猫の嗅覚は人間の〇万倍!高い能力の理由やメカニズムとは?
犬が人間と比べて非常に高い嗅覚を持っていることで知られていますが、猫の嗅覚がどれほどなのかご存じですか?
飼い主さんを匂いで嗅ぎ分けていることは想像できても、どのくらい敏感に反応しているのかいまいちピンとこないですよね。
今回は、猫の嗅覚について解説します。
猫の嗅覚は、人間が思っている以上に重要な役割を持っています。
実は人間にはある〇〇が備わっていないのも驚きです……!ぜひ最後までご覧ください!
猫の嗅覚はどれくらい?
猫は人間の20万倍以上の嗅覚を持っている!
猫が最も優れている感覚は聴覚といわれていますが、次に高い能力を誇るのが嗅覚です。
猫は人間の20万倍以上の嗅覚を持っており、さまざまな匂いを嗅ぎ分けます。
中でも驚くべき能力は、人間には不可能な「フェロモンの嗅ぎ分け」です。猫は目が開く前の子猫の頃から、匂いで母猫の居場所を見つけたりおっぱいを探したりします。
もともと視力があまりよくない猫にとって、嗅覚は生きるための非常に重要なツールなのです。
食べられるかどうかは匂いを嗅いで決めている
猫は食事をするとき、必ず匂いを嗅いでから食べ始めます。
どんなにお腹が空いていても匂いチェックを怠らないのは、目の前の食べ物が安全かどうかを判断するためです。
単独で狩りをする猫は、体調を崩してしまうと食べ物にありつけません。すなわち、安全ではない食べ物を一口でも食べることは死につながるのです。
そのため、新しいフードに変えてもなかなか食べてくれないときは「味」ではなく「匂い」が関係している可能性があります。
猫の敏感な嗅覚は、自分の身を自分で守るために発達した感覚なのです。
猫の鼻には人間にある〇〇がない!
突然ですが、問題です。
人間の鼻にあって猫の鼻にないものは何でしょうか?
答えは……
「鼻毛」です!
とはいえ、猫の鼻にはウイルスや細菌の侵入を防ぐための機能が備わっています。
猫の鼻の中は鼻粘膜という粘膜層が覆っており、鼻粘膜には腺毛という非常に短い毛が生えています。鼻毛の代わりにこの腺毛が外部からのウイルスを防ぎ、感染を予防しているのです。
猫の嗅覚が役立つシーン
猫同士のコミュニケーション
猫の優れた嗅覚が最も役立つシーンは、猫同士のコミュニケーションです。
猫は群れを組まずに単独で生活する生き物であり、縄張り意識が非常に強い傾向にあります。
部外者を排除して避けるような強い縄張り意識を持っており、猫同士が直接顔を合わせてコミュニケーションを取る機会はあまり多くありません。そのため、視覚や聴覚よりも嗅覚に頼ったコミュニケーションを行うことが多いのです。
嗅覚を使えば、目の前に相手がいなくても排泄物によって情報のやり取りができます。お互いの存在や情報を知らせるため、あえてわかりやすい場所に排泄物を残すこともあるのだとか。
もし直接出会ったときは、鼻を使って相手を確認し合うのが「猫流のご挨拶」。お互いに匂いを確認して「自分や相手が誰であるか」を伝え合います。
発情のサインを伝える
猫がフェロモンを嗅ぎ分けられる理由は、相互理解のためだけではありません。
雌猫は自分の発情を雄猫に知らせるために尿の中に性フェロモンを含ませ、雄猫はその匂いを察知して雌猫を探し出し、繁殖を行います。
発情期に尿をまき散らしたりお尻を嗅いだりするのは、性フェロモンを多く振りまくため、そして感じ取るためです。
猫の優れた嗅覚は、繁殖による種の存続のためにも重要だといえるでしょう。
猫の嗅覚のメカニズム
鋤鼻(じょび)器官でフェロモンまで嗅ぎ分ける
猫の鼻腔と上顎の間には、フェロモンを感じ取る鋤鼻器官(ヤコブソン器官)があります。
霊長類では退化している器官ですが、犬や猫を含むさまざまな生き物ではよく発達しており、縄張りの主張や発情のサインを嗅ぎ分けます。
嗅細胞で匂いを敏感に感知
猫の嗅覚の敏感さをより深く知るためには、嗅細胞の仕組みを理解する必要があります。
嗅細胞とは匂いの受容器で、嗅細胞の数が多いほど嗅覚が優れるとされています。
空気中に漂う匂いの成分は、まず鼻から吸い込まれて奥にある鼻腔に到達し、表面にある嗅上皮という粘膜に覆われた層に付着します。
この嗅上皮の中にあるのが嗅細胞です。嗅上皮の表面積が大きいほど嗅細胞も多くなり、嗅覚が鋭くなります。
人間の嗅上皮は約2~4平方センチメートルですが、猫の嗅上皮はなんと約20平方センチメートル!あれほど小さな鼻の中に、人間の10倍ほどの嗅上皮があるのです。
嗅細胞の数は、人間の4000万個と比べて猫は2億個もあります。人間よりもはるかに鋭い嗅覚は、この嗅細胞の数の差から生まれているのですね。
また、猫の湿った鼻にも嗅覚の秘密が隠されています。
鼻が湿っていると匂いの成分が嗅細胞に吸着されやすくなり、より敏感に嗅ぎ分けられるのです。
変顔にも見える「フレーメン反応」
猫が口を半開きにして前歯を剥き出しにする……そんなおマヌケさんな表情を見たことはありませんか?
