助け合いのこころが命を救う!猫の献血について知ろう!
猫にも人間と同じように「献血」があります。
猫の献血は人間の献血ほど身近ではないため、興味があってもどうすればよいのかわからないという飼い主さんも多いのではないでしょうか?
今回は、猫の献血の必要性やドナー登録の手順、献血の流れにいたるまで詳細にお伝えします。
また、あまり知られていない「供血猫」という存在にも触れています。
正しい知識を身につけて、小さな命を救うきっかけを作りましょう。
猫の献血はどんなときに必要?
猫も人間と同じく、病気やケガで大きな手術を受けるときには輸血の必要があります。
猫には人間のような血液バンクが存在しないため、血液が安定供給されていないのが現状です。
また、猫の血液は長期保存が難しく、必要が生じる度に提供を受ける必要があります。
輸血が必要な病気や症状
輸血が必要な病気や症状には、以下のようなものがあります。
・大量出血に伴い血液の減少がみられるとき(事故など)
・血液の凝固機能に異常がみられるとき(血友病など)
・重度の貧血がみられるとき(慢性貧血など)
・血液を作り出せないとき(白血病など)
猫の献血ドナーとは
前述のとおり猫の血液は長期保存が難しいため、必要なときに提供してもらうことが望ましいといわれています。
そのため、血液を提供してくれる「献血ドナー」への登録を募り、定期的もしくは血液が必要になったときにドナーへ献血を依頼するという方法を取っている動物病院が多いのです。
猫の献血ドナー登録について
献血ドナーの登録は、動物病院ごとに行われています。
半年に1回など定期的に献血してもらう場合や、手術時など輸血が必要になった場合に献血を依頼する場合など、動物病院によって方針も様々です。
献血ドナーになる条件
献血ドナーになるための条件は動物病院により異なるため、希望する動物病院に確認してみましょう。
一例として、日本獣医輸血研究会の選定基準をご紹介します。
■輸血動物(猫)の選定基準
・年齢:満1歳~8歳程度
・体重:5kg以上が望ましい
・性別:妊娠、出産歴のない不妊手術済みメス / 交配予定のないオス(去勢、未去勢は問わない)
・生活環境:完全室内生活(出生は問わない)
・必要な予防接種:3種以上の混合ワクチン接種、ノミ / ダニ予防
・必須な感染症検査:猫免疫不全ウイルス感染症(FIV) / 猫白血病ウイルス感染症(FeLV) / 猫コロナウイルス感染症(FcoV) / 猫ヘモプラズマ症
献血ドナーに向かない猫
以下の条件にあてはまる猫は、献血ドナーに向かないと考えられます。
・輸血を受けた経験がある
・妊娠または出産歴がある
・病気の治療中である
・猫免疫不全ウイルス、猫白血病ウイルスが陽性である
猫の献血ドナーになるメリット・デメリット
献血ドナーになることは、病気やケガなどに苦しむ猫の命を救うという素晴らしい役割を担うことです。
献血ドナーになった猫や飼い主さんには、メリットだけでなくデメリットもあるのでしょうか?
メリット
献血ドナーになると、病院から感謝の気持ちとして特典が付く場合があります。
下記は、実際に全国の動物病院で行われている特典の一例です。
・献血ドナー登録時の健康チェックが無料
・記念品や感謝状の贈呈
・血液検査無料
・健康診断無料
・フィラリア予防薬贈呈
・献血ドナーとしてホームページに写真掲載
デメリット
デメリットは、献血によりまれに体調が悪くなる場合があることです。
献血後は一定時間様子を見てから帰宅するのが一般的ですが、帰宅後にふらつきや消化器症状など異変を感じた場合もすぐに動物病院に連絡しましょう。
また、輸血は緊急性の高い症状の手術に使われることがほとんどです。夜中に献血を求められることもあるでしょう。
献血のタイミングを飼い主さんが決められない点は、あらかじめ理解しておいてくださいね。
猫の献血ドナーになったら
必要な条件や検査をクリアし献血ドナーへの登録が完了したら、動物病院からの求めに応じて献血することになります。
ここでは、献血の流れについてお話しします。
献血の流れ
実際に献血をする際の流れをみていきましょう。
(1)輸血が必要になると病院から連絡が来る
(2)献血ドナーの猫の健康診断(身体検査、血液検査など)をして現在の状態を把握する
(3)すぐに輸血が必要な場合、適合検査(献血する猫と輸血される猫の血液の適合性を確認)をする
(4)健康状態や適合性に問題がなければ採血部(首または前足)の毛を刈り、消毒をして採血をする(所要時間:10~30分程度)
※通常は無麻酔ですが、猫が動いてしまう場合は軽い鎮静剤を用いる病院もあります。
(5)採血後、皮下点滴でケアを行う
(6)しばらく安静にし、経過を観察する
(7)体調に変化がみられなければ帰宅する
1回に献血する量は?
