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【元動物看護師が解説】愛犬の歯石を取ってあげたい!後悔しないために知っておくべき大切なこと

獣医師に歯をチェックされる犬

私たちが歯医者に通うように、犬にも歯のケアは必要です。

なぜなら歯垢や歯石、口臭などで悩んでいる飼い主が多いから、そして犬が歯のケアのために自分で何かをしてくれるわけではないからです。

そこで重要なのが毎日の歯磨きですが、様々な理由で上手くいかずに諦めてしまうケースはめずらしくありません。

そうなると知らないうちに犬の歯垢、歯石はどんどん付着していき、気付くと簡単には取れないほどの状態になってしまい「どうしよう?」と真剣に悩むことになります。

今回は、犬の歯石を取るためにどのような選択肢があるのか、またどれを選べばよいのかについて解説していきます。

歯垢と歯石の違い

歯医者の道具

はじめは口の中に残った食べカスによって細菌が繁殖し、その塊が「歯垢」として歯の周りに付着していきます。

そして歯垢は、時間とともに歯垢は石灰化し石のように固くなります。このような状態を「歯石」と呼びます。

歯垢であれば歯磨きをしっかりすることによって取り除くことができますが、歯石は歯の表面に固着してしまっているため簡単には取り除くことができません。

歯石を取るにあたって大切なことは2つ

歯医者の道具

歯石は放っておくと様々な病気の原因となるため取ってあげる必要があります。

その際に知っておくべき大切なことが2つあります。

歯垢、歯石を完全に取る

歯石は取れればOKというものではないため注意が必要です。

目に見える歯石は言わば氷山の一角で、歯の裏側や歯茎の隙間といった見えない部分にも歯垢や歯石はしっかりと付いています。

これらを完全に取り除かなければ、本当の意味で歯石を取ったとは言えません。取り残された歯垢や歯石は歯のみならず、体にも悪影響を与え続けることになります。

きれいになったように見えるだけでは不十分で、細部に至るまで取り切れているのかどうかが重要なのです。

歯の表面を研磨して再発を防ぐ

歯石を取るにあたってもう一つ大切なことは、再発をできる限り抑えることです。

そのために必要なのが、歯石を取る時に同時に行う歯の表面の研磨です。

研磨をすることによって歯の表面はツルツルになるため、歯石の元となる歯垢が付きづらくなり再発を防いでくれます。

歯石を取った後の歯の表面は凹凸ができているため歯垢が付きやすく、研磨をしていないと数か月後にまた歯石が付いてしまうこともあり得ます。

目に見えない部分の歯石もしっかり取ったうえで研磨も行う。この2つのポイントを押さえ、どのような方法で歯石を取るのかを選択しましょう。

犬の歯石を動物病院で取る方法

犬の歯石取りをする獣医師

歯石を取るための方法としてはじめに考えるべきは動物病院です。なぜなら歯石を取るための大切な2つのポイントをしっかり押さえているからです。

「犬の歯石をどうにかしたい!」と考えているなら、まずは動物病院で診てもらうことから始めましょう。

全身麻酔下で歯石を取る

動物病院で歯石を取る場合、全身麻酔をすることが基本です。

私たちが歯医者で歯石を取ってもらうようなイメージを持っていた方にとっては、かなり驚くことかもしれません。

しかし歯の裏側や歯茎に入り込んだ歯石を取りきるためには、全身麻酔なしでやることはほぼ不可能です。

犬は歯石を取るために自ら口を開けてくれるわけではないですし、器具を使って歯石を取る刺激を嫌がるのは当然でしょう。

そうなると獣医師が噛まれる危険性もあり、犬も相当なストレスがかかったうえに歯石が取り切れない事態になってしまいます。

このような理由から、犬の歯石を取るには全身麻酔が必要です。まずは診察でどの程度歯石が付着しているのかを診てもらい、さらに全身麻酔のリスクはどの程度あるのかをしっかり判断してもらいましょう。

なお全身麻酔下で歯石を取ってもらう場合の費用は、約2万~4万円程度が目安です。

ただし全身麻酔をする場合、事前に全身状態の検査(術前検査)をすることがほとんどで、血液検査や場合によってはレントゲンやエコー検査をすることもあります。

そのため歯石を取る費用とは別にプラスで1万円前後が必要となること、大型犬となるとさらに費用がプラスされることも知っておくとよいでしょう。

無麻酔で歯石を取る

動物病院によっては無麻酔による歯石除去を実施しているところもあります。

麻酔をしないため費用は1万円程度と費用を抑えられ、犬の体への負担が少ない、飼い主の麻酔に対する不安がないといったメリットがあります。

確かによいことばかりに聞こえますが、無麻酔では全ての歯石を取ることは非常に困難です。多くの犬が施術中に怖い思いをし、強いストレスを被ることになるでしょう。

ですので、無麻酔で歯石を取ることは特別な状況下での選択になります。

術前検査の結果において麻酔のリスクが高い、しかしながら重度の歯周病でできれば歯石を取りたいなど、あくまで応急処置的なものになる可能性があるため、獣医師と相談し納得したうえで決めるようにしましょう。

犬の歯石を自宅で取る方法

ソファの上で休む柴犬

ネットや店舗では犬の歯石を取るためのグッズが販売されています。

これらのグッズはどれほどの効果があるのでしょうか?