あの独特な表情や動作は、フレーメン反応と呼ばれる現象です。
フレーメン反応は鋤鼻器官で匂いを感じ取ったときに現れ、鋤鼻器官に通じる開口部を開けることでフェロモンをより正確に送り込もうとしている仕草だといわれています。
猫の嗅覚とマタタビの関係性
猫をメロメロにさせてしまう匂いといえば、マタタビですよね。実はマタタビが猫に与える影響にも鋤鼻器官が関係しています。
マタタビに含まれるマタタビラクトンやアクチニジンなどの成分が鋤鼻器官を通過することで、中枢神経が麻痺してしまうのです。
猫によっては転げまわったり放心状態になったりしてしまいますが、症状は一過性であり依存性はほとんどないとされています。
猫は嗅覚で飼い主を認識している?
帰宅時は「匂いチェック」でお見通し!
猫は優れた嗅覚を持っているため、飼い主さんが他の猫と会ってきたときはすぐに気づきます。
帰宅すると猫が体を擦り付けてくれるときがありますが、あの動作は自分の匂いを付けるだけではなく「知らない匂いを持ち帰ってきてないだろうな?」とチェックしているのです。
愛猫に秘密で野良猫とコミュニケーションを取ったり猫カフェに遊びに行ったりしたつもりでも、実はしっかり「浮気」がバレていますよ!
「すりすり」は臭腺で匂いを付着させている
臭腺と聞くとお尻周りの肛門腺をイメージするかもしれませんが、実は猫の臭腺は肛門だけでなく、尻尾や足の裏、額、口の周り、顎の下など体全体にあります。
そのため、帰宅時の「すりすり」は「甘えてくれている」とは限らない場合もあるのです。
全身を使って自分の匂いを擦り付け、飼い主さんが外から持ち帰った匂いを上書きしているのでしょう。
同居猫の匂いもしっかり覚えている
猫は匂いでのコミュニケーションによって相手を識別しているため、同居猫の匂いもしっかり覚えています。
人間が顔や声で相手を認識するのと同じ感覚であるため、同居猫とは違う猫の匂いを持ち帰ってきたらすぐにわかるのです。
猫が好きな意外すぎる「人間の匂い」
猫が好きな匂いといえばマタタビが思い浮かびますが、実は意外な匂いも好まれます。
その匂いとは……なんと、人間の加齢臭!また、汗のニオイや蒸れた靴、靴下のニオイも好むのだとか。
「一体なぜ?!」と思ってしまいますが、実はこれらの匂いは猫のフェロモン臭に近いといわれています。
「最近体臭が気になる」という人は、猫にモテモテかもしれませんよ!
猫が飼い主に匂いを付着させる理由
愛情表現
猫が飼い主に自分の匂いを付着させる理由としてまず挙げられるのが、愛情表現です。
大好きな飼い主さんに匂いを付けることで、仲間意識や信頼の気持ちをアピールしています。
これは人間だけでなく親しい猫や他の動物にも行う行動であり、すりすりする時間が長いほど友好度が高い関係性であると推測されます。
自分の所有物であるアピール
独占欲のアピールとして自分の匂いを付着させる可能性も考えられます。いわゆる「マーキング行為」であり、縄張りを主張するための匂い付けと似た心理です。
猫にとって飼い主さんは大好きな存在であると同時に、ごはんをくれる生命線であり、安心してリラックスできる大切な場所です。誰かに奪われてしまわないように、匂いで「これは自分のものだぞ!」とアピールし、存在を主張しています。
自分の匂いに包まれて安心したい
例えば引っ越しで知らない場所に来ると、猫はオドオドしてしまうものです。
もちろん未知の場所自体への恐怖もありますが、嗅覚に頼って生きる猫にとっては「まったく知らない匂いの場所」であることも不安の原因です。
そのため、見知らぬ匂いがする物や場所には自分の匂いを付け、安心したいと感じます。
飼い主さんにすりすりするのも似た心理で、知らない匂いを持ち帰ってきた飼い主さんに慣れ親しんだ自分の匂いを付着させることで安心感を得ようとするのです。
帰宅時だけではなくお風呂上がりの飼い主さんにすりすりする場合は、「お風呂によって洗い流された自分の匂いを再度付着させたい」という心理が働いています。
猫の嗅覚は衰える?
猫に多い嗅覚のトラブル
優れた嗅覚を持っている猫ですが、さまざまな理由から嗅覚が衰える場合があります。
猫の嗅覚を衰えさせる代表的な原因は、鼻水や鼻血、くしゃみ、鼻炎などです。
鼻水が出ているときやくしゃみが続くときは猫風邪や副鼻腔炎などが考えられ、腫瘍やポリープなどの深刻な病気の可能性もあります。
鼻血の場合も腫瘍や異物がある可能性があり、できる限り早めに動物病院を受診することが求められます。
嗅覚が衰えると食欲も減少傾向に
元来、単体で生きる肉食動物である猫は、食べ物の安全性に非常に敏感です。
どんなに美味しそうに見える食べ物でも、まずは匂いをしっかりと確認して「よし、腐っていないな。食べられるぞ」と判断してから口を付けます。これは港町の猫も同様で、傷んでいる魚や毒のある魚は匂いを嗅いだ上で口を付けないそうです。
そのため嗅覚が衰えると目の前の食べ物が安全かどうかを判断しづらくなり、食欲が低下します。
猫の食事では、味覚よりも嗅覚が大切なのです。
まとめ
今回は、猫の嗅覚についてご紹介しました。
猫は、人間にはわからない匂いを敏感に嗅ぎ分けます。
私たちが匂いを気にせず暮らしていても、猫は膨大な匂いの情報に囲まれて過ごしています。同じ世界で生きているのに人と猫で感じているものが違うと思うと、なんだか不思議な気持ちになりますよね。
嗅覚は、猫を猫たらしめる重大な器官です。猫の高い能力を理解した上で、お互いにストレスのないように暮らしていきましょう!