犬の肉球の役割は?トラブルや病気・ケガのサインや飼い主さんにできること
犬の肉球は可愛らしい上に柔らかく、いつまでも触っていたくなる魅力がありますよね。
犬にとって肉球は、さまざまなダメージから体を守ってくれるための重要な器官です。
今回は、犬の肉球の重要性や肉球に発生するトラブル、飼い主さんができるケア方法などをご紹介します。
大切な愛犬の違和感にいち早く気付き、末長く健康な足元を守ってあげましょう。
犬の肉球の役割は?
体温調整
人間は暑さを感じると、体中にある汗腺から汗をかくことで体温調整を行います。しかし犬の汗腺は、足の裏である肉球と鼻先、耳の中などの僅かな場所にしかありません。
犬の体温調整の方法は2種類あり、一つは口を開けて「はぁはぁ」と呼吸をすることで口腔内の熱を放出するものです。もう一つが、肉球などにある汗腺から発汗し、熱を外に逃がす方法です。
クッション機能
犬の肉球は、体重を支えるための重要なクッションとして活躍します。
人間と違って裸足で生活する犬は、自身の体重を足に直接感じることになります。大型犬であれば、40kgを超える巨体を常に裸足で受け止めている状態です。肉球がなければ衝撃が直に骨に伝わり、すぐに脚を傷めてしまうでしょう。
柔らかなクッション機能があるからこそ、全力で走ってもジャンプをしても衝撃を吸収できるのです。
冷たさや熱さから守る
肉球は地面の温度を敏感に感じ取るように思えますが、実は表面は分厚い角質層でできているため、地面の熱さから体を守る役割を持っています。
もちろん高すぎる温度は火傷の原因になりますが、多少であれば温度が高い場所を歩いてもすぐには火傷をせずに済むでしょう。
肉球は熱さからだけではなく、冷たさからも犬を守ってくれます。
犬の体は人間と同じように静脈と動脈が並行して流れており、肉球付近も同様です。冷たい地面を歩いて静脈が冷えても、すぐ近くを流れる動脈によって血液を温め直すことができるのです。
止まりやすくする&滑りにくくする
犬の肉球の裏をよく見ると、ザラザラしているのがわかります。この細かな突起物が、ブレーキの役割を果たすのです。
走っている途中で急に止まったり、方向転換ができたりするのも肉球があってこそです。
また突起物だけではなく、足の裏から出た汗も足元が滑りづらくするために役立ちます。
犬の肉球の特徴やメカニズム
肉球を構成するパーツ
犬の肉球は大きなひとつの塊ではなく細かなパーツに分かれており、一つひとつに名称があります。
前脚
・掌球(しょうきゅう):中心部分にある最も大きな肉球
・手根球(しゅこんきゅう):かかとの部分(最も胴体に近い部分)にある肉球
・指球(しきゅう):爪が生えている部分の根本にある5つの肉球
後脚
・足底球(そくていきゅう):中心部分にある最も大きな肉球
・趾球(しきゅう):爪が生えている部分の根本にある4つの肉球
人間がかかとで踏んでつま先で蹴って歩くように、犬はこれら5種類の肉球を自然と使い分けて歩行しています。
肉球の色
犬の肉球の色はメラニン色素の影響を受けるため、子犬の頃はピンクでも大人になると黒く変色する子も珍しくありません。
親から受け継いだ遺伝による要素により、成犬になってもピンクのままの子もいます。
また成長途中で肉球の色がまだらになったり、2色に分かれたりすることもあります。
肉球の硬さ
犬の肉球は生まれた頃はプニプニと柔らかいですが、成長するにつれてどんどん硬くなっていきます。
理由は、散歩の際にゴツゴツした地面を歩く機会が増えるからです。
完全室内飼育の猫の肉球が成猫になっても柔らかいままなのと比べ、犬は成長するほどに硬くなる傾向にあります。
大型犬と比べて必要運動量が少なく1回の散歩の量も少ない小型犬は、肉球も柔らかめです。
肉球にも骨はある?
