【元動物看護士が解説】猫の怪我は油断禁物!応急処置をして早めの受診がよい理由
猫は縄張り意識が高く、警戒心が強い動物です。
完全室内、単独飼育であれば、猫が怪我をすることはそれほど多くありません。
逆に半室内飼育(外への出入りを自由にしている飼育法)や多頭飼育をしている家庭では、猫同士のケンカや外での事故による怪我のリスクがあることを認識しておきましょう。
しかしながら、猫の怪我は飼い主が気づけないことも多いものです。
そこで今回は、飼い主が怪我に気づいてあげる方法や、放っておくとどんな危険があるのかなど、怪我のパターン別に詳しく解説します。
猫と安心して暮らすためにも、ぜひ参考にしてください。
怪我の種類
怪我には切り傷や打撲などの種類があり、交通事故であれば骨折や内臓の損傷も当てはまります。
猫が室内や外で負う怪我の原因はおおむね限られるため、考えられる怪我を見ていきましょう。
猫同士のケンカによる怪我
猫の怪我の中でもっとも多いのが猫同士のケンカによるものです。
特に外への出入りが自由な猫はリスクが高いので、普段から猫の様子に注意を払うようにしてあげましょう。
猫の武器は、鋭い爪と歯(牙)のため、ケンカによる怪我は以下の2つです。
・引っかき傷
・咬み傷
特に咬み傷は飼い主に気づかれにくく、後々大きな症状となって現れることがあります。
咬み傷に気づかれにくいのは、猫の歯が小さく細い針のようなものだからです。針のような歯が皮膚に刺さり、小さな穴が開くイメージをしてもらうとよいでしょう。
皮膚に深い穴が開きますが、傷自体はとても小さいため出血しにくく、飼い主に気づかれにくいのです。
事故による怪我
猫に起こる事故は、大きく分けて2つあります。
・落下による事故
・交通事故
主に外で起こるものと考えられやすいですが、室内でも落下事故は起こります。
子猫や高齢の猫であれば、テーブルや階段、キャットタワー、吹き抜けなどから落下することによる骨折や、身体を床に打ちつけることによる損傷などが考えられるでしょう。
ケンカによる怪我と比べると、事故による怪我は身体の損傷と負担が大きくなります。
特に交通事故に遭った場合は、外見には大きな変化がなくても、衝撃によって内臓が深刻なダメージを受けているケースもあります。
怪我と勘違いしてしまう自傷によるもの
厳密には怪我ではありませんが、飼い主が「あれ?怪我してる」と思うような傷もあります。
例えば、痒みやストレスなどから、皮膚の一部を過剰に舐めることによって起こる「舐め壊し」を見つけることがあるでしょう。
舐め壊しは皮膚を傷つけ細菌感染を起こすため、炎症や脱毛が見られます。
原因を特定し、ストレスと考えられるもの取り除くことで回復に向かいます。
怪我の部位と症状、応急処置
落下や事故に遭った場合に怪我をしやすい部位があります。
どのような症状が出て、どのような治療が必要なのかを部位ごとに解説します。
また、自宅で可能な応急処置があれば併せてお伝えしますので、参考にしてくださいね。
目の怪我
目の怪我は、主に猫同士のケンカが原因です。
爪で目の角膜(目の表面)を傷つけられた場合、目を細め眩しそうにする、涙の量が増える、目ヤニが出る、といった症状が見られます。
猫が痛みで目を擦ることで、症状が悪化することもあります。
応急処置として、自宅にエリザベスカラーがあればつけてあげましょう。
動物病院では、抗炎症剤・抗生物質の注射と投薬、そして点眼での治療がメインとなります。
爪の怪我
爪の怪我の原因は、主に室内での事故や猫同士のケンカです。
室内ではカーテンやソファなどに爪を引っかけ、慌てて動いた勢いで爪が折れることがあります。
ケンカ中は強い力で暴れるため、何かしらに爪が引っかかり折れることがあるでしょう。
確認が必要な点は、以下の2つです。
・出血が止まっているか
・爪が根本から折れていないか(爪の部分が完全に取れてしまっている状態か)
出血している場合は、ティッシュやガーゼで出血箇所を圧迫すれば、大抵は数分で治まります。
治まらないようであれば、爪が根本から折れているなど傷が深いことが考えられます。
ティッシュやガーゼで手先をくるみ、その上にタオルをまいて動物病院へ連れて行きましょう。
出血がすでに止まっていて、爪の一部が残っている(爪が途中で折れて短くなっている)状態であれば様子を見て大丈夫です。
ただし、折れた箇所をしつこく舐めているようであれば、一度病院に連れて行くのがよいでしょう。
動物病院では止血剤や抗生物質の注射と投薬をし、猫が舐めるようであればエリザベスカラーをつけることになります。
足の怪我(咬み傷)
