犬がレーズンを食べちゃった!飼い主は何をするべき?症状や対策も
私たちの生活の中には、犬にとって危険な食べ物が多く存在しています。
なかでも果物は身近な存在であり、人間はミネラルやビタミンなどさまざまな栄養素を摂取できることから、つい犬にも与えたくなるものです。
しかし、果物の一部には犬の健康を脅かすものもあります。
今回は、犬がレーズンを食べてしまったときの対処法や症状などをご紹介します。
レーズンはパンやお菓子などにも含まれているため、誤食の危険性が高い果物のひとつです。レーズンの危険性を学び、愛犬を危険から守りましょう。
愛犬がレーズンを食べた!飼い主はどうするべき?
まずは、愛犬がレーズンを食べてしまったときの対処法をご紹介します。
慌てて検索して当記事に辿り着いた飼い主さんは、冷静に対処するためにもぜひ参考にしてくださいね。
症状が出ていなくてもすぐに動物病院へ
愛犬がレーズンを食べてしまった可能性があるときは、症状が出ていなくてもすぐに動物病院で診察を受けるべきです。
犬にとって害のある食べ物の中には「しばらく観察しても変化がなければ緊急性はない」と判断されるものもありますが、レーズンは違います。レーズンの誤食による体調の悪化は、食後すぐではなく2~5時間程度で現れるのです。
またレーズンによる中毒は「ぶどう中毒」とも呼ばれ、場合によっては命に関わる重篤な症状が出ます。発見や治療が遅れるほど危険性は高まるため、様子見の時間を取らずにすぐに病院に連絡をして、愛犬を連れて行く準備を始めてください。
症状の変化をメモしておくと診察がスムーズに
動物病院を受診する際は、可能な限り症状の変化をメモしておくと診察がスムーズになります。
犬の体調の変化だけではなく、食べたレーズンの量や水を飲んだ回数、おしっこの回数などをメモしておくと適切な診療につながりやすくなります。
レーズンが配合されているパンやお菓子などを食べてしまった際は、成分表が記載されたパッケージを持参するとよいでしょう。
嘔吐や下痢は現物を持っていくのがベター
動物病院に行く前に愛犬が嘔吐や下痢をしてしまった際は、現物を持っていくことで診察のサポートになります。トイレ用のシートに包み、ビニール袋に入れて持っていくとよいでしょう。
もし持参が難しい場合は、スマートフォンで写真や動画の撮影をしておくことをおすすめします。
動物病院で行われる処置
レーズンを誤食した愛犬を動物病院に連れて行ったときに、病院で行われる治療についてご紹介します。
治療内容や順番は、食べた量や経過した時間、犬の容態によって変わります。
多くの場合は問診の後、犬にレーズンを吐かせるための催吐処置や胃洗浄が行われ、体内からの異物を除去することに努めます。
さらにレーズンの有害物質が血液中に広がることを防ぐため、点滴を行います。点滴は、下痢や嘔吐により失われた水分を補給する目的もあります。
以上は、ぶどう中毒による症状に対する対症療法です。ここからさらに腎臓の数値チェックや炎症マーカーの検査を行い、今後の対処法を見極めていきます。
ぶどう中毒によって犬の生命に危険が及ぶ可能性がある際、とくに注目されるのが腎臓の状態です。
検査の結果で腎臓にダメージを受けていることが判明したら、入院が必要となるケースもあるでしょう。入院中は輸液や利尿剤の点滴などを行い、場合によっては透析機器がある病院に移動して血液透析を行います。
これらの治療がスムーズに行われることで腎臓の機能が回復し、正常な状態に戻る可能性があります。とはいえ医療に100%はありません。早期発見と早期治療が回復の肝なのです。
犬はレーズンを食べていいの?
ぶどう・レーズンは絶対にあげてはいけない!
