相方を亡くしたペットもペットロスになる?悲しむペットに飼い主ができること

寂しそうに窓を見上げるパグ
ウサギ

愛するペットとの生活は、幸福と安らぎに満ちています。

しかし命に限りがある以上、避けることができないのがペットとの死別です。

現在も、多くの飼い主さんがペットロスに苦しんでいることでしょう。かく言う私自身も、過去にペットロスに苦しんだ経験があります。

そしてペットロスは人間だけではなく、同居しているペットにも現れるものです。

今回は、「相方を亡くしたペットが抱くペットロス」について解説します。

残されたペットの心に寄り添いながら、心の傷を癒やせ合える関係性を目指しましょう。

ペットも相方が亡くなったらペットロスになるの?

悲しそうなケージの中の犬

結論から言うと、ペットも相方と死別するとペットロスになる可能性があります。

「必ずなる」と言えない理由は、ペット同士の関係性によるからです。

仲が悪ければすぐに元の生活に戻れるでしょうし、毎日寄り添うほど関係性が良好であったのなら心の傷は深くなります。

人間と同様に、ペットのペットロスも回復までには個人差があります。

飼い主にできることは、残されたペットの様子を観察し、できる限りスムーズに回復できるようにサポートを行うことです。

ペットは「死」を理解している?

毛布にくるまる犬と猫

「二度と戻ってこない」と理解している振る舞いも

「ペットは死の概念を理解しているのか」は、動物の死生観における永遠のテーマともいえるでしょう。

当然の話ですが、動物には言葉が通じないためはっきりとした事実はわかりません。

しかし、「死」そのものの概念は理解していなくても「もう二度と会えない」という事実を理解している可能性があります。

それは、相方が亡くなった後のペットの行動から予想されます。

例えば、今までしたことのない遠吠えや鳴き声をあげたり、今まで以上に飼い主さんに愛情を求めるようになったりする場合、理解していると考えてよいでしょう。相方を失った後の行動の変化は、家族を失った人間が取る行動に似ているといわれています。

死という概念はわからなくても、「失った・もう戻ってこない」という感覚があるからこそ、悲しみや苦しみを感じていると推測されます。

時間をかけて現実を受け入れることも

もちろん個人差はありますが、飼い主さんのペットロスは時間の経過により少しずつ緩和されることが多いです。

人によっては数ヵ月程度で悲しみを乗り越えられる人もいれば、何年もの月日を必要とする人もいるでしょう。

ペットの悲しみも人間と同様です。時間の経過により、相方を失った悲しみから立ち直れる可能性が残されています。

心の穴を完全に埋めることは難しくても、少しずつ現実を受け入れ、元の自分に戻ろうと前向きになっていく傾向にあります。

また、新しい相方や環境の変化が転機となり、心の安定を取り戻すこともあるでしょう。

ペットロスになったペットの行動

寝ている飼い主に乗る犬

ここでは、ペットロスになったペットの行動例をご紹介します。

ペットの性格や心理状態によりペットロスのサインは違うため、飼い主さん自身がしっかり観察してあげましょう。

甘えん坊になる

ペットロスに陥ったペットの多くは、飼い主さんに対して甘えん坊になる傾向にあります。

今までスキンシップが苦手だった子でも触られたがるようになったり、お留守番で一匹になることを極端に嫌がったりします。

他には、飼い主さんの行く場所に付いてくる、抱っこやなでなでをねだって鳴くようになるなどが挙げられます。

鳴き声が増える・大きくなる

ペットロスに陥ると、鳴き声が増えたり大きくなったりする傾向にあります。

言葉が通じないペットとの生活では、声や仕草によるコミュニケーションが重要です。悲しみやストレスをどうにか飼い主さんに伝えようとする姿に、胸が締め付けられる人も多いでしょう。

人間がストレスをためると「わーっ!」と大声を出したくなるように、ペットも声という手段を使って感情を吐き出したいのかもしれません。

ただし性格によっては鳴き声が少なくなるタイプもいるため、一概に決めつけられるものではありません。

亡くなった子を探す

亡くなった子の姿を探して、相方が使っていたベッドやお昼寝をしていた場所などを探す行動が見受けられます。

ときにはベッドやソファーの下、家具の隙間など狭い場所を探索することもあるでしょう。

見ていてつらい光景ですが、ペット当人にとっては「どんなに探しても見つからない」という出来事を繰り返すことで、少しずつ現実を受け入れているのかもしれません。

匂いが残っている場所を好む

セーターの上で休む子犬

僅かに残された相方の匂いを探して部屋の中をウロウロしたり、ケージや水飲み場を往復したりすることもあります。

相方が愛用していたおもちゃを抱きしめて眠ることもあるでしょう。

見ている飼い主さんにとっては、涙が込みあげてくるような光景ですよね。

食欲や元気がなくなる

ペットロスのわかりやすい症状として、食欲や元気の減少があります。

普段から食べていたごはんを残すようになってしまったり、お散歩を嫌がったりするでしょう。

ペットの健康のためにも、飼い主さんとしてはどうにかして食べさせたりお散歩に連れ出したりしたいですよね。工夫をしてもなかなか受け入れてもらえず、お互いに困惑してしまうこともあるでしょう。