咬み傷は目立たないため飼い主が気づきにくく、数日してから化膿を起こして判明することがあります。
また、痛みがあるため元気食欲がなくなるなどの、一見咬み傷が原因とは思えない症状が出るケースもあります。
動物病院では、痛み止めや抗生物質の注射と投薬をし、傷口を舐めないようにエリザベスカラーや包帯を巻きます。
足の怪我(骨折)
骨折は、落下や交通事故によるものがほとんどです。
かなりの痛みがあるため、足を床に着けられず手や足をあげたままにする、あるいは引きずるような姿が見られます。
とはいえ、見た目だけで骨折とわかる方は少ないでしょうし、仮に骨折だとわかった場合でも、自宅でしてあげられることは多くありません。
添え木で固定して病院へ連れて行くことがベストですが、猫が触られることを嫌がることもあり難しいでしょう。
なるべく早く動物病院へ連れて行く準備をし、移動中は骨折部分への負担を少なくするため、ケージにタオルなどを敷き詰めてクッションの代わりにするなどの工夫をしてあげてください。
動物病院では、レントゲンなどの検査、骨折部分の固定、痛み止めや抗生物質の注射と投薬をします。
自宅では、安静にすることが何よりも大切です。
首、胴体、しっぽの怪我
猫はケンカ時に首を狙って咬む傾向があるため、胴体やしっぽより首周辺の怪我が多く見られます。
足の咬み傷と同様、飼い主が気づきにくく、出血しているなど目立った変化がないと見逃されやすいです。
外から帰ってきたあとに元気や食欲がなく、普段と異なる様子があればケンカによる怪我を疑ってもよいでしょう。
また、咬み傷の応急処置の中でも簡単にできるのは、「舐めさせないこと」です。
浅い傷であれば舐めて治ることもありますが、深い傷は細菌が内部に入り込み化膿を起こします。
化膿している上にザラザラした猫の舌で皮膚を傷つけてしまうと、さらに悪化してしまい、いつまでも傷は治りません。
病院に行くまでの間は、エリザベスカラーをつけてあげましょう。
動物病院では、咬み傷の洗浄、痛み止めや抗生物質の注射、投薬を行います。
頭部、胸部、腹部など体内部の損傷
事故や落下の衝撃による打撲や捻挫、体内部の損傷は目に見えないため注意が必要です。
打撲や捻挫であれば数日中に治ることがほとんどですが、体内部の損傷、内臓や頭部へのダメージは深刻です。
事故に遭遇した疑いがあるときは、その後の猫の様子や動きを観察しましょう。
元気や食欲がない、血尿や血便がある、呼吸の仕方や手足の動きがおかしいと思ったら、すぐにでも動物病院に連れて行ってください。
動物病院では、血液検査、レントゲン、エコーなどの各種検査を行い、場合によっては手術や入院になることも十分にありえます。
応急処置で気をつけて欲しいこと
怪我を見つけ、飼い主が応急処置として止血や洗浄、エリザベスカラーの装着をするのは悪化を防ぎよいことです。
ただし、間違った応急処置は逆に悪化させてしまう可能性があるので注意しましょう。
猫が嫌がるときは無理をしない
怪我をしている猫は、痛みや発熱による倦怠感があるかもしれません。
無理に触ろうとすれば余計な痛みや体力を使わせることに繋がります。
猫が嫌がらない範囲内で処置をしましょう。
止血に注意
止血をする場合はティッシュやガーゼで圧迫し、止まらなければタオルや包帯でやさしく包むようにしてください。
伸縮性のない包帯やタオルをきつめに巻いてしまうと、血流が阻害され、半日程度でもそのままにしておくのは危険です。
止血をしてもなかなか血が止まらない、少しするとまた出血する場合は早めに動物病院で診てもらいましょう。
自己判断による投薬は危険
応急処置として傷口の消毒をする場合、水を含ませたコットンなどでやさしく汚れを取り除く程度で十分です。
人用の消毒液を使う、痛そうだから痛み止めを飲ませるといった行為は大変危険です。
見た目が大きな怪我でなくても油断しない
「たいした怪我ではないから」「足が痛そうだったけれど数日で治ったから」と油断しないようにしましょう。
実は体の中で出血を起こしていたり、骨折していたり、皮膚の奥で化膿が進んでいたりする可能性があるからです。
数日後に急変することもあるため、できれば動物病院に行くことをおすすめします。
また、ケンカによる怪我は、猫エイズや猫白血病の感染の可能性があります。
多頭飼育であれば自宅で感染が広がることも考えられるため、血液検査は必ずするようにしましょう。
まとめ
怪我といっても、放っておいても治るものもあれば、命にかかわるものもあります。
特に外へ自由に出入りできるような飼育環境にある場合や脱走した場合は、帰ってきた後の様子を注意深く見てあげてください。