プニプニと柔らかく触っていて気持ちがいい肉球ですが、中身にはしっかりと骨があります。
肉球の骨に沿う形で、腱や靭帯、血管、結合組織など運動に必要な組織が形成されているのです。
肉球の質感の秘密
肉球は触ると柔らかいですが、表面の皮には硬さを感じますよね。
肉球の形は正六角形を並べたようなハニカム構造になっており、表面の皮膚は角質化しているため硬い状態です。
反対に、内側は脂肪と繊維組織で構成されているため弾力があります。
一見すると「硬い皮膚」でしかない肉球の表面ですが、実は円錐状突起の集まりでできており、必要時に摩擦を生じさせる構造になっています。
犬の肉球に関する病気・トラブル
腫瘍
腫瘍は早期発見と早期治療が望まれる病気です。
胴体だけではなく、肉球や指の間などにも発生します。
犬が歩きづらそうにしていたり肉球の腫れが気になったりした場合は、すぐに病院に連れて行ってあげましょう。
また腫瘍が小さな状態で発見できるように、日頃から足の裏をチェックしてあげることも大切です。
火傷
短時間であれば熱い地面を歩いても大丈夫ですが、長時間の散歩は火傷の原因になります。
アスファルトだけではなく、砂地や一見冷たそうに見える土道も要注意です。
軽い火傷の場合は保冷剤をタオルで包んで冷やすことが対処法となりますが、悪化すると黒ずみや腫れ、水ぶくれの原因になります。
指間炎
指間炎は、指の間に傷があったり濡れたままになったりしているときに、犬が舐めてしまうことによって炎症を起こす病気です。
炎症を抑える薬や抗生剤での治療で対処します。
厳密にいえば肉球の炎症ではありませんが、症状が出ると肉球を舐める行為が目立ちますので見逃さないようにしましょう。
犬ジステンパー
犬ジステンパーは、犬ジステンパーウイルスによる伝染性疾患です。空気や飛沫を介して感染します。
犬ジステンパーを発症すると、肉球や鼻の皮膚が硬くなることが特徴です。他には発熱や咳、嘔吐、下痢、くしゃみなどが現れます。
一度発症すると対症療法でしか治療できないため、感染を予防するためのワクチン接種が大切です。
感染初期には発熱程度しか症状が現れないことも多いですが、死亡率の高い急性の病気です。感染後は2週間~数ヵ月程度で死に至るケースも珍しくありません。
乾燥・ひび割れ
皮膚が乾燥すると、人間の肌と同じように犬の肉球にもひび割れが発生します。放置するとひび割れが進行し、出血を伴うこともあります。
とくに冬場の乾燥しやすい時期や、舗装された硬い道を長時間歩いた後は注意が必要です。
出血
日常的に散歩が必要な犬にとって、肉球の出血は身近なトラブルです。
急ブレーキや急カーブによる摩擦ですりむいてしまったり、ガラスやプラスチックの欠片などを踏んで皮膚が切れてしまったりすることが考えられます。
室外だけではなく、家の中でも画鋲や安全ピンが落ちていないか注意しましょう。
角化症
角化症は、肉球のお手入れ不足によって発生する症状です。まるで石のように肉球が硬くなってしまい、重症化するとあかぎれや出血を伴います。
軽度でもかゆみを生じやすく、自分で患部を噛むことで悪化させてしまうこともあります。
病院に連れて行くべきサインは?