ハンドスケーラーで取る


ハンドスケーラーは先端がフックのような形をした、歯医者でよく見かける特殊な器具です。

これで犬の歯についている歯石をカリカリしますが、どこまできれいにできるのかは飼い主の技術力次第となります。

愛犬が大人しくしてくれるのかどうかも大きな要因ですし、かなりハードルは高いのではないでしょうか。

全身麻酔に大きな不安がある、金銭的な余裕がない場合に限って試してみるのはよいですが、積極的に選択するものではないでしょう。


歯石を取るためのスプレーやジェルもあります。

ハンドスケーラーとは違い飼い主の技術力は必要ないですし、シュッと吹きかけるだけなので誰でも試すことができます。

効果が出るまでにしばらく時間がかかるのと、歯石の付着の度合いによってはほとんど変化が見られない可能性もあります。

こちらもハンドスケーラーと同様に積極的に選ぶべきではなく、あくまで自己責任において使用しましょう。

トリミングサロンで取る

サロンで現れるボストンテリア

動物病院で取ってもらうには費用や麻酔の面で躊躇してしまう。とはいえ自分でグッズを使ってやるのも不安な方には、トリミングサロンで取ってもらう選択肢もあります。

全てのサロンで行っているわけではないため限定的になってしまいますが、経験を積んだスタッフが処置を行うため、歯石を取ってもらいきれいにしてもらうことができます。

ただし獣医師が処置するわけではないため、無麻酔のもとでハンドスケーラーを使用した歯石除去となります。

そのため特に目に見えない歯の裏側や歯茎の隙間の取り残しに不安は残ります。

見た目はきれいなので安心してしまいますが、目に見えない取り残しが歯周病を悪化させていたという事例もあります。油断せず、定期的に動物病院で診察してもらうようにしましょう。

犬の歯石を放置するとどうなる?

口を開けた犬

歯石を見つけた場合はやはり取ってあげることが大切ですが、もし放置してしまうとどのような悪影響があるのでしょうか?

歯の問題だからと油断していると、大きな後悔をすることになりかねないため注意が必要です。

根尖膿瘍

根尖膿瘍(こんせんのうよう)とは歯の根元で細菌感染が起こり、そこに膿が溜まってしまっている状態です。

重度の歯石と歯周病が原因の病気として有名です。

よくある例では、上顎の臼歯で根尖膿瘍が起こり、ちょうど目の下あたりの皮膚を突き破って膿がドロドロと出てくるというものがあります。

ここまで進行すると食欲も落ちますし、見た目も痛々しいため早急の治療が必要です。

あごの骨折

気付かないまま根尖膿瘍が進行してしまった場合、あごの骨が溶けて骨折してしまうことさえあります。

できる限り早く気付いてあげられるように、日頃から口の中をチェックしてあげてください。

「歯石が付いているな」と思ったら、まずは動物病院に相談しましょう。

口臭

歯垢や歯石は口臭の原因となりやすいため、愛犬の口臭が気になる場合はまず口の中をチェックしましょう。

消化器系の疾患やその他の疾患が口臭の原因になることもありますが、まずは歯石を取り除くことが口臭問題解決のファーストステップです。

心臓病や腎臓病のリスク

長らく歯石を放置してしまうと、歯肉炎による出血が起こりやすくなります。細菌が傷口から血流に乗って心臓や腎臓にダメージを与え、命に関わるような病気に発展しかねません。

また心臓や腎臓の病気は麻酔のリスクに大きく関わってきますので、歯石を取りたいのに麻酔がかけられなくなることも考えられます。

歯石が心臓や腎臓の病気に関わるとは意外かもしれませんが、放置していると思いがけない問題につながります。歯石を取ることの重要性を理解しておきましょう。

まとめ

犬をかわいがる女性

犬の歯石を取るための選択肢はいくつかあります。

ただし歯の裏側、歯茎の隙間のような目に見えない歯石を完全に取り切ろうとすると、どうしても動物病院で処置をしてもらう必要があります。

決して安くない費用や全身麻酔の心配もあるでしょうから、その点を獣医師にしっかり伝えたうえでベストな選択するとよいでしょう。