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シニア犬のための口腔ケアを総まとめ!歯みがきで健康寿命を延ばそう

「犬の歯みがきは大切」と聞いても、シニア犬を飼っている方は、「今からでも間に合う?」「シニアになってからの歯みがきは嫌がられそう」と疑問や不安でいっぱいになってしまいますよね。

そんな方のために、2022年6月3日に、日本ペット歯みがき普及協会による「今からでも間に合うシニア犬のための簡単歯みがきセミナー」が行われました。

一般社団法人日本ペット歯みがき普及協会

登壇されたのは、協会の代表理事・赤津徳彦先生、獣医師の石野孝先生、そしてドッグトレーナーの須﨑大先生。

先生方から教わったシニア犬のための口腔ケアをわかりやすくレポートしますので、負担をかけずに愛犬の歯を守りたい方はぜひチェックしてくださいね。

今からでも遅くない?シニア犬の口腔ケア

これまで歯みがきをしたくても拒否されてできなかった。あるいは、適切なお世話をされてこなかった保護犬を引き取った方もいるでしょう。

一般的には7歳頃からシニア期に入る犬ですが、口腔ケアはそれからでも手遅れではありません。シニア犬に口腔ケアが必要な理由についてお伝えします。

3歳以上のペットの80%が歯周病という事実

歯の病気と聞くと、真っ先に虫歯を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

実は犬の口内は虫歯菌が繁殖しにくいアルカリ性のため、虫歯の心配はあまりありません。虫歯よりも気を付けなければいけないのが、歯周病です。

歯周病は、歯垢についた細菌が原因で歯肉が腫れたりあごの骨が壊れたりする病気です。

犬に限らず、年齢を重ねたペットは歯周病になりやすいといわれています。

歯周病が悪化すると歯が抜けるだけでなく、血液中に吸収されて全身に菌が回りさまざまな病気の原因になります。進行を防ぐためにも、歯みがきなどの適切なケアが大切です。

歯周病の症状とは?

犬が歯周病になると、あごの骨が壊れて歯が抜け始める前に、以下のような症状が現れます。

・よだれが増える
・食欲が落ちる
・口臭が増す

ただし、犬の場合は痛みがあってもごはんを食べる子が多いです。「食欲が落ちた」と思って動物病院を受診する頃には歯周病が進んでしまっていることもめずらしくありません。

これらの症状が見られないからと油断せず、健康な頃から歯のケアをすることが大切です。

「1530」を目指そう

「1530(イチゴサンマル)運動」とは、犬や猫の歯を15歳までに30本以上残すことを目指した活動です。

犬や猫がシニアになっても健康な歯を残すことは大切で、そして簡単なことではないことがわかります。

人間なら自分で歯をみがけますが、動物はできません。飼い主さんが責任を持ってケアしてあげましょう。

シニア犬の気持ちを優先しよう

だるそうな犬

シニア期に入った犬にこれから口腔ケアを始めようと思っても、スムーズにいくことは少ないでしょう。強引に歯みがきをしようとすると、犬との信頼関係にひびが入る可能性があります。

歯周病ケアを始める際は、まずシニア犬の気持ちに寄り添うことが大切です。

今さら新しいことは受け入れられない

シニア犬は子犬の頃や若い頃と比べ、「習慣を変えたくない」「我慢するのは嫌だ」という気持ちが強くなっていることが多いです。

歯周病対策には歯みがきがマストだからと飼い主がムキになればなるほど、犬は拒否反応を示すでしょう。

大切なのは、飼い主側が「やらなければいけない」と思わないこと、そして100点を目指そうと思わないことです。

その日の体調とご機嫌をチェック

口腔ケアは大切ですが、シニア犬の場合は「毎日やらなければいけない」「食後に必ずやらなければいけない」とルールを決めてしまうと逆効果です。犬は拒否反応を示し、飼い主さんも疲れてしまいます。

昨日できたから今日もできると思わず、その日その日の体調とご機嫌を優先してあげましょう。

シニア犬が受け入れてくれるタイミングを探ろう

ソファであくびをする柴犬

本来なら食後の歯みがきが理想的ですが、シニア犬の場合は受け入れられやすいタイミングでOKです。

例えば、散歩から帰宅した直後ならOK、散歩中ならOKと、自分のタイミングで歯みがきを受け入れてくれる犬もいます。

愛犬の「今ならいいよ」のタイミングを探るところから始めてみてくださいね。

ご褒美は「途中で」与えることがポイント

シニア犬に新しい習慣を身に着けてもらうためには、ご褒美は有効です。

「歯みがき中におやつを食べさせていいの?」と思われるかもしれませんが、大切なのは我慢させることなく歯みがきを受け入れてもらうことです。シニア犬の口腔ケアでは、犬の協力が不可欠と覚えておいてくださいね。

