古来から現代にまで続く「月とうさぎの不思議な関係」を深掘り
「月にはうさぎがいる」「満月ではうさぎが餅つきをしている」という言い伝えを聞いたことがある人は多いでしょう。
しかし、その由来について知っている人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、月にうさぎがいると言われる理由や、月でうさぎが餅つきをしていると言われる由来について調べました。
古来から現代にまで続く、月とうさぎの不思議な関係についてお楽しみください。
月にうさぎが住んでいると言われる由来
日本には「月にうさぎが住んでいる」との言い伝えがあります。これは日本だけでなく、韓国や中国などアジア諸国に伝わる話です。
月にうさぎが住んでいると言われるのには、いくつもの説があります。その中でもインドの伝説「ジャータカ神話」によるものが有名です。
インドで紀元前1世紀頃からはじまったジャータカ神話は、その後日本に伝わり、7世紀はじめに広く知られるようになりました。
日本では「今昔物語集」の中で「月のうさぎの話」として伝えられています。
ここで、月にうさぎが住んでいると言われる由来となった「月のうさぎの話」をご紹介しましょう。
あるとき、うさぎとサルとキツネが、みすぼらしい老人に出会いました。
老人は、疲れ果てた様子で痩せこけています。
そんな老人のために、3匹は食べ物を探すことにしました。
サルは木の実を集め、キツネは川で魚をとり老人にささげました。
一方、うさぎは一生懸命に探し回りましたが、食べ物を見つけられません。
老人は何も持ってこないうさぎに対して、「お前はサルやキツネとは心意気が違うな」と責めます。
悩んだうさぎは、サルとキツネに柴を刈ってきてそれを焚くように頼みました。
そして、老人に「私を食べてください」と言って火の中に飛び込み、自らの身をささげたのです。
実はこの老人は、3匹が仏の心をもっているのかどうかを試そうとした神様「帝釈天(たいしゃくてん)」でした。
帝釈天はうさぎの行動をあわれに思い、月の中によみがえらせたということです。
月のうさぎの話を楽しめる絵本2選
月にうさぎが住んでいると言われる由来となった「月のうさぎの話」は、絵本で楽しむことができます。
ここでは、2冊の絵本を紹介します。
つきのうさぎ|いもとようこ
こちらは、絵本作家「いもとようこ」さんが文と絵を担当された絵本。
優しい描き方で、子どもから大人まで幅広い人の心に響きます。
読者からは
・いもとようこさんの絵がすばらしい
・ 手元にずっと置いておきたい絵本
・ 人の命やいじめについても考えるきっかけになるのでは?
といった感想が聞かれました。
月にうさぎが住んでいると言われる由来はもちろん、日本に伝わる昔話の心を感じられる1冊です。
月のうさぎ|瀬戸内寂聴
こちらは小説家としても知られる、尼僧の「瀬戸内寂聴」さんが書かれた絵本。
瀬戸内寂聴さんは「未来に生きる子どもとすべての大人のために、このお話を贈りたい」と感じられたそうです。
読者からは
・現代人が忘れている心を取り戻させてくれる
・ 自己犠牲だけを重んじているわけではなく、非常に深い
・ 弱者を思いやる心を育めると思う
といったような感想が寄せられていました。
この絵本を通して、優しい愛と豊かな想像力を感じてみてくださいね。
月でうさぎは餅つきをしている?
ここからは、月でうさぎが餅つきをしていると言われる由来について紹介します。
まず、月のどの部分が餅つきをしているように見えるのかを確認しておきましょう。
餅つきをするうさぎに見えるのはどの部分?
