新たな犬を迎える前に!犬の多頭飼いで気をつけたい基本ポイントまとめ
「もう一頭、迎えたいな」
今回は、そのように犬の多頭飼いを検討されている方へ「犬の多頭飼い」について詳しく解説いたします。
・犬を多頭飼いするメリットとデメリット
・犬同士の相性を見極めるポイント
・多頭飼いを始める際に気をつけたいポイント
・犬を多頭飼いする際の住まいの工夫点
これらのポイントを踏まえて犬の多頭飼いを検討すると、愛犬たちも飼い主さんもハッピーに暮らせるでしょう。
犬にとって多頭飼いは幸せ?
家庭犬には必ずしも「群れ」が必要とは限らない
犬は社会性のある動物です。犬と祖先が同じであるオオカミが狩りや子育てなどを群れの仲間と協力して行うことから、愛犬にも「群れの仲間」が必要なのでは?と思う方もいるかもしれません。
私たちが共に生活する犬は「イエイヌ」と呼ばれます。太古の昔、オオカミの中で人に慣れやすい子を人が家畜化していったことで「オオカミ」と「イエイヌ」が分岐したと考えられています。
イエイヌはオオカミよりも人間への愛情表現が豊かで、人とのコミュニケーション能力に優れているという違いがあります。
愛犬にとって飼い主さんやご家族が「群れの仲間」になりますので、必ずしも犬同士の仲間が必要ということはないでしょう。
多頭飼いしても留守番は寂しい
「お留守番の際に愛犬が寂しくないように」と多頭飼育を検討する方も多くいます。
確かに同居犬がいることで「ひとりぼっち」よりも寂しくないと思われますが、飼い主さん不在の状況では大なり小なり寂しさを感じるでしょう。
飼い主さんとの時間が最も幸せ
飼い主さんは愛犬にとってリーダー的存在であり母親的存在でもある、確固たる安心を感じられる存在です。
たとえ多頭飼育をしていても、飼い主さんとのコミュニケーションが不足することは愛犬にとって大きな不安となるでしょう。
犬を多頭飼いするメリットとデメリット
先住犬にとってのメリットとデメリット
犬の多頭飼いを検討する際に最も重要なことは「先住犬となる愛犬にとって幸せなことかどうか」です。
先住犬にとって多頭飼いは、以下のようなメリットが考えられます。
・遊び相手ができる
・他の犬との交流を学ぶ機会を得られる
・よい刺激を受けられる
一方で、先住犬にとっては以下のようなデメリットも考えられます。
・飼い主さんの愛情が自分だけのものでなくなる
・新入り犬との関係性がストレスになる恐れがある
・自分の居場所や物を新入り犬に取られストレスを感じる
新入り犬にとってのメリットとデメリット
犬は社会性のある動物ですので、他の犬の様子から学ぶ能力があります。
新入り犬にとって先住犬は「お手本」となる先輩です。新入り犬にとって、以下のようなメリットが考えられます。
・先住犬を見てトイレなどのルールを学べる
・他の犬との関わり方を学べる
新入り犬にとってのデメリットとしては、以下のようなものが考えられます。
・飼い主さんの愛情が自分だけのものではない
・先住犬との関係性がストレスになる恐れがある
飼い主さんにとってのメリットとデメリット
犬の多頭飼いを検討する上で、飼い主さんにとってのメリットやデメリットを把握することも大変重要です。
飼い主さんにとっては、以下のようなメリットが考えられます。
・大好きな犬たちに囲まれて過ごせる
・1頭1頭の個性を感じられる
・1頭飼育よりも愛犬を退屈させない安心感がある
・ペットロスの不安を軽減できる
一方で、以下のようなデメリットが考えられます。
・お世話の手間が増える
・愛犬にかかる費用が増える
・住環境のスペースが必要になる
・場合によってはお散歩を個別で行う必要がある
愛犬の頭数が増えるということは、楽しさも大変さも増えるということです。
犬を多頭飼いする際に気を付けたいポイント
犬同士の接触はワクチン接種が済んでから
新入り犬が子犬であるケースが多いかと思います。その場合、ワクチン接種が済むまでは先住犬との接触を控え、ケージ越しに距離を取ったご挨拶までにすると安心です。
子犬は母犬の初乳から免疫をもらいますが、生後2〜3ヶ月になると徐々に免疫が失われていきます。ワクチン接種が済んでいない子犬と他の犬が接触すると、子犬が感染症を起こすリスクがあるのです。
最初のうちは飼い主さんが見守る
自宅にいきなり知らない人が入ってきたら、おそらくほとんどの方が「え、何事ですか……なぜ勝手に入ってきたのですか……?」と戸惑うのではないでしょうか。