身近な果物であるレーズンですが、犬にとっては重篤な中毒を発症させる食べ物です。どのように加工されていても、絶対に与えてはいけません。
レーズンに含まれる成分は加工元となるぶどうにも含まれているため、レーズンと同様に与えてはいけません。
レーズンの危険性が注目されたのはごく最近
犬の生命を危機にさらすレーズンですが、危険性が注目され始めたのは実は比較的最近です。2001年に、大量のぶどうを摂取した多くの犬が急性腎不全を起こす痛ましい事故が発生しました。
それを皮切りに世界中でも類似事故が発生し、「犬にとってレーズン(ぶどう)は毒である」という認識が広まったのです。
レーズンがもたらす愛犬への悪影響
犬がレーズンを食べたときに現れる症状
犬がレーズンを食べ、ぶどう中毒を発症したときの代表的な症状をご紹介します。
・食欲がなくなる
・元気がなく、ぐったりする
・嘔吐する
・口臭がツンとしたアンモニア臭のようになる
・尿が少ない・尿が出ない
・意識が朦朧とする
・背中を丸めてじっとしている
背中を丸めてじっとしている状態は、ぶどう中毒により生じた腎臓や周辺の痛みに耐えているためだといわれています。
原因となる物質は「オクラトキシン」の説が濃厚
犬がレーズンの誤食によって中毒症状を起こす原因は、実はまだはっきりと解明されていません。しかし最近の研究により、「オクラトキシン」という物質が原因である説が出てきました。
オクラトキシンはレーズンやぶどうに付着したカビの一種であり、オクラトキシンが生成するタンニン・ポリフェノール・フラボノイドなどの毒素が犬に悪影響を及ぼすと考えられています。
中毒症状が出るまでの時間
ぶどう中毒は、誤食から2~5時間程度で症状が現れるといわれています。
レーズンの危険量・致死量
犬にとってレーズンの致死量は、現在まだ解明されていません。しかし過去の報告例に基づき、中毒症状が現れる危険な量が考察されています。
具体的には、体重1kgあたり11~30gのレーズンを食べた犬に中毒症状や急性腎不全の症状が現れたと報告されています。レーズンは1粒平均0.6gであるため、危険な量は犬1kgあたりレーズン約18粒以上に換算されます。
もちろん犬によって個体差はあるため絶対的な基準ではありませんが、通院時に獣医師に伝える際の参考として覚えておきましょう。
ぶどうはすべての加工品がNGだと認識しよう
レーズンの誤食によるぶどう中毒は、果物のぶどうはもちろんあらゆる加工品で発症する可能性があります。レーズン入りのパンやお菓子だけではなく、各種ワインやぶどうジュースなども発症の原因になります。
実際に、ぶどうの果汁が含まれているジュースの誤飲により中毒を発症したケースもあるそうです。
加工の有無に限らず「ぶどう製品はすべてNG」と覚えておいてくださいね。
レーズンがもたらす「急性腎不全」の恐ろしさ
レーズンが犬にとって禁忌とされる理由は、ぶどう中毒による急性腎不全が命に関わる重篤な症状を引き起こすためです。
急性腎不全は数時間から数日間の短期間のうちに腎臓の機能が低下する病気です。急性腎不全の原因は腎前性・腎性・腎後性の3種類に分けられ、ぶどう中毒で発生する急性腎不全は「腎性」にあたります。腎性は腎臓自体が障害を受けることにより、機能が低下している状態です。
緊急性が高い疾患であり、早い段階で適切な医療を受けることで回復する子もいれば、急性腎不全がコントロールできずに死亡する子もいます。また命は取り留めたものの、慢性腎臓病に移行してしまうケースも珍しくありません。
飼い主さんが目を離しているときや留守番中に誤食してしまうと、発見が遅れてしまうこともあるでしょう。
ぶどう中毒による急性腎不全を防ぐためには、普段から誤食の可能性をできる限りなくすことが重要になります。
ぶどう以外の果物は食べてもいいの?
