それって犬の「逆くしゃみ」かも!?【元動物看護師が解説】逆くしゃみと病気の見分け方のポイントは2つ
くしゃみと言えば「ハクション!!」ですよね。
では犬の「逆くしゃみ」とはどのようなものかご存知でしょうか?
ガーガー、ブーブーなどと鼻を鳴らし少し辛そうな様子を見せる、反応・動作のことを言います。
馴染みの薄い言葉かもしれませんが、犬を飼っていればこの逆くしゃみを見かける可能性があります。
初めて逆くしゃみを目の当たりにすると動揺する方が多いですが、今回の記事で正しく理解してもらえれば、いざという時に落ち着いた対処ができますよ。
逆くしゃみとくしゃみの違い
逆くしゃみとくしゃみの違いを端的に言うと、鼻から勢いよく息を吐き出すのがくしゃみで、勢いよく吸い込むのが逆くしゃみです。
犬のくしゃみは私達が普段するのと同じで、鼻に入ったゴミや埃などを排出するために勢いよく息を吐き出す現象です。
一方で逆くしゃみは、何らかの原因により鼻から勢いよく息を吸い込む動作が連続的に起こる動作を指します。
言葉で表現するとシンプルですが、勢いよく息を吸うとはどのようなものか、少し想像しにくいかもしれませんね。
逆くしゃみを詳しく解説
逆くしゃみを初めて見た飼い主は、愛犬の様子がおかしいと驚くかもしれません。
しかしまず知ってほしいことは、逆くしゃみは病気ではないということです。
病気ではありませんが、どのようなものが逆くしゃみなのか特徴を掴んでおくことが大切です。
見た目の特徴
逆くしゃみは鼻から息を吸い込み、かつ連続的に起こります。
一見すると発作のように見えることもありますが、体が硬直痙攣を起こす、また意識がない状態に陥ることはありません。
この逆くしゃみの見た目でわかる重要な特徴は次の2点です。
・口を閉じている
・鼻から息を連続的に激しく吸っている
通常くしゃみや咳をする際には、口が開いていることが多いため、まずは閉じているかどうかを見てください。
そしてくしゃみでは「ブシュン!」、咳では「ケッケッ!」「カッカッ!」のような音を出しますが、逆くしゃみではいびきのようにガーガー、ブーブーと鼻を鳴らします。
インターネットで「逆くしゃみ」を検索すると数多くの動画が出てくるため、参考にするのもよいでしょう。
とはいえ、見た目だけで「間違いなく逆くしゃみだ」と判断できる飼い主は少ないはずです。
はっきりさせるためには、愛犬の様子を動画におさめ獣医師に見てもらうのが一番です。
「逆くしゃみだと思っていたのに実は違っていた」とならないよう、一度は動物病院に連れて行くことをおすすめします。
逆くしゃみの頻度と治まるまでの時間
逆くしゃみは突然に起こります。
その頻度は個体により数日おき、月に数回など様々です。
ただしその頻度が高くなってきたことが明らかであれば、何かしらの病気のサインかもしれないため注意が必要です。
また逆くしゃみが始まってから治まるまでの時間は、数十秒から2分くらいです。
治まってしまえば、口周りをペロペロする、口をクチャクチャするなどはあるかもしれませんが、意外にもケロッとしています。
苦しそうに見えるけど実際は?
逆くしゃみを見たことのある方は、やはり「苦しそう」という印象を受けることが多いようです。
実際はどうなのでしょうか?
あくまで逆くしゃみをした後の犬の様子から推測するしかないのですが、ケロッとしているところを見ると