感情表現が乏しくなる

今まで感情表現がわかりやすかった子でも、ペットロスをきっかけにぼーっとする時間が増えることがあります。

元気だったペットの茫然とした姿を見るのはつらいですが、本人が悲しみや喪失感を受け入れるために必要な時間なのかもしれません。

また、日頃から一緒に遊んでいる相方がいなくなったことで、一匹での時間の過ごし方がわからず困惑している可能性もあります。

落ち込むペットのために飼い主ができること

飼い主の脚にすり寄る猫

原則は「ペットに任せる」

ペットのペットロスに対して飼い主さんができることとして、最も優先するべきは「ペットの心のペースに任せる」ことです。

人間に置き換えてみるとわかりやすいかもしれません。自分なりに死の悲しみを乗り越えようとしているのに、他人から「ほら、元気出さなきゃ!美味しいごはん用意したから食べなよ!」「そんなに落ち込んでないで、お散歩に行って運動しよう!」と強要されても、「自分のペースで前を向きたいから邪魔をしないでほしい……」と思ってしまいますよね。

もちろん、周りから受け取るきっかけで心が動くこともあります。しかしそれも、優しさを受け入れられる心の余裕が生まれてからのことです。

ペットも、自分なりのペースで喪失感を受け入れようとしています。

健康に配慮しつつ、ペットからの要求にできる限り応えながらも、飼い主さんのほうからはお世話を焼きすぎないように心がけてください。

体調不良時は動物病院へ

相方を失ったことによるストレスは、心身に不調をもたらします。

重度の食欲不振や痛みのサインなど、異常を感じたら楽観視せずに動物病院を受診しましょう。

仲がよかった相方を失うと、大きなショックを受けることが予想されます。症状が現れる前に獣医師さんに相談をしておくのもよいでしょう。

気分転換させてあげる

ベッドの上でおもちゃで遊ぶ猫

元気がないペットを無理やり遊びに誘うのはストレスを与える原因になりますが、飼い主さんから気分転換のきっかけを与えることは大切です。

犬の場合は、散歩に行きたがらないならベランダには出してあげたり、新しいおもちゃを与えたりしてあげましょう。

猫の場合はキャットタワーや爪とぎなどを新調してあげるのも気分転換になります。嗜好性の高い美味しい缶詰を与えるのもよいですね。

大きな環境の変化は控える

気分転換のために少し環境を変化させるのは良策ですが、引っ越しや家全体の模様替えなど大きく環境を変えるのは控えましょう。

ペットとしては、まだ喪失感に心が追いついていない状態です。落ち着いて心を休ませたいときに住み慣れた我が家が変わってしまうと、さらにストレスを感じてしまいます。

あくまでペットの居心地を優先してあげてくださいね。

無理強いや叱る行為は絶対にNG

心に傷を負っているペットに、厳しい躾はNGです。

落ち込んでいたりごはんを食べなかったりしても、決して叱らないように心がけてください。

飼い主さんにできるのは、見守ることです。

様子の変化を感じても本人に責任を求めず、観察した上で専門家に相談したり、改善方法を考えたりすることが大切です。

新しいペットは受け入れるべき?

ペットロスの効果的な対策のひとつが、新しいペットの受け入れです。

しかし、相方を失ってペットロスになってしまっている子がいる場合は、慎重に検討しましょう。

相方が突然いなくなってしまった心の傷は、新しい同居犬・猫ができたからといってすぐに塞がるものではありません。またストレスや寂しさを受け入れられていない状態では、新しく家に来た子を攻撃してしまうかもしれません。

少なくとも普段通りの生活に近づけてから受け入れを視野に入れ、できればトライアルが可能な子の中から検討しましょう。

「もしも駄目だった場合のリスク」を考えて行動できてこそ、命に責任を持ったペットオーナーといえます。

ペットの分離不安に気を配ろう

車の中から外を眺める犬

ペットはペットロスによる不安や寂しさを抱えると、分離不安症という不安障害を発症する可能性があります。

分離不安症は飼い主さんに精神的に依存してしまう状態であり、飼い主さんの姿が見えなくなると強い不安を感じ、無駄吠えや粗相、破壊行為などの問題行動が現れる障害です。

十分な愛情を与えながら精神的なケアをすることで予防できますが、心の問題である以上100%の予防策はありません。兆候を観察しつつ早期発見を心がけましょう。

もし分離不安症を発症してしまった場合は、動物病院による治療が必要になります。

分離不安症の治療は行動療法をメインとし、必要であれば薬物療法も取り入れます。

かかりつけの獣医師と相談しつつ、ペットと飼い主が穏やかに過ごせる方法を探しましょう。

飼い主さんの心の安定も大切に

テラスでお茶を飲む女性

ペットロスでつらいのは飼い主さんも同じです。残されたペットのケアに気を取られて、自分の精神的ケアが後回しになっていませんか?

ペットオーナーである以上、自分よりもペットを優先するシーンは多いものです。

しかし、飼い主さんの心の状態は一緒に住んでいるペットや家族にも影響します。

ペットのメンタルを労わりながらも、飼い主さん自身もストレス発散や気分転換ができるように自分の心の状態を気に掛けてあげましょう。自分を労わることが、結果的にペットや家族を労わることにつながります。

大切なペットを失った悲しみを残されたペットや家族とともに乗り越えられれば、いつかまた心から幸せを感じられる日々が待っています。

まとめ

犬とたわむれる女性

今回は、残されたペットが抱くペットロスについてご紹介しました。

ペットロスの苦しみは筆舌に尽くしがたいものです。ふとした瞬間に思い出して涙が出てしまったり、無気力状態になってしまったり……。私たちと同じ苦しみを、ペットも抱えているかもしれません。

最も大切にしたいのは、回復までのペースを尊重すること、そして変わらぬ愛情を注いであげることです。

ときには手を差しのべつつも優しく見守りながら、一歩ずつ新たな明日へと歩んでいきましょう。