寂しさや不安がストレスに!愛犬の「メンタルケア」を意識してみよう

玄関で飼い主を待つ犬

犬も人間と同じように、精神的な要因によって心身の不調を起こすことがあります。

群れで生きる習性がある犬にとって、寂しさや不安感が大きなストレスとなるためです。

特に愛犬のお留守番について、寂しさからストレスになっていないか心配している飼い主さんも多いのではないでしょうか?

言葉で伝えることができない愛犬のメンタルケアは、愛犬の行動をよく観察し、日頃の接し方や住環境から考えてあげることがポイントです。

今回は「愛犬のメンタルケア」について詳しく解説します。

犬が寂しさや不安を感じる原因

テーブルにあごをのせる犬

家族の増減があった

犬にとって自宅は自分のテリトリーで、共に暮らす家族は大切な仲間です。

その仲間が急に不在になると、愛犬にとって大きな環境の変化となります。

また、自分のテリトリー内に新しい家族が増えることにも敏感です。

以下のように家族の増減があるときは、愛犬が不安を覚えやすいと考えられます。

・子供が一人暮らしを始めた
・結婚して同居を始めた
・赤ちゃんが産まれた

親しい家族が不在になった寂しさや、新しい家族が増えた戸惑いが愛犬の不安の原因になると言われています。

自分だけ仲間はずれになった

自分だけ同じものが食べられなかったり、自分だけお留守番させられたりするなど、まるで自分だけが仲間はずれになったかのような場面でも愛犬が不安を覚える可能性があります。

自分だけ仲間はずれになる不安によって「自分の存在をアピールしなくちゃ!」と躍起になり要求吠えを続けることもあります。

お留守番の時間が長い

犬にも自立心があり、常に誰かと行動を共にするわけではありません。

成犬になると日中は眠る時間も長くなるため、適度な時間のお留守番であれば難なく過ごすことができるでしょう。

しかし、犬にはもともと群れで暮らす習性があり「ひとりぼっちの状態」が長すぎるとストレスになることがあります。

飼い主さんとの関係が密で依存傾向がある場合、常に飼い主さんと一緒にいないと不安になる「分離不安」の状態に発展することも少なくありません。

安心できない環境

愛犬が過ごす住環境の良し悪しは、上記のお留守番の件にも繋がります。

愛犬が安心して過ごせる住環境であれば、お留守番の時間中に強い不安を覚えずに済むでしょう。

しかし「外から物音が聞こえる」「プライベートスペースがない」ような愛犬にとって安心できない住環境であると、自分のテリトリー内にいるにもかかわらず常に緊張しながら警戒をしなくてはいけなくなります。

こんな行動に注目!犬のストレスサイン

前脚を舐めるビーグル

無駄吠え

愛犬が過剰に吠えたり鳴いたりすることは「無駄吠え」と呼ばれますが、犬にとっては無駄なことではなく、何か理由や目的がある場合が多いです。

無駄吠えの理由として、大きく分けると「要求がある」または「警戒している」の2つが考えられます。

吠えたり鳴いたりといった行動は、自分以外の誰かとのコミュニケーションとして行います。それが飼い主さんに対してなのか、他の犬に対してなのか、それとも物音などの外部情報に対してなのかは吠える理由によって異なりますが、過剰に吠えたり鳴いたりするということは愛犬が冷静さを失うほどの理由があると考えてよいでしょう。

同じ行動を繰り返し続ける

自分の尻尾を追いかけてぐるぐると回り続けたり足先を舐め続けたりするなど、同じ行動を過剰に続けるときは「常同障害」が疑われる場合があります。

これは犬や猫の不安障害の1つで、混乱が生じたりストレスが溜まったりした際にそのこととは全く関係のない行動を繰り返し行い続けるという症状です。

慢性的なストレス下に置かれることで、常同障害の行動がエスカレートする恐れがあります。

自分の身体を舐めたり噛んだりし続ける

常同障害の症状の1つに、痒みや痛みなどが原因ではないのに自分の身体を舐めたり噛んだりし続けるものがあります。

舐めたり噛んだりし続けることによって身体が傷付き、皮膚炎を起こすことがあります。

皮膚炎による痛みや痒みで噛むのか、噛み続けることで皮膚炎を起こしたのかを見極めることが重要です。

あくびが多い

犬のあくびは生理現象だけでなく、「やめて」「冷静になって」というボディランゲージでもあります。

愛犬が頻繁にあくびをしているときは、何らかのストレスを受けている可能性があるでしょう。

身体の震え

犬も人間と同じく、恐怖を感じた際に身体がぶるぶると震えてしまうことがあります。

病院の待合室にいる時や雷が鳴っている時などに震えが起こることも少なくありません。

気をつけたいポイントは、私たちが何とも思わない物事に愛犬が恐怖を感じている可能性があるということです。家電の運転音やカメラのシャッター音、人間には聞こえない音域の音など、犬は私たちにとっては恐怖ではないものを怖がることがあります。

マウンティング

対象に前足でしがみつき腰を振る行動を「マウンティング」と言います。

マウンティングは性的な本能から行うイメージが強いですが、実は他の理由で行うことも多く、オスだけでなくメスも行うことがあります。

飼い主さんに対してマウンティングをする場合、かまってほしい気持ちや愛情表現から行っていることが考えられます。

マウンティングは「自分の方が地位が上だぞ」と上下関係をアピールするために行う場合もありますが、飼い主さんに対して行う場合はコミュニケーションや遊びが不足している可能性も視野に入れて考えてみましょう。