足を引きずって歩いている
犬が足を引きずって歩いている場合は、明らかに何らかのトラブルがあると考えられます。
肉球に限らず、骨や筋肉など他の部位に問題がある可能性もあるでしょう。
歩くのを嫌がる
今まで好きだった散歩に行くのを嫌がったり、室内でも最低限の歩行しかしなくなったりした場合は、足元に痛みを感じている可能性があります。
肉球が黒ずんでいる・赤くなっている
肉球の黒ずみや赤みは、散歩による火傷が考えられます。
何年もかけて黒くなる場合は遺伝や色素沈着が考えられますが、数日前と比べて明らかに色が変わっている場合はすぐに病院に連れて行きましょう。
肉球が腫れている
肉球の腫れの多くは炎症によるものと考えられます。
火傷や指間炎だけではなく、アレルギーや常在菌の異常増殖などの可能性もあるでしょう。
また、何らかの理由で犬が肉球を気にしすぎて過度に舐めてしまった場合も腫れやすくなります。
肉球に水ぶくれができている
肉球の水ぶくれは、火傷が悪化した可能性が高いでしょう。
あるいは思いきり走ったときに怪我をし、傷口から細菌が入ってしまったことも考えられます。
放置すると水ぶくれが割れ、さらなる細菌感染の原因にもなってしまうため早めの対処が必要です。
肉球から血が出ている
出血は乾燥やあかぎれによる場合もあれば、異物を踏んでしまった可能性もあります。
興奮して暴れると血行がよくなり、さらなる出血を招いてしまうこともあるため注意が必要です。
できる限り安静にさせつつコットンやシーツなどで抑え、化膿を防ぐために病院で適切な治療を受けさせましょう。
肉球が硬くなる
肉球がまるで石のようにカチカチになっていたり、角質がポロポロと落ちるほど硬くなったりしている場合は、角化症を疑います。
悪化すると痒みが強まり、大きなストレスの原因になります。
飼い主が犬の肉球を守るためにできること
散歩の際は地面の温度を確認する
愛犬の火傷を防ぐために、散歩の際は地面の温度を確認しましょう。
真夏日の日中はもちろん、夕方や朝方も油断してはいけません。
飼い主さんが直接地面を触り、問題なく歩ける温度であることを確認するのを習慣づけるとよいでしょう。
日常的にスキンシップを取る
肉球はトラブルに気付きづらい部位です。日々のスキンシップの中で肉球のチェックも取り入れ、違和感に早く気付けるように心がけましょう。
お散歩の後に肉球を拭いてあげるのを習慣づけるのもおすすめです。
異常を感じたら楽観視せずに病院を受診する
もし肉球に異常を感じたら決して楽観視せず、すぐに動物病院を受診するように心がけてください。
肉球の異常の中には、命に関わる病気や強いストレスを伴う症状もあります。
愛犬の心と体の健康のため、「変だと思ったらすぐ病院」の判断をしてくださいね。
定期的にワクチンを接種させる
犬の肉球におけるトラブルの中で、最も危険性が高いのは犬ジステンパーです。
致死率・感染率ともに高い病気ですが、すべての犬への接種が推奨されているコアワクチンにより予防が可能です。
定期的な混合ワクチンの接種を怠らないようにしましょう。
専用のクリームを塗ってマッサージをする
乾燥やあかぎれによる出血は、専用のクリームを塗布することで防止できます。保湿力の高い犬用クリームを選び、定期的にマッサージをしてあげましょう。
出血防止だけでなくスキンシップにもなり、他の異常をすぐに発見できる可能性も上がります。
愛犬との距離が近付けば、お互いに癒しの時間にもなるものです。
洗いすぎない程度の散歩後ケア
散歩後の肉球のお掃除は、ゴシゴシと拭きすぎないようにしましょう。人間の洗顔と同じように、洗いすぎは必要な皮脂まで取り除いてしまうため乾燥の原因になります。
濡れタオルやシートを用いて、優しく拭いてあげるだけで十分です。
肉球付近の毛はカットする
肉球の周りに長い毛が生えていると、汚れや雑菌がたまりやすくなります。とくに長毛犬は足の裏まで毛が伸びやすいため、定期的にカットをしてあげましょう。
感染予防だけではなく滑り防止にもなり、安全性を確保できます。
まとめ
今回は、犬の肉球の特徴や注意するべきトラブルなどをご紹介しました。
肉球は顔や胴体と比べ、飼い主さんの目に入る機会が少なくトラブルに気付きづらい部位です。早期発見のためには普段からのスキンシップはもちろん、肉球への正しい知識を身に付けることが大切です。
定期的なチェックを欠かさないようにしながら、愛犬の足元の健康を守ってあげましょう。