犬の肥満の原因は?注意するべき病気やダイエットのコツも!
愛犬が可愛いからと、ついついフードやおやつを与えすぎている飼い主さんは多いものです。
しかし、過度な甘やかしは肥満の原因となり、さまざまな病気のリスクを引きあげてしまいます。
今回は、犬の肥満の原因や注意点などをご紹介します。肥満が引きおこす病気のリスクを知り、健康的な生活習慣を取りもどしましょう。
犬の「肥満」について学ぼう
犬の肥満の基準
犬の体型を判断する指針の一つとして、「ボディコンディションスコア(BCS)」があります。
BCSを知っておくと、専門知識を持たない人でも肥満傾向に気づくことが可能です。
BCSを判断するための体型の目安は、以下の通りです。
■BCS1■
「痩せ」の状態。外から肋骨や骨盤などの骨が観測できる。触っても脂肪がわからず、腰のくびれが顕著。
■BCS2■
「やや痩せ」の状態。肋骨を容易に触れる。腰のくびれや腹部の吊り上がりがはっきりと認識できる。
■BCS3■
「理想的な体型」。過剰な脂肪がなく肋骨が触れる。上から見て肋骨の後ろ部分にくびれがあり、横から見て腹部の吊り上がりが見える。
■BCS4■
「やや肥満」の状態。脂肪があるものの肋骨が触れる。腰のくびれが腹部の吊り上がりは、顕著ではないがやや見える。
■BCS5■
「肥満」の状態。肋骨が触れない。腰のくびれがほぼ(まったく)ない。腹部が垂れさがっている。
以上から、一般的に「BCS4以上の体型が肥満傾向」だと判断できます。
犬は「あげた分だけ食べる生き物」
「犬のルーツは狼である」とご存じの方は多いと思います。
野生の世界において狼は強いイメージがあるかもしれませんが、実際の狩りの成功率は1割未満です。そのため、獲物を捕まえたら「次にいつ食べられるかわからないから、できるだけお腹に詰めておこう」と考えます。
狼を祖先に持つ現代の犬にも、その「一気食い」の習性が残っています。
安全な環境で人間に飼育されている今でも、犬は「与えられた分だけ食べてしまう生き物」です。
この習性を踏まえて肥満を防止・改善するためには、飼い主さん側でのコントロールが必要になります。
動物病院を受診するべき肥満
犬の肥満は、人間と同様に病気の可能性を示唆しています。
特に以下の場合は、できる限り早めに動物病院を受診するべきといえるでしょう。
・食事量を変えていないのに太った
・食欲が低下しているのに太った
・毛ヅヤが悪くなる・脱毛傾向にある
・水をたくさん飲む・おしっこが多い
・明らかに元気がなくなった
これらの症状を放置しておくと、命に関わる危険性があります。肥満を軽視せず、病気の早期発見を目指しましょう。
肥満の犬が抱えるリスク
肥満により犬が抱えるリスクは、特定の病気の発症率が上がるだけではありません。
免疫力が低下することにより、健康な状態では問題のないウイルスに感染すると発症する可能性が上がり、寿命が大幅に短縮する不安もあります。
また、無気力傾向も強まり、遊びや運動への興味が失われることもあります。
肥満の解消のために生活習慣を変えるときも、犬は大きなストレスを感じてしまうでしょう。
肥満により発症リスクが上がる病気
糖尿病
糖尿病は、膵臓(すいぞう)の細胞が壊れることにより血糖値を下げるホルモン・インスリンが作れなくなり発症する病気です。
白内障や糖尿病性ケトアシドーシスなどの合併症を併発しやすく、進行の程度によっては治療が難しいこともあります。
犬の糖尿病の原因の多くは、肥満です。
糖質や炭水化物を多く含むおやつを与えていたり、運動不足が続いたりすることにより、発症リスクが上がります。
関節炎
関節炎は、骨と骨をつなぐ関節に炎症が生じ、痛みを感じたり関節の可動域が低下したりする病気です。
関節炎になると、周囲の骨や関節を包んでいる組織や腱、靭帯などが変形して機能障害を起こす可能性があります。
肥満による体重増加に伴い関節への負担が増えることで、発症のリスクが上がります。
心血管疾患
心血管疾患は、動脈硬化により「酸素を豊富に含んだ血液」の供給が不足する疾患です。
糖尿病とも関連があり、高血糖の状態が続くとコレステロールが蓄積されて動脈硬化を促進します。
肥満の状態では高血圧・脂質異常症を合併しやすくなるため、血圧が上昇しやすくなります。
シュウ酸カルシウム尿路結石
シュウ酸カルシウム尿路結石は、泌尿器疾患の一種です。
結石が尿管に生じている場合は腎臓病を引きおこす可能性があり、尿路閉塞になると腎不全により命に関わる危険があります。
年齢(5歳~8歳)や性別(雄)の他、肥満が発生のリスクを引きあげることがわかっています。
犬が肥満になったように見える病気
副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)
副腎皮質機能亢進症は、別名を「クッシング症候群」といいます。
副腎(ふくじん)から排出される副腎皮質ホルモンが増加する病気です。
犬の突然死の原因としても挙げられる病気で、血栓症を起こして呼吸困難になったり、神経症状を起こしたりする場合もあります。
肥満に見えるほどお腹が膨らむ・水を飲む量が増えるなどが特徴です。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、体の代謝を適切に保つために必要な「甲状腺ホルモン」の分泌量が低下する病気です。
発症すると肥満傾向になるだけではなく、脱毛や皮膚の黒ずみなどが現れます。
重症化すると昏睡状態に陥ったり、意識障害を引きおこしたりすることもあります。
肝臓疾患
犬の肝臓疾患では腹水の症状が現れる場合があり、肥満と誤認されることが多いです。
腹水は、肝臓の腫大により血液やリンパの循環が乱れることが原因です。
お腹が出ている状態にも関わらず食欲が減退したり元気がなくなったりする場合は、肝臓の病気を疑います。
循環器疾患
犬の循環器疾患では、動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)・心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)が代表的な病気です。
いずれの場合も進行すると腹水の症状が出やすく、肥満のように見える場合があります。
犬が肥満になる原因は?
