【元動物看護士が解説!】うさぎの斜頸とローリングは治る?発症から回復までにできること
うさぎが首を傾けたまま元に戻せない。体がグルっと回転して倒れてしまう……。
突然このような症状が出ると、驚きと不安のために冷静でいられなくなる飼い主さんもいるでしょう。
それぞれ「斜頸」「ローリング」と呼ばれる症状で、うさぎが平衡感覚を失うと、軽度であれば「斜頸」、斜頸がひどくなると「ローリング」を起こします。
今回は、斜頸やローリングの原因や、発症したときに飼い主がとるべき行動、毎日の生活の中でできる工夫やケアについてお伝えします。
斜頸とローリングの症状
斜頸は、うさぎの首が片側に傾いている症状です。
ローリングは、斜頸がよりひどくなり体の平衡を保つことができずに傾いてしまい、そのまま倒れてしまう症状です。起き上がっても平衡感覚を失っているため再び倒れてしまい、もがくような様子が見られます。
初めて見る飼い主さんは、大きな衝撃を受けるかもしれません。
斜頸やローリングはなぜ起こるのか?
斜頸やローリングの原因はいくつかあり、斜頸やローリング以外の病的症状の有無や各種検査によって診断を行います。
どのような病気が疑われ診断されるのか、詳しくお伝えします。
細菌による中耳炎、内耳炎
耳の奥には内耳と呼ばれる、体の平衡感覚を保つための器官が存在する場所があります。
内耳に炎症を起こすと平衡感覚が正しく機能しなくなり、症状の一つとしてローリングが現れます。
そもそもの炎症を起こす原因の一つにパスツレラ菌と呼ばれる細菌があり、これは健康なうさぎでも保有している細菌です。
通常は免疫により抑えられていますが、体調不良やストレスなどをきっかけに内耳炎のほかスナッフル(いわゆる鼻風邪のような症状)など様々な症状を引き起こします。
また、内耳の手前には中耳と呼ばれる部分がありますが、ここに炎症が起こった場合も炎症が内耳へと進行し、その結果ローリングなどの神経症状へとつながります。
エンセファリトゾーン症
エンセファリトゾーンと呼ばれる寄生虫は、脳や目、腎臓に寄生します。
感染は母うさぎから胎盤感染するものと、すでに感染しているうさぎの尿から感染するものがあり、飼育環境のよくない場所では子うさぎ時代にすでに感染していたケースもあります。
感染したからといって必ずしも症状が出るわけではなく、体調の悪化やストレスなどによって免疫が低下した際に発症の危険があります。
うさぎの飼育者の間ではよく知られているエンセファリトゾーン症ですが、斜頸やローリングだけを引き起こすものではありません。
脳や目、腎臓に寄生するため、てんかんや目の疾患などを引き起こします。
神経系の腫瘍や炎症、損傷によるもの
斜頸やローリングは、神経系がダメージを受けることで起こります。
腫瘍や炎症、落下による衝撃によるものなど考えられる原因は多く、特定するのは難しいとされています。
斜頸やローリングは完治するのか?
もし斜頸やローリングが起こってしまった場合、気になるのは完治するのかどうかですよね。
結論から言うと、完治は難しいです。
ただし症状が出てすぐに治療を開始した場合(遅くとも24時間以内)、改善する可能性は比較的高いとされています。
神経症状は進行スピードが速いため、その分早めの治療が有効となります。
治療後は、斜頸もローリングもすっかり治り通常の生活に戻った子、ローリングはなくなったが斜頸が残る子、寝たきりになってしまった子など、回復の程度は様々です。
いずれにしても再発がしばしばみられるため、日頃の様子のチェックと、食事管理、ストレスのない環境作りを心がけましょう。
斜頸やローリングを発症したときの環境作り
斜頸やローリングが出た場合には早めの治療が大切ですが、症状が改善するまでどのような環境にしてあげればよいのでしょうか?
その子にあった環境作りをいろいろ試してみましょう。
ケージ内には必要最低限のものだけ設置する
ローリングはバタン!と結構な勢いで倒れるため、何かにぶつかり怪我をしないようにすることが大切です。
ハウスやトイレ、おもちゃなどは一旦取り除いてください。
ケージの外に取り付けるタイプの給水器は、ローリングが激しく斜頸もあるようであればそもそも水を飲むことが困難なため、外してもよいでしょう。
代わりにお皿タイプ、置きタイプの給水器を試してみるとよいかもしれません。
ケージ内はクッション性のあるものにする
不要なものを取り除いたら、ケージ内の床や側面をタオルなどのクッション性の高いもので保護しましょう。
うさぎの飼い主さんたちの間では、床にはマイクロファイバーマットがよいと評判のため、試してみてはいかがでしょうか?