多頭飼育の最初の頃は、愛犬も同じような戸惑いを抱くかもしれません。
これは先住犬の性格にもよります。とてもフレンドリーで「お友達犬を大募集中!誰でもウェルカム!」という性格の子であれば、新入り犬の登場に歓喜するかもしれません。
しかし警戒心が強い子の場合は、自分のテリトリーに入ってきた見知らぬ犬に対して強い緊張感を感じるでしょう。相手が何者かわからないうちは、お互い攻撃的になってしまうかもしれません。
先住犬と新入り犬が触れ合う時間は、お互いに慣れて安心するまで飼い主さんが見守ってあげた方がよいでしょう。
犬同士を仲良くさせようと干渉しない
飼い主さんとしては、いち早く愛犬たちの仲睦まじい姿が見たいものです。しかし焦りは禁物で、新入り犬と先住犬との関わりに干渉しすぎないことが大切です。
犬にも「信頼できる相手しか許したくない」距離感があります。まだ信頼関係が築けていないのに無理に愛犬たちを近づけてしまうと、お互いに強いストレスを感じる恐れがあります。
もしどちらかが「もう構わないで!ひとりになりたい!」という反応を見せたら、ケージに入れてあげたり別室に移動してあげたりするなど、飼い主さんが愛犬たちを離してあげる必要があります。
先住犬の安心感を変わらずに保つ
犬を多頭飼いする際は「先住犬の安心感を保つ」ことを意識しましょう。
先住犬にとって最も恐ろしいことは、飼い主さんの愛情が十分に受けられなくなることです。自分だけの居場所や物が誰かに取られることも、犬が不快感や不安を感じる原因となります。
新入り犬用のベッドやケージ、おもちゃ、食器などは新たに用意して、先住犬のパーソナルスペースを守ることが大切です。最初はトイレも別々で用意してあげるとよりよいでしょう。
居場所や物などのハード面だけでなく、コミュニケーションというソフト面も重要です。
つい新入り犬に構う時間が増えやすいので、先住犬が寂しさや不安を感じないよう平等に接してあげましょう。
ごはんやおやつを与えるタイミングなど、何事も先住犬を優先してあげるのがおすすめです。
お散歩はそれぞれのペースを見極める
必要な運動量は、犬種や年齢などによって個体差があります。
犬種ごとに特性があり、あまり運動量を求めない犬種もいれば、十分な運動量が必要な犬種もいます。老化によって体力が衰えてくるため、愛犬の年齢に応じた強度の運動を行うことも大切です。
1頭1頭の必要な運動量が異なる場合、同時にお散歩をするとペースが異なり、愛犬それぞれにストレスがかかる恐れがあります。
場合によっては愛犬を別々にお散歩に連れて行く必要があるため、飼い主さんへの負担になることもあるでしょう。
多頭同時にお散歩に行くときは、愛犬の脱走や事故、拾い食いなどのアクシデントに1頭1頭気を付けてあげることも重要です。
多頭飼いを始めたことがきっかけでご夫婦やご家族の方と一緒に愛犬のお散歩へ行くようになり、犬同士だけでなくご家族同士の時間も充実したという方もいます。
犬同士の相性について
身体の大きさや力の差に注意しよう
愛犬同士の体格差や力の差が大きすぎると、重大なケガを負う危険性があります。
たとえ悪気がなかったとしても、遊んでいて興奮しているときや怒ったときなどに咄嗟に強い力が出てしまうかもしれません。
犬種や性格から、先住犬とお迎えする犬の相性を考えてあげるとよいでしょう。
年齢差に注意しよう
シニア犬にとって子犬との触れ合いがよい刺激となり、暮らしの活力になることも多くあります。
一方で、年齢差がシニア犬・高齢犬にストレスを与えるリスクもあります。
子犬は成犬よりも睡眠時間が長い傾向にありますが、起きている最中は元気いっぱい遊びたがることが多いです。目に映るものすべてに興味を持つ頃なので、ゆっくりまったり過ごしたいシニア犬にとってはイライラの種になる恐れがあります。
シニア犬が嫌がったり怒ったりする様子を見せたら離してあげるなど、飼い主さんがお互いの距離感を見守ってあげるとよいでしょう。
子犬の性格を見極めるポイント
お迎えする子犬の性格を見極めたいときは、呼びかけた時の反応をチェックしてみましょう。
声をかけた時にしっぽを振ってすぐに駆け寄ってくる子の場合、以下のような傾向が挙げられます。
・好奇心旺盛
・コミュニケーションが取りやすい
・興奮しやすい
・怖いもの知らず
呼びかけに対して興味を示しつつ、少し遅れて寄ってくる子の場合は、以下のような傾向が挙げられます。
・マイペース
・危険かどうか判断する慎重な性格
