【元動物看護師が解説】犬のアレルギーって何?アトピーとの違いは?皮膚炎で悩む愛犬を救いたい!
実は多くの犬が痒みを含めなかなか改善しない皮膚トラブルを抱えており、その原因としてアレルギーが存在します。
今回はアレルギーによって起こる「アレルギー性皮膚炎」について解説します。
「アレルギーって治るの?」「色々試したけどよくならない……」
このような疑問を持っている方は、愛犬のために何ができるのかをしっかり理解することが大切な一歩になります。ぜひ最後まで読んでみてください!
犬のアレルギーを知る
本来、食物は活動するためのエネルギーや体を作るための栄養になります。
生活環境内にハウスダストや花粉などがあっても、通常であれば自然に過ごすことができます。
しかしそれらに対し何らかの原因で体が過剰に反応してしまい、嘔吐や湿疹、痒みなど様々な症状を引き起こしてしまうのがアレルギーです。
犬がアレルギーを持っていると、多くの場合に痒みの症状が現れます。ひどくなると脱毛や皮膚の状態悪化を招き、生活の質を著しく落としてしまうことになるでしょう。
そこで最初に知っておきたいのが、アレルギーの原因です。原因がわかればそれらを避けることができるかもしれません。
アレルギーの原因は、大きく以下の3つに分類されます。
食物アレルギー
食物アレルギーは、ある特定の食材に対してアレルギー反応を起こすものです。
食事で原因となるものを取り込むことによって発疹や痒みが出るため、普段のフードに含まれる食材に注意を払う必要があります。
とはいえ原因となる食材が何か、どのようなフードを与えればよいのかなどを飼い主だけで解決することは難しいです。
食物アレルギーだと判断するには、しっかりとした手順と時間をかけた食事管理が必ず必要になりますので、獣医師の指示を守りましょう。
外部寄生虫によるアレルギー
ノミ・マダニは犬の外部寄生虫における代表です。
特にノミに寄生されると痒みを感じることが多く、後ろ足で体を掻く、舐める、噛むといった行動が見られます。
通常であれば局所的な痒みで治まりますが、ノミにアレルギーを持っている場合はその反応が強く現れ、強い痒みや発疹などが体全体に及ぶことがあります。
生活環境の中に潜む様々なものがアレルゲンとなる場合=アトピー
食材やノミなど特定のものによるアレルギーはそれらを取り除くことで改善できますが、慢性的に痒みや皮膚の発赤、湿疹などを繰り返しながらも原因が不明な子には同じ対処法では改善が望めません。
このような子たちはハウスダストや花粉など生活環境内に存在するものにアレルギー反応を示し、皮膚のバリア機能も健全な子と比較して弱く、アトピーと呼ばれます。
このようなアレルギー反応を起こす理由については、その子の体質によるものが大きいとされています。アトピーの可能性が高いと診断された場合には、うまくコントロールしてあげることが大切です。
犬にアレルギーが疑われるときの特徴
痒みが現れる体の部位
犬の代表的なアレルギー反応である皮膚の痒みは体の特定の部分に現れることが多く、主に以下の箇所に出ます。
・顔
・お腹
・内股
・腋窩(わきの下)
・足先、足裏
痒がる様子がなくても、皮膚の赤みが気になるようであれば一度病院で診てもらいましょう。
皮膚の赤みは軽度の炎症であり、バリア機能も落ちているということです。放っておくと細菌や真菌(カビ)による膿皮症、マラセチア性皮膚炎などを引き起こす恐れがあります。
痒みの季節性や再発性
花粉の多い春先になると出る痒み、ノミ・マダニの多い夏や乾燥する冬など季節性を伴う痒みはアレルギーの可能性が高いです。
また一度痒みが治まったものの、短期間のうちに再発を繰り返す場合もアレルギーの可能性を疑ったほうがよいでしょう。
当然アレルギーでなくても炎症や痒みは起きますが、治療を行い、適切な環境で過ごしていれば繰り返し起こるようなことはありません。
脱毛
ここでの脱毛は毛が薄くなっているものも含まれます。
脱毛が現れる場所は痒みが現れる場所と同じであることが多いため、脱毛だけでなく痒みの有無も確認しておくとアレルギー診断に役立ちます。
犬のアレルギーの診断方法
「もしかしてうちの子アレルギーかも!?」と思ったら、動物病院で診てもらいましょう。
アレルギーであるかどうかを特定するにはいくつかの手順が必要だからです。また、時には治療が必要になります。
アレルギーを調べるためになぜ治療が必要なのかと疑問に思うかもしれませんが、その時の症状によっては治療するケースもあるため獣医師に正確な診断をしてもらいましょう。
血液検査
まずアレルギー検査で思いつくのは血液検査でしょう。
犬も人と同じく、血液検査で何がアレルゲンなのかがわかります。
しかし必ずしもアレルゲンが特定できるわけではありませんので注意してください。アレルゲンは無数にあるため、「血液検査はアレルギーの傾向を探るのに有効である」と認識するのがよいでしょう。ハウスダストなどの環境アレルゲンによるものなのか、もしくは食物がアレルゲンとなっているのかを把握するようなイメージです。
検査費用は実施する項目数などにより幅が大きく、少ない項目であれば2万円程度、全てを行った場合には7万円程度かかることもあります。
外部寄生虫の除去