愛犬のメンタルケアを怠ると心配なこと

トイレットペーパーをビリビリにする子犬

体調不良につながる恐れがある

愛犬の心を蔑ろにしてしまうと、精神的な理由から食欲不振や元気の消失が見られ体調不良につながる恐れがあります。

人間の「うつ」の状態のように、散歩や遊びへの意欲が低下してしまうこともあるでしょう。

飼い主さんへの依存心が高まり、飼い主さんの姿が見えないと強い不安を覚える「分離不安」の状態になると、破壊行動や無駄吠えなどの行動が見られる場合もあります。

飼い主さんや家族との関係性が悪くなる

犬と人は信頼関係や愛情で結ばれます。

愛犬が寂しい思いをすることによって信頼関係がうまく構築できず、飼い主さんやその家族との関係が悪くなってしまう恐れがあります。

問題行動の原因となる

犬は「かまってほしい」気持ちを過剰にアピールすることもあり、愛犬のワガママさや問題行動に飼い主さんが疲弊してしまうことも心配です。

愛犬の問題行動は叱りつけるだけでなく「なぜするのか」を見極めて、根本的な対処をしてあげることが重要です。

愛犬のメンタルケアの方法

犬とおもちゃで遊ぶ女性

1. 毎日の散歩や遊びを充実させる

毎日の「楽しい!」を充実させてあげることは、愛犬のメンタルケアの1つです。

犬にとって自分のテリトリーを散策したり思い切り走ったりすることは本能的な欲求を満たすもので、「引っ張る」「追いかける」などの遊びも犬の狩猟本能を満たすものです。

日々の運動や遊びの中で、愛犬は欲求が満たされるだけでなくストレスを発散することもできます。

2. コミュニケーションを大切にする

愛犬の極度の不安感は「自分は飼い主さんに注目されていないのでは」という焦りによるものもあるでしょう。

飼い主さんとの信頼関係が構築されることにより、愛犬は不安を覚えなくなります。

そのためには、愛犬と飼い主さんとの日々のコミュニケーションが大変重要です。

犬は人間の言葉を話しませんが、単語の意味や飼い主さんの声を覚えると言われています。また、犬は飼い主さんの表情から感情を読み取れるという研究結果もあります。

声かけ・アイコンタクト・スキンシップなどによる愛犬とのコミュニケーションを大切にしてみましょう。

3. 「褒める」を忘れない

正しい行いをすれば褒められ、間違った行いをするとたしなめられることよって、愛犬はさまざまなことを学習していきます。

「しつけ」と聞くとしっかり叱ることがイメージされやすいですが、それと同じくらい「正しく褒める」ことも大切です。

愛犬は正しい行いをして褒められることによって「飼い主さんに認められている」という自信を持てるでしょう。

4. 住まいを工夫する

犬は自分のテリトリーを大切にし、そのテリトリーに危険が及ぶと警戒します。

犬は耳がとてもよいので、外からの音や声には特に反応しやすいですね。

愛犬が警戒や不安を感じず安心して過ごせるよう、住まいを見直すことが大切です。

また、室内に愛犬がひとりでくつろげるプライベートスペースをつくることも重要と言われています。プライベートスペースは「怖くてもここに逃げ込めば安心」という避難場所にもなるためです。玄関の近くは人の出入りが多く緊張しやすい場所ですので、神経質な子の場合は居場所にしない方がよいでしょう。

コミュニケーションや遊びという「接し方」の面からだけでなく、住環境からも愛犬のストレスを考えてみてくださいね。

5. 「噛めるおもちゃ」を用意する

家具や柱などを噛んで破壊してしまう場合、愛犬にとって「気持ちよく楽しく噛めるもの」がない、または破壊することでストレスを発散しようとしていることが原因かもしれません。

犬の歯は鋭く、顎の力は強靭です。「噛む」という行為は人や他の動物を傷つける恐れがあるため、愛犬には甘噛みを含めて「人や動物を噛んではいけない」と教える必要があります。

しかし犬にとって「噛む」行為は本能的なものなので、完全に禁止させられるとストレスが溜まる恐れがあります。

愛犬には噛んでもよいもの、安全に噛んで遊べるものを用意してあげることもメンタルケアにおすすめです。

留守番の時間が長い場合も、安全に噛んで遊べる楽しいおもちゃがあると退屈が紛れるでしょう。

まとめ

飼い犬を抱きしめる女性

愛犬をお留守番させなくてはいけないことに胸を痛める飼い主さんは多いと思います。

犬はひとりぼっちの時間が長すぎると不安を覚えやすいですが、飼い主さんとの信頼関係がしっかり構築できていれば頑張れるはずです。

「ちゃんと帰ってくる」「いつも自分を思ってくれている」という飼い主さんへの信頼のほか、「安心できる場所である」という住環境への信頼も重要です。

愛犬のためのメンタルケアのため、日頃の運動や遊びなどでストレスを発散し、スキンシップの時間で愛犬との信頼関係を強固にするとともに、愛犬が安心できる住まいづくりをしてみてはいかがでしょうか?