱う以上、生体管理の丁寧さは当然として「販売員としての実績」も求められる仕事です。
命を取りあつかう仕事のため常に精神的なプレッシャーがあり、肉体的にも大変な業務が多い傾向です。
しかし「毎日動物と触れあえる」のは、ペットショップ店員ならではの魅力といえます。
生体の家族が決まった瞬間は、これ以上ないほどのやり甲斐を感じられます。
ペットショップ店員に興味がある方は、ぜひ勇気を出して求人を探してみてはいかがでしょうか。