ただし、ご褒美を「最後の一回だけ」にしてしまうと、犬は早く終わってほしいと思うようになり、お互いに焦りが出ます。ご褒美は途中で与えるようにしましょう。

犬がリラックスできる体勢でOK

歯みがきは、犬が飼い主に背を向けた体勢や伏せた体勢でもできます。特にヘルニアなどの病気がある犬の場合は、つらくない体勢を模索してあげましょう。

向かい合ってしっかりみがこうと思わず、犬がリラックスできる体勢でOKです。

実践!シニア犬のための口腔ケアのコツ

シニア犬になってからでも、歯周病ケアは遅すぎることはありません。

犬に負担をかけない口腔ケアのコツをお伝えします。

まずは触らせてもらうところから始める

まずは道具を使わず、指で口元を触らせてもらうところから始めましょう。

触られる心地よさを実感してもらうためにも、体もゆっくり撫でてあげてください。

撫でるときも歯を触るときも、「ゆっくり」が基本です。ペースを上げると犬を興奮させてしまうため、飼い主さんもリラックスしながら行いましょう。

歯肉炎・歯周病がある犬にはオーラルシートがおすすめ

歯肉炎や歯周病が進んでいる犬は、歯ブラシを痛がることがあります。その場合は、指に巻いて使うペット用のオーラルシートが活躍します。

指が届かない場所は歯ブラシを使うことが望ましいですが、慣れるまではオーラルシートのみで対応しましょう。

口に入れる前に匂いを嗅がせてあげよう

犬は初めてのものを見たとき、匂いを嗅ぎたがります。匂いからさまざまな情報を収集するためです。

シートを口に入れる前に鼻の前に掲げ、気が済むまで匂いを嗅がせてあげましょう。

シートはグルグル巻きにしない

大型犬であっても、シートをグルグル巻きにした指を口の中に入れられることは嫌がります。犬の負担を減らすためにも、シートは一重にして使いましょう。

「みがく」より「マッサージ」のつもりで

シートを巻いた指で、マッサージするように優しく歯垢を拭き取ります。激しくこする必要はありません。途中でご褒美をあげることも忘れないようにしましょう。

犬がリラックスした体勢で指が届く範囲が完了したら、その日はそこまでで終わりにしてもOKです。最初からすべての歯をみがこうと思わず、できるところまでで合格と考えましょう。

歯周病予防には「唾液腺マッサージ」が効果的

歯周病予防のために歯みがきと同じくらい大切だといわれているのが、唾液の分泌です。唾液には口内を洗浄する作用だけでなく、殺菌・抗菌作用もあります。

犬には、耳下腺・頬骨腺・下顎腺・舌下腺という4つの唾液腺と2つの開口部があり、マッサージをすることで唾液の分泌を促せます。

唾液腺マッサージの具体的な方法は、以下の動画を参考にしてくださいね。


引用元:歯ミガキマン チャンネル(口腔ケアのための唾液腺マッサージ)

1日2回、食後に行ってあげましょう。

シニア犬用のオーラルケアグッズの選び方

最初から歯ブラシが使える場合はそれがベストですが、犬が痛がったり噛んでしまったりする場合は難しいですよね。

歯ブラシ以外のおすすめのオーラルケアグッズをご紹介します。

研磨剤不使用・歯周病ケアのシートをセレクト

歯肉炎や歯周病が進んでいるシニア犬の場合は、研磨剤が入っているオーラルシートでは痛みを与えてしまいます。

研磨剤が使われておらず、しっかりと歯垢をとるシートがおすすめです。シートの仕様を確認しながら、獣医師と相談して選びましょう。

ペーストを有効活用しよう

ペーストの中には、歯垢を落としやすくする成分が入っているものや歯茎を引き締める効果のあるものなどさまざまなタイプがあります。

こちらもシート同様、獣医師と相談して決めるとよいでしょう。

給水器よりも給水皿がおすすめ

犬の給水器は、歯みがきという観点から考えると、ノズルタイプよりもお皿タイプがおすすめです。

水を飲む度に口をゆすぐことができ、口内の衛生状態をキープできます。

口腔ケアタイムをリラックス時間に

犬とリラックスする女性

最後に、「どうしてもムキになってしまう」「負担をかけないようにと思うと緊張してしまう」という飼い主さんへ、セミナーでの先生方の言葉を借りてアドバイスを送ります。

シニア犬へのリスペクトを忘れない

「どうして歯みがきを嫌がるの?」と焦る気持ちが生まれたら、愛犬とのこれまでの関係を思い出してみてください。

シニア犬は、これまで飼い主さんたち家族との信頼関係を築き上げてきた存在です。家族が不安なときや悲しいときもそばにいてくれたことでしょう。

シニア犬の尊厳を守り、リスペクトする気持ちを忘れないことが、口腔ケアを成功させるコツです。

音楽をかけるのも効果的

愛犬にリラックスしてほしいときは、まずは飼い主さんが力を抜くことが大切です。好きな音楽をかけるようにすると、自然と緊張がほぐれるかもしれませんよ。

愛犬との歯みがきタイムを楽しい時間にするために、自分なりに演出してみてくださいね。

お互いに無理をしないことがポイント

シニア犬は、新しい習慣を受け入れにくくなっています。それでも、飼い主さんの気持ちと接し方次第では、新しいコミュニケーションとして受け入れてくれる可能性があります。

どちらかが無理だと思うようなやり方は避け、お互いが気持ちよく続けられる口腔ケアを模索してみましょう。

まとめ

今回のセミナーに参加し、歯みがきの重要性とともにシニア犬を敬うことの大切さを学びました。

歯みがきや歯周病ケアは、犬の健康寿命を延ばすためには欠かせません。シニア犬だからとあきらめず、お互いが無理なく続けられる方法を模索しながらチャレンジしてみてくださいね。

協力:一般社団法人日本ペット歯みがき普及協会