糞が起毛の隙間に落ち、尿の吸水性もよいので衛生的です。
簡単に洗濯できるのもよいですね。
ローリングがひどいときの対策
ローリングがひどいときは、ケージ内を狭くして倒れること自体を防ぎましょう。
一つの方法として、仕切りでも大きめのクッションでもよいのでケージ内を区切り、残ったエリアにはタオルなどを厚めに敷き詰め、側面も同様にぐるっと囲い込むような状態にするというものがあります。
身動きが取れないので苦しそうに見えるかもしれませんが、うさぎ自身は体が周囲に支えられて安定するため、安心する子が多いです。
ケージが広くて難しければ、移動用のキャリーを使うのもよいでしょう。
ローリングの改善がみられたら
治療を続けローリングが改善すると、たとえ斜頸が残っていてもその状態に慣れ、食欲も回復する子が多いです。
そうなると本人も普段通りに動こうとするため、きちんと見守れる範囲内で少しの時間だけケージから出してあげましょう。
動くことによる再発の怖さもあるかもしれませんが、ずっとケージの中で過ごすことはストレスにつながります。
最初から長時間自由にしてあげることを避け、少しずつ様子を見ながら出すようにしましょう。
また、ケージから取り除いていたトイレや給水器も戻し、本人が落ち着く環境にしてあげてください。
斜頸やローリングを発症したときの食事
今まで通りの食事を与える
斜頸やローリングを発症しても、その程度はうさぎによって様々です。
症状が軽い場合、食べづらいながらもいつも通りに食べてくれる子もいますので、まずは普段食べているものをあげてみましょう。
急な食事変更はうさぎにとってストレスです。
とはいえ食べづらいのは確かなので、横たわりながらでも食べられるように牧草や野菜などを床に直接置くか、口のそばに置いてあげましょう。
強制給餌を検討する
斜頸やローリングを起こすと食欲が一時的に落ちるため、必要量を摂取できないかもしれません。
その場合は、強制給餌が必要になります。
野菜やフルーツ、ペレットフードを細かくし、トロッとしたペースト状にして混ぜ合わせたものを与えます。
お皿やスプーンから自ら食べてくれればよいのですが、食べてくれなければシリンジで直接口に入れてあげましょう。
初めは飼い主さんもうさぎも慣れないため難しいと思います。動物病院でやり方を教えてもらうとよいですよ。
盲腸便を食べているかの確認
うさぎの飼い主さんなら、盲腸便の存在とその重要性について聞いたことがあるかと思います。
斜頸やローリングを起こすと盲腸便を上手く食べることができない子もいるため、必ず確認しましょう。
飼い主が食べさせることが難しい、もしくは口に運んでも食べてくれない場合は獣医師に相談してください。
斜頸やローリングを発症したときの日々のケア
斜頸やローリングがなかなか改善せず、不安な日々を過ごす飼い主さんもいるでしょう。
不安な気持ちを少しでも和らげるには、愛情のある治療とコミュニケーションが大切です。
以下を参考に、何ができるかを考えてみましょう。
グルーミングをしてあげる
うさぎはきれい好きなため、グルーミングをします。その姿はとても可愛らしいですよね!
しかし上手にできないとストレスが溜まり、手並みや毛艶も悪くなり、皮膚にもよくありません。
そこで、刺激が少なく、なおかつうさぎ自身が気に入っているうさぎ用のブラシやコームがあれば、ぜひグルーミングをしてあげましょう。
もちろんある程度状態が落ち着き、受け入れてくれる態勢ができてからです。
通院や投薬による治療を続ける
毎日の投薬や強制給餌は簡単なものではありません。
嫌がる子もいるでしょうし、治療の効果がいまいち感じられない場合もあるでしょう。
それでも愛情を持って治療を続けることは立派なコミュニケーションの一つです。
「今日は上手に薬を飲めたね」「いつよりたくさん食べたね」など、ちょっとしたことでも声をかけてあげてください。
適度な室温湿度と清潔さを保つ
うさぎは暑さや湿度に弱く、それによりストレスも感じます。
また、上手くトイレに行けない場合は、尿や糞でお尻周りが汚れることもあります。
テレビの近くや騒がしい場所、家族の出入りが多い部屋のような落ち着かない環境もよくありません。
いつも快適に過ごせる清潔な環境は治療の質を上げるだけでなく、再発予防にも効果的です。細かな点に注意をして環境を整えてみてください。
まとめ
斜頸やローリングなどの神経症状は早めに治療を開始できれば、大きな改善が期待でき、それまで通りの生活ができる子もいます。
しかしながら後遺症や再発への不安は避けられません。
そんなときに自分にできることや症状との付き合い方を知っておけば、気持ちに余裕ができ、うさぎも質の高い生活を送れるはずです。
ぜひ前向きな気持ちを持ってうさぎと過ごしてくださいね!