運動不足
肥満の原因としてまず挙げられるのは、人間と同様に「運動不足」です。
運動嫌いで散歩をあまりしなかったり、一日の運動量が少なかったりする場合は、肥満傾向が強くなります。
特に中型犬や大型犬は成犬に成長する過程で必要な運動量が増えるため、子犬の頃と同じ量しか運動をしていない場合は太りやすくなるでしょう。
高カロリーの食事
適切な食事量や運動量を守っているのにもかかわらず肥満になってしまう場合は、フードのカロリーが多いことが考えられます。
特に脂質や糖質が多いフードは太りやすく、嗜好性も高いです。たくさん欲しがってしまうため、注意が必要です。
適切ではない量の食事
「全部食べきるから」と適量以上のフードをあげている場合も、肥満の原因になります。
「犬が食べきれる量」ではなく「パッケージに記載されている量」、あるいは「獣医師に指示された量」を正しく与えることが必要です。
おやつの与えすぎ
愛犬がおやつを欲しがる様子は、とても可愛いですよね。
しかし、おねだりに負けてついついおやつを与えすぎてしまうと、肥満の原因になってしまいます。
人間用の食事を与えている
人間の食べ物は犬にとって高カロリーのものが多く、塩分や糖分も高めです。「ほんの少し」のつもりでも、積み重ねが肥満の原因になります。
人間の食べ物は味が濃く嗜好性も高いため、犬にとってはご馳走のようなものです。おやつ以上におねだりが増えてしまうでしょう。
去勢・避妊手術
去勢・避妊手術を行うと、性ホルモンが減少することにより体の代謝が減少します。
つまり「生きるために必要なエネルギーの総量」が低下するため、手術前と同じ量のフードやカロリーを与えつづけると肥満になりやすいのです。
また、ホルモンバランスの変化により、以前より食欲が増す個体もいます。
脱・肥満!今日から始めるダイエットのコツ
低カロリーの食事に切りかえる
現在のフードよりもカロリーを抑えたものに切りかえましょう。
ホームセンターや大型のペットグッズショップなどには、ダイエット用・低カロリーのフードが多く展開されています。
一度にすべてのフードを変えるのではなく、何日かかけて少しずつ切りかえると犬のストレスを減らせます。
おやつの量を減らす
犬はおやつの「量」よりも「回数」が多いほど喜びを感じやすいといわれています。
1日に与えるおやつの総量を減らしつつ、小さくちぎったり砕いたりして何度も与えてあげましょう。
適切な量の運動を行う
人間のダイエットと同じく、犬のダイエットでも「食事療法+運動」が脱・肥満への近道です。
今まで散歩をあまりさせていなかった場合、ダイエットを機にしっかり散歩させて適切な運動量をカバーしてあげましょう。
長時間の散歩が難しい日や雨の日は、引き運動やフリスビーなど短時間で運動量を多く消費できる過ごし方を心がけてくださいね。
暖房の温度を上げすぎない
犬は気温が下がると体温維持のためにエネルギーを燃焼するため、痩せやすくなります。
秋冬の肌寒い日にすぐに暖房をつけている人は、設定温度を上げすぎないように心がけましょう。
とはいえ、愛犬が寒くてストレスがたまらない程度には整えてあげてくださいね。
「甘やかさない」という強い意志を持つ
愛犬の体調管理は飼い主さんの責務です。
愛犬の肥満を改善するために最も必要な要素は、「甘やかさない」という強い意志だといえるでしょう。
おやつをねだられても散歩を嫌がられても、毅然とした態度でリードしてください。
ダイエットを成功させるためには、主従関係の確立も大切です。
不自然な肥満は病院を受診しよう
急激に太りはじめた・お腹だけがポッコリ出はじめたなど違和感を抱いたら、自己判断で様子見せずに動物病院を受診しましょう。
肥満のような体型変化を伴う病気の中には、命に関わる疾患も多数含まれます。
楽観視はせずに常に危機感を持ち、できる限り早く愛犬の変化を察知しましょう。
まとめ
今回は、犬の肥満の危険性や改善方法についてご紹介しました。
飼い主さんにとって、飼い犬は「世界で一番可愛い、大切な存在」といえるでしょう。
だからこそ、「甘やかす」のではなく「健康管理を行う」のが本当の愛情です。
一瞬の喜ぶ姿よりも一生の健康な姿を考え、ときに厳しさを持ちあわせながら愛犬の体をコントロールしてあげましょう。