呼びかけても寄ってこない、または呼びかけに反応しない子の場合は、以下のような傾向が挙げられます。
・落ち着きがある
・臆病
・人見知りや犬見知り
・静かに過ごすのが好き
呼びかけに対して吠える子や、呼びかけの有無に限らずスペースの隅にうずくまる子の場合、以下のような傾向があると考えらえます。
・神経質
・警戒心が強い
このように、子犬の反応や様子で性格の傾向を見極めて、先住犬となる愛犬との相性を考えてあげるとよいでしょう。
仲良くなりやすい犬同士の相性
相性がよいとされる犬同士の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
・お互いフレンドリーな性格である
・年齢差が5歳以内
・異性同士
・同じ犬種
男の子と女の子の異性同士の組み合わせはトラブルを起こしにくいと言われます。お互いに避妊去勢手術を行わないと興奮によるトラブルに繋がる恐れがあるため、気を付けましょう。
年齢差がない方が相性がよいとされていますが、介護や闘病の時期が被ると飼い主さんの負担が大きくなる恐れがあります。
同じ犬種であれば体格差も少なく性格の傾向が似ているため、多頭飼いしやすいという意見もあります。
多頭飼いに向かない犬の特徴
多頭飼いよりも1頭飼いの方が愛犬にとってよい場合があります。
以下のような特徴がある場合は、多頭飼いをよく検討する方がよいでしょう。
・興奮しやすい
・攻撃性がある
・とても臆病である
・他の犬が苦手
・治療や介護の必要がある
攻撃性や臆病さなどは犬同士のトラブルに繋がりやすい特徴です。
年齢や持病の有無などによっては、飼い主さんが愛犬1頭にお世話の時間と愛情を注いだ方がよい場合があります。
犬を多頭飼いする際の住環境のポイント
多頭飼い可の住宅かどうか
賃貸住宅の場合は、その家が多頭飼いを許可されているかどうかを確認しましょう。特に集合住宅の場合は「小型犬1頭まで可」というように、飼育可能な犬種や頭数が決められている場合が多くあります。
持ち家や一戸建て賃貸の場合でも、多頭飼いしても愛犬1頭1頭に十分なスペースが用意できるかを検討しましょう。
吠えやすい子の場合、近隣住民とのトラブルに発展しないようトレーニングをしたり防音性を見直したりするなどの対策が必要です。ニオイもトラブルになりやすいため、住まいの清潔さを保つ工夫も必要です。
必要なものは頭数分用意しよう
おもちゃやベッド、ケージなど、愛犬に必要なものはすべて頭数分用意してあげましょう。
犬には自分のプライベートスペースがありますので、愛犬それぞれの「ハウス」となる居場所の確保が重要です。愛犬たちの性格によっては同じトイレを共有したくない場合があるため、新たに用意しておくと安心です。
最初のうちはケージやハウスの距離を置く
インテリアの見栄え的にも愛犬たちのケージを並べて置きたいところですが、新しい子をお迎えした最初のうちは「ハウス」となる場所を離してあげるとよいでしょう。
愛犬が自分たちのペースで信頼関係を築いていくことが望ましいため、ふたりの距離感を意識して住環境を整えてあげてくださいね。
ごはんの横取りに注意しよう
1頭だけで暮らしていたときは、横取りの心配もなく自分のペースで食べられます。犬が増えることでいきなり横取りの不安が出てくると、愛犬は急いで食べなくてはならなくなります。
気の弱い子は横取りされると諦めてしまい、十分にごはんを食べられないこともあるでしょう。
年齢や体調によっては別々のごはんを食べる必要もありますので、ごはんの横取りを防止する工夫について考えてあげてくださいね。
飲み水も複数用意しよう
愛犬の健康維持のために、しっかりと水分補給できる環境づくりが大切です。飲み水の設置場所も増やし、いつでも新鮮な水が飲めるようにしてあげましょう。
犬同士が仲良く遊べるようになると、追いかけっこの最中に飲み水をひっくり返してしまうこともあるかもしれません。飼い主さんと愛犬たちの動線を考慮した上で飲み水を複数箇所に置いてあげるとよいかと思います。
まとめ
お世話や金銭面では大変なことも増えるけれど、幸せが2倍にも3倍にも増える犬の多頭飼い。犬を愛する方ならば、犬たちに囲まれる多頭飼いの暮らしは憧れますよね。
犬の多頭飼いを検討する際は先住犬となる愛犬の性格や年齢を考慮し、多頭飼いが愛犬にとって望ましいことなのか考えてあげてください。そして飼い主さんが「犬が増えても1頭1頭にお世話の時間・費用・愛情などを注げるかどうか」も検討してみるとよいでしょう。