満月をじっくり観察すると、明るい部分と薄暗い部分が見えるでしょう。
日本ではそのうちの、薄暗い部分が餅つきをするうさぎに見えると言われています。
薄暗い部分は、「海」と呼ばれ、月の内部から吹き出した溶岩が冷え固まってできた地形です。
ちなみに、この薄暗い部分から連想するものは国によって異なります。
以下に一例をご紹介します。
・中国:薬草を挽くうさぎ
・インドネシア:編み物をする女性
・南ヨーロッパ:カニ
・北ヨーロッパ:本を読む女性
・東ヨーロッパ:女性の横顔
同じ満月を見て違うものを連想するなんて、とてもおもしろいですね。
由来ともいわれる「玉兔搗薬」のお話を紹介
満月の中でうさぎが餅つきをしていると言われる由来には、たくさんの説があります。
ここでは、中国から伝わった「玉兎搗薬(ぎょくとどうやく)」の伝説について紹介しましょう。
玉兎搗薬とは、月でうさぎが薬をついているという伝説のことです。
「薬をつく」という表現は、私たちにはなじみがありませんが、臼に入れた材料を杵でたたいたりつぶしたりして粉などにすることを意味します。
そもそも古代中国では、月に住むうさぎは不老不死の薬をついていると考えられていました。
ここでは、多くのストーリーが存在する玉兎搗薬の伝説の中から、ひとつの物語をご紹介します。
あるところに、うさぎの夫婦と4人の女の子が暮らしていました。
ある日、お父さんうさぎが宮殿へ行く途中で、「嫦娥(じょうが)」という名前の女性が身柄を拘束されているのを目にします。
どうやら、困っていた百姓を助けるために禁じられていることをしてしまい、捕まったようでした。
お父さんうさぎは嫦娥に同情しましたが、自分ひとりではどうすることもできません。
月の宮殿で孤独に過ごしている嫦娥をあわれに思ったお父さんうさぎは、自分の子どもを連れて嫦娥のところへ行こうと考え、お母さんうさぎに相談します。
しかし、お母さんうさぎは同意してくれません。
その上、子どもたちも両親と離れたくないと涙を流します。
けれどもお父さんうさぎの決心は固く、子どもたちに「もし私が嫦娥と同じような境遇で孤独になったとしても、一緒に来てくれないのか。嫦娥は立派な行いをしたはずなのに、そのことに同情できないのか」と問いかけたのです。
お父さんうさぎの気持ちを理解し、嫦娥のもとに行くことを決心した子どもたちの中から、夫婦は一番幼い女の子を行かせることに決めました。
その子はひとりで嫦娥のいる月の宮殿に行き、その後薬をつくようになったということです。
中国の「薬をつくうさぎ」という伝説が日本に伝わり、「餅をつくうさぎ」に変化したと考えられています。
変化した理由にも諸説ありますが、そのひとつに、満月を意味する「望月(もちづき)」から「餅つき」に転じたという考えがあるようです。
由来となる説はほかにも多数ある
満月の中でうさぎが餅つきをしていると言われる由来について、玉兎搗薬の伝説以外に以下のような説も唱えられています。
・ジャータカ神話に登場した老人(帝釈天)に餅をささげるために餅つきをしている
・食べ物に困らないために餅つきをしている
・お米がたくさん実ったことに対する感謝の意味を込めて餅つきをしている
うさぎが月で餅つきをしているという言い伝えには、非常に長い歴史があるため、その由来もさまざまなようですね。
うさぎが「お月さまに帰る」の意味とは
うさぎの飼い主さんたちの間では、うさぎが亡くなることを「お月さまに帰る」と言うことがあります。
これは月にうさぎがいるという伝説になぞらえたもの。
夜空から自分たちを見守ってくれていると思うと、愛うさぎを亡くした悲しみが少し癒されるのかもしれません。
たくさんある!月とうさぎが登場する話
月とうさぎのペアは、多くのマンガや本などに登場しています。
それほどまでに私たちの心に溶け込んでいるのでしょう。
ここでは月とうさぎが登場するマンガや本の一例を紹介します。
美少女戦士セーラームーン|武内 直子
1990年代、女の子たちに大人気だった「美少女戦士セーラームーン」。
主人公の名前が「月野うさぎ」だったり、パートナーの黒猫の名前が「ルナ」だったりと、アニメに登場するものの名前やデザインには、月やうさぎが多く登場しています。
「月に代わっておしおきよ!」の決めゼリフも有名ですよね。
おつきみうさぎ|中川 ひろたか
月やうさぎが登場する、お月見関連の絵本は多く出版されています。
こちらの絵本もお月見の季節にぜひ読みたい1冊です。
お月見のためにすすきを取りに来た子どもたちが不思議なうさぎを発見し、連れて帰るところからお話がはじまります。
ほのぼのとした展開のお話で、小さい子どもからも人気があるようです。
月のうさぎのおかしやさん|岡野 薫子
絵本だけでなく児童書にも、うさぎが登場するシリーズはよくみられます。
こちらは小学生中学年向けの児童書で、うさぎ村のお菓子屋さんでお手伝いをすることになったうさぎのお話です。
ほっこりするかわいらしいお話で、子どもが夢中になって読んでしまうようです。
まとめ
月とうさぎには、古くからの伝説が関係しているようです。
インドや中国に伝わる伝説が日本に伝わり、現代にまで言い伝えられているなんて、なんだか壮大なスケールですよね。
月を見上げながら、ときにはこんな伝説にも思いをはせてみてはいかがでしょうか。