ここでは、ぶどう以外の身近な果物を犬に与えてもよいのかを解説します。
実際に与える際は犬の健康状態や体重によって調整し、不安があれば獣医師に相談しましょう。
またこちらに記載がない果物を与える際も必ず事前に調べ、犬に与えて問題ないかを確認してから与えてくださいね。
【少量ならOK】いちご
いちごは、ヘタの部分を取って与えるのであれば大きな問題はありません。
レモン果汁を上回る豊富な量のビタミンCが含まれており、ストレスの軽減が見込めます。
ダイエット中のおやつとして少量与えるのにおすすめです。
【少量ならOK】りんご
りんごは犬にとって安全な果物のひとつです。与える際は芯と種の部分を除き、小さくカットして果実の部分だけを食べさせましょう。
また有機りんご以外は皮も剥いてあげてください。
りんごに含まれるペクチンは腸内環境を整える効果がありカロリーも少ないため、いちごと同様にダイエット中のおやつに向いています。
【少量ならOK】バナナ
バナナを与える際は、皮だけではなく果実表面の筋を取ってあげましょう。
バナナは犬にとってエネルギー補給に優れた果物であり、整腸作用に期待できるカリウムが多く含まれた果物です。おなかの調子が優れない愛犬へのサポート食品としておすすめです。
【NG】プルーン(すもも)
プルーン(すもも)は犬にとって毒性が高い果物です。とくに葉や種、茎の部分は毒性が高く、呼吸困難やショック状態を起こした症例が報告されています。
乾燥する過程で毒性はさらに強くなるため、果物のすももよりもプルーンのほうが危険性は高いです。
【NG】アボカド
アボカドに含まれているペルシンという成分は、人間には無害ですが犬が食べると下痢や嘔吐を引き起こす原因になります。
また大きな種を誤って飲み込むと、食道に詰まったり腸閉塞を起こしたりする可能性もあり、命に関わります。
アボカドに含まれるペルシンの良は品種や産地により変わるため、一貫して与えないことが大切です。
【NG】いちじく
犬がいちじくを食べると、口内環境が荒れてしまいます。
いちじくに含まれているフィシンという成分はたんぱく質分解酵素であり、果実が口の中に触れることで粘膜が荒らされてしまうのです。
大量のよだれが出るようになったり、口内炎の原因になったりしてしまいます。
犬がレーズンを食べないようにするためにできること
普段から人間の食べ物をあげない
犬のレーズンの誤食を防止するためには、普段から人間の食べ物を与えないことが大切です。
日常的に人間の食べ物を与えていると、人間の食べ物をつまみ食いすることが犬にとって当たり前の感覚になってしまい、レーズンのような危険な食べ物でも目を離した隙に食べてしまいやすくなります。
うっかりこぼしてしまわないように、食べる際は必ずトレイを敷く工夫も大切です。
「買わない」も立派な対処法
もしも既に愛犬が人間の食べ物を貰うことに慣れてしまっている場合は、「しつけが完了するまで危険な食べ物は買わない」という選択も立派な対処法になります。
果物を購入する際も、いちごやりんごなど犬への危険性が低い商品に絞るのもよいでしょう。
誤食を防止することは大切ですが、万が一のことを考えて元を断つのもひとつの愛情の形です。
散歩コースにぶどうを栽培している場所がないか確認する
地面に落ちているぶどうをうっかり食べてしまわないように、普段の散歩コースにぶどうを栽培している場所がないか確認しましょう。
畑はもちろん、家庭栽培をしているご家庭がないかもチェックしてあげてくださいね。
まとめ
今回は、犬にとってのレーズンの危険性や中毒症状、対処法についてご紹介しました。
人間にとってレーズンは安価で美味しく栄養価もあり、手軽に購入しやすい食品ですよね。またレーズンの加工元となるぶどうはさまざまな食品に配合され、味や香りも優れていることから犬の興味を引きやすい果物です。
愛犬の健康を守るために保存場所を決め、誤食につながらない生活づくりを心がけましょう。
公開日:2020/10/14 最終更新日:2022/8/23