1回の献血量は、体重1kgにつき最大で10ml程度とされています 。
つまり体重5kgの猫の場合、50ml程度を献血することになるでしょう。
献血の頻度は?
献血は3か月以上間隔をあけて行うことが望ましいです。
定期的な献血を求める動物病院では、3か月に1回、半年に1回など回復に十分な間隔が設定されています。
献血後のケアは?
献血後は動物病院で皮下点滴や経過観察をするのが一般的ですが、帰宅後も十分なアフターフォローを受けられるか、あらかじめ確認しておきましょう。
動物病院によっては貧血予防の鉄剤を処方してくれたり、翌日に体調確認の電話をくれたりするところもあるようです。
猫にも血液型が存在する
猫にも人間と同じように血液型が存在します。
人間はA・B・O・AB型の4種類ですが、猫はO型がなく、A・B・AB型の3種類です。
日本の猫においては、A型が約80%と大半を占めています。
続くB型は約20%と少数、AB型に至っては数%と非常に稀な血液型となります。
猫も人間と同じく、異なる血液型の血液を輸血されると重篤な副作用が起こります。
血液判定キットを使っても病気の状態では正確に判定できないこともあるため、健康な状態の時に血液型を判定しておくことで安全かつ迅速に輸血を受けることができるでしょう。
緊急で手術を受けることになったときに備え、愛猫の血液型を把握しておくことをおすすめします。
供血猫という存在
「供血猫」という存在をご存じですか?
供血猫とは、輸血用の血液を提供してもらうために動物病院で飼育されている猫のことです。(犬にも同じように「供血犬」が存在します)
前述のとおり、日本には猫の血液バンクが存在しないため、輸血用の血液の安定供給が難しいのが現状です。
そのため、動物病院によっては、献血ドナーに依頼するだけでなく、供血猫を飼育して急な輸血に備えているところもあります。
供血猫は捨て猫や里親が見つからなかった猫が大半で、献血ドナーとしての条件を満たす場合は動物病院で供血猫として活躍することになります。
献血をすることが仕事とはいえ、普段は動物病院内で自由に過ごしたりスタッフに可愛がってもらったりと、普通の飼い猫と変わりない暮らしをしていることが多いでしょう。
供血猫に関する書籍
仲間の命を救うという重要な役目を担っている供血猫ですが、存在はあまり知られておらず、初めて聞いたという人も多いかと思います。
『空から見ててね いのちをすくう“供血猫”ばた子の物語 (集英社みらい文庫)』 は、ある事情から供血猫となり、沢山の仲間の命を救ったばた子ちゃんの物語です。
ばた子ちゃんの生涯のほか、供血猫の日常や役割についても触れられているので、興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか?
まとめ
ここまで猫の献血について詳しく紹介してきました。
日本には猫の血液バンクがないため、必要に応じて献血を受ける必要があります。
そんなとき、仲間のために自分の血液を分けてくれるのが献血ドナーや供血猫たちです。
協力したいと考えている飼い主さんは、愛猫が献血ドナーの条件を満たしているか動物病院で確認してもらうところから始めましょう。
また、輸血を受けることがあれば、血液を提供してくれる猫たちがいることを忘れないようにしたいですね。
助け合いのこころが大切な命を救っているのです。