ここでの外部寄生虫とはノミ・マダニのことを指し、特にノミの除去を目的としています。
ノミによるアレルギーを持つ子は、たった一匹のノミであってもアレルギー反応を示すため、必ずノミ・マダニ駆除剤が必要です。
アレルギーが疑わしい症状があり、かつノミ・マダニ予防をしていない場合には優先的に行われます。
ノミの除去だけで痒みや皮膚の状態が改善するようであれば、ノミがアレルゲンである可能性が高くなります。
細菌や真菌の治療
通常の皮膚には常在菌と呼ばれる無数の細菌や真菌が存在し、悪さをするものではありません。
しかしアトピーの場合は皮膚のバリア機能が弱いため、細菌や真菌が異常に増えてしまい痒みや皮膚炎の原因となります。
ですから、皮膚の検査をして細菌や真菌が異常に増えていることがわかればそれらを治療し、健康な皮膚の状態に戻してあげなければなりません。
皮膚を健康な状態に戻したうえで同じような症状を繰り返すようなことがあれば、アトピーの可能性が高くなります。
除去食試験
ノミなどの外部寄生虫によるアレルギーの可能性もなく血液検査などで食物アレルギーが疑われる場合には、除去食試験が行われます。
方法はとてもシンプルで、獣医師に指示されたフードと水のみを約1ヶ月間与えるだけです。
ここで大変なのが、指示されたフード以外は与えてはいけないということです。当然いつものお気に入りのフードを混ぜる、おやつを与えるなどは一切許されません。
もし飼い主が「かわいそうだから」と少しでも与えてしまうと除去食試験の意味がなくなり、アレルゲンの特定はもちろん、食物アレルギーであるとの診断も難しくなってしまいます。
シンプルではありますが、飼い主と犬にとってはなかなか困難な方法かもしれません。
犬のアレルギー治療とコントロール
特定のアレルゲンがあることやアトピーであることがわかったなら、痒みや皮膚炎といった症状を出さないようにコントロールすることが大切です。
アレルギーは完治することが難しいとされているため、飼い主にも犬にもできるだけ負担やストレスが少ない方法で続けましょう。
食事療法
食事療法は病院で指定された特別なフード(=療法食)を与えることです。
アレルゲンを取り除いたものやアレルゲンとなりにくい特別な方法で作られたフードなので、市販のフードで代替することは困難です。
様々な理由でどうしても療法食を続けることが難しい場合は、必ず獣医師に相談してください。
好きなフードやおやつを与えたい気持ちは痛いほどわかりますが、眠れないほどの痒みや皮膚炎による痛々しい状態は愛犬にとって辛いもののはずです。
シャンプー療法
シャンプー療法は皮膚のバリア機能が弱いアトピー性皮膚炎の犬などに対して効果的です。特別なシャンプーにより余分な細菌や真菌の増殖を防ぎ、保湿することで皮膚を保護できます。
市販のシャンプーでは逆効果となることもあるため、獣医師の指示に従って適したシャンプーを選びましょう。
薬によるコントロール
アトピー性皮膚炎の犬には薬によるアレルギーのコントロールが必要になることが多いです。
薬を飲ませることに抵抗がある飼い主さんもいるかと思いますが、適切な薬剤と適切な量・期間を守りさえすればとても有効な方法です。
食事やシャンプー、生活環境を整えてあげてもうまくいかない場合はどうしても薬が必要です。選択肢の1つとして理解しておきましょう。
減感作療法
減感作療法(がんかんさりょうほう)を簡単に説明すると、少量のアレルゲンを繰り返し体内に取り込ませることにより、少しずつアレルギーに慣れさせ体質を改善しようとする方法です。
食事や薬はアレルギーをコントロールするものであるのに対して、減感作療法は体質を改善させ完治を目指す治療方法です。
ただし必ずアレルギーが完治する保証はなく、さらに効果が出るまでに数ヶ月を要するため率先して勧める動物病院は少ないでしょう。
再生医療
再生医療(細胞治療)は減感作療法と同じく、アレルギーの完治を目指す治療法です。
ただしまだ一般的ではなく、実際に治療として取り入れている動物病院はわずかです。
気になる方は獣医師に相談してみるとよいでしょう。
今後の獣医療の進歩と共に、アレルギーが完治する明るい未来に期待したいですね。
アレルギーを持つ愛犬のためにできること
アレルギーを持っている愛犬、アトピーの愛犬には普段からのケアが大切です。
シャンプーやローションによる皮膚のケア、食事の管理、生活環境を清潔に保つことなど、気苦労が多い飼い主もいるでしょう。
未だ完治が難しいとされるアレルギーと付き合っていくには、愛犬の生活の質(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)をできるだけ良好に保つことを意識して過ごしてください。
そのためには愛犬はもちろんのこと、飼い主への負担・ストレスも軽減しなければいけません。
続けていくことのできるケアが重要ですので、獣医師と納得のいくまで話し合ってベストな選択を考えてみてください。
まとめ
アレルギーは特定のアレルゲンが原因であることもあれば、ハウスダストのような環境アレルゲンが原因でそもそも皮膚のバリア機能が弱いアトピー体質の場合もあります。
疑わしい場合には動物病院でしっかりみてもらいましょう。
愛犬の皮膚の悩みが少しでも解消されることを願っています。