犬のチョコレート中毒とは?食べたときの対処法&症状も解説
人間にとっては安全な食べ物でも、犬にとっては命を脅かす危険な食べ物である場合があります。
犬が食べてはいけない人間の食べ物の中で、代表的なもののひとつがチョコレートです。
「犬にチョコレートをあげてはいけない」と聞いたことはあっても、なぜあげてはいけないのか・どのような症状が出るのかまでは知らない人も多いのではないでしょうか?
今回は、犬がチョコレートを食べることにより発生するカカオ中毒の症状についてご紹介します。
愛犬の健康や生命を守るために、今からでも正しい知識を身に付けましょう。
愛犬がチョコレートを食べた!飼い主はどうするべき?
症状が出ていなくてもすぐに動物病院へ
犬がチョコレートを誤食してしまった際は、食べた量や種類にかかわらずすぐに動物病院を受診しましょう。
カカオ中毒において、家庭でできる応急処置はほぼありません。インターネットには自宅でできる催吐処置の方法が記載されているサイトもありますが、専門技術がない人が行っても無闇に犬の健康に害を及ぼす可能性が高いため決して行ってはいけません。
症状の変化をメモしておくと診察がスムーズに
病院に電話する際や実際に受診する際は、症状の変化や食べたチョコレートの成分表を準備しておくと診察がスムーズになります。
いつ頃にどの位の量を食べたのかや、おしっこや嘔吐など体調の推移をメモしておきましょう。
また食べたチョコレートのパッケージがあれば持参してください。チョコレートは種類によって含まれている有害成分が違うため、カカオの含有量が記載された成分表は適切な治療の目安になります。
嘔吐や下痢は現物を持っていくのがベター
病院に行くまでに愛犬が嘔吐や下痢をしてしまった場合、可能であれば現物を病院に持参しましょう。
トイレシートやビニール袋に包んで持っていくことが難しければ、スマートフォンで写真や動画の撮影をしておくことをおすすめします。
動物病院で行われる処置
動物病院で行われる処置は、食べたチョコレートの量や種類、時間、愛犬の健康状態によって変わります。
基本的には問診の後、誤食からあまり時間が経過していない場合は催吐処置を行います。
何らかの理由で吐かせることが難しい場合や大量のチョコレートを食べてしまった場合などには胃洗浄を行い、異物を体から除去することに努めます。
カカオ中毒の原因となるテオブロミンという成分に対応する解毒剤はありません。そのため毒素を中和させる処置はできず、中毒症状が出たとしても行われるのは点滴や胃洗浄などの対症療法のみです。
動物病院や処置内容によってかかる費用は変わりますが、催吐処置の場合は約10,000円、胃洗浄の場合は約25,000円の費用が必要です。点滴や入院など処置の工程が増えるほど加算されます。
「犬にチョコレートを与えてはいけない」は本当?デマ?
カカオ中毒は命に関わる恐ろしい症状
「犬にチョコレートは禁忌」という情報は、犬を飼育したことがない人でもご存知かもしれません。しかし言葉の強さだけが一人歩きし「本当にそんなに危ないの?」と疑問を抱いている人も多いかもしれませんね。
結論から言うと、カカオ中毒は命に関わる恐ろしい症状です。大げさではなく、実際に命を落としてしまうほどに重篤な症状であることを覚えておきましょう。
カカオに含まれるテオブロミンは人間が摂取するとリラックス効果を得られますが、犬には劇物です。
原因は、犬はテオブロミンを分解・排出する機能が低いためです。
その結果として嘔吐や下痢を繰り返し、大量に摂取すると神経や心臓へ過剰な作用を起こしてしまいます。そして最悪の場合、死に至るのです。
悪質なデマに惑わされないように
インターネットで検索すると、カカオ中毒がデマだという悪質な情報が見つかることがあります。
日本では、一人ひとりがどのような思想を持っていても自由です。しかし、カカオ中毒は国家資格である獣医師が危険だと認め、啓蒙し続けている症状です。実際に幾匹もの犬がカカオ中毒で命を落としています。
悪質なデマに惑わされないよう、正しい知識を身に付けましょう。
犬がチョコレートを食べた際の中毒症状
具体的な症状・変化
以下に、犬がチョコレートを食べたときに現れるカカオ中毒の症状をご紹介します。
・嘔吐
・下痢
・失禁
・落ち着きがなくなりソワソワする
・震え
・心拍数の増加
・痙攣
とくに震えや心拍数の増加、痙攣などは重篤な症状であるため、早急に処置を行わなければ生命の危険に直結します。
症状が現れるまでの期間
犬のカカオ中毒の症状は、食後すぐには現れません。
食べてから平均して数時間から半日ほど経過してから現れるため、油断は禁物です。
危険なチョコレートの量
チョコレートが犬に危険を及ぼす理由は、カカオにテオブロミンが含まれているからです。犬の体重1kgあたり90~100mgのテオブロミンを摂取することで中毒症状が現れるといわれています。
一般的なチョコレート100gに含まれているテオブロミンは、約250mgです。つまり体重1kgあたり25gほどのチョコレートを食べると危険だとわかります。
ただし、チョコレートの種類によってテオブロミンの含有量は変わるため一概には言い切れません。テオブロミンはチョコレートの苦み成分でもあるため、ホワイトチョコレートやミルクチョコレートよりもダークチョコレートのほうが危険だといえます。
チョコレートの致死量
犬の体格や体重によって個体差はありますが、犬のチョコレートの致死量は体重1kgあたりテオブロミン100~200mgといわれています。目安としては、一般的な板チョコが1枚で約50gであるため、5kg程度の小型犬であれば約4枚分となります。
中毒症状が出る量と同じく、致死量もチョコレートの種類によって変わります。
症状の出方には個体差がある
人間でも、体質によって「コーヒーを1杯飲んだだけで眠れなくなる」人や「チョコレートを一口食べただけでリラックスできる」人がいますよね。犬も同様に、特定の成分に対してどのように反応するのかは個体差があります。
5kgの犬のチョコレートの致死量は板チョコ4枚分、と聞くと「そんなに買うことも食べられることもないだろう」と思うかもしれません。しかし当然ながら「1口食べただけだから安心」というわけではないのです。
致死量とは「確実に死に至る量」です。個体によって前後するものと認識し、常に危機感を持つようにしましょう。
カカオ系食品は全般的にNG
犬のカカオ中毒は、板チョコやトリュフのようなチョコレート菓子だけではなく、カカオが配合されているあらゆる食品で発症します。
例えばチョコレートアイスクリームやココアパウダー、ホットチョコレートなどのすべての食品がNGです。
とくにマカデミアナッツ入りのチョコレートやカフェイン入りのチョコレートは、チョコレート以外の有毒物質も多く含まれているため犬の生命を脅かします。
「迷ったら与えない」を徹底しつつ、犬が届かない場所に収納するように心がけましょう。
チョコレート以外の犬の命に関わる食べ物
たまねぎ
たまねぎを犬に与えると、胃腸炎や貧血を引き起こすだけではなく赤血球に深刻なダメージを与えます。
誤食から中毒が現れるまで数日間を有することもあり、発見が遅れるケースも珍しくありません。
またたまねぎと同様に、ニンニクやネギなども中毒を引き起こすため与えてはいけません。
ぶどう
ぶどうは犬にとって有毒性の高い果物です。
摂取すると急性腎不全を引き起こす可能性があり、チョコレートと同じく早急に対処をしないと命に関わるケースもあります。
レーズンやぶどうジュース、ワインなどの加工品も与えてはいけません。
キシリトールガム
ガムや歯磨き粉などに含まれているキシリトールは、犬にとって有害です。
インスリンには血糖値が上がりすぎないように抑えてくれる働きがありますが、犬がキシリトールを摂取するとインスリンの発生が促進されて低血糖を引き起こしてしまうのです。
重篤な低血糖の症状では痙攣や昏睡が現れ、最悪の場合は死に至ることもあります。
カフェイン
コーヒーやお菓子などに含まれているカフェインは、犬が摂取すると2~4時間以内にさまざまな症状が現れます。
嘔吐や下痢、失禁などに加え、重篤な場合は不整脈や痙攣、筋肉の硬直なども見られます。
摂取量や犬の状態などによっては死に至る場合もあるため、決して与えてはいけません。
アルコール
人間と同様に、犬もアルコール中毒を引き起こします。
アルコールに含まれているエタノールとビールに含まれているホップは、犬にとって有毒物質です。
アルコール中毒では嘔吐や高体温、見当識障害、痙攣発作などが現れ、重篤な場合は臓器系の機能不全が起こり命を落とします。
他の食べ物も自己判断せず獣医師に相談しよう
記載した食べ物以外にも、犬にとって有害な食品は多く存在します。
「ほんの一口だけ」のつもりが、命が脅かされたり回復後も後遺症が残ってしまったりする可能性があります。
基本的には人間の食べ物を与えず、もし与えたいと思ったときにも自己判断してはいけません。必ず獣医師に相談し、愛犬の健全な食生活を守りましょう。
チョコレートの誤食防止のためにできること
普段から人間の食べ物を与えない
飼い主さんがまず始められる犬の誤食防止は、普段から人間の食べ物を犬に与えないことです。
人間の食べ物を食べるのが犬にとって当たり前になっていると、飼い主さんが食べているチョコレートをつまみ食いしたり、床に落ちたチョコレートを抵抗なく食べてしまったりなどの事故が発生します。
与えられた食べ物しか食べないことを徹底するしつけを行い、誤食を防ぎましょう。
食べる量だけを取り、こぼさない
犬の誤食を防ぐために、こぼさないように食べる工夫も大切です。
チョコレート食品を食べる際は必ずトレイの上に置き、油断したタイミングで犬が食べてしまわないように必要な量だけを取り分けるようにしましょう。
犬の目の届かない場所で食べる
犬は、大好きな飼い主さんが美味しそうな食べ物を食べていると、つい自分も欲しくなってしまうものです。チョコレートを食べるときはできるだけ犬の目の届かない場所で食べるよう配慮してあげましょう。
保存する際も強度の高い入れ物に入れ、犬が届かない場所にしまうなどの工夫が大切です。
もしものための準備も大切
最も大切なのは、犬の誤食自体を防ぐことです。しかし万が一のときに備え、冷蔵庫や壁などの見えやすい場所に緊急連絡先を書いておきましょう。
最寄りの動物病院や夜間診察を行っている病院などの連絡先を記載しておくことで、飼い主さんがパニックになっても適切な行動を取りやすくなります。
まとめ
今回は、犬がチョコレートを食べることで発症するカカオ中毒についてご紹介しました。
チョコレートは「人間にとっては美味しいが、犬にとっては危険な食べ物」の代表例です。身近な食品であることから、ご家庭に常備されているケースも多いのではないでしょうか。
大切な家族を守るために、カカオ中毒をはじめとする犬のさまざまな中毒症状の知識を身に付け、誤食事故を未然に防止しましょう。
愛犬の健康を守ってあげられるのは、他でもない飼い主さんなのです。
公開日:2020/10/14 最終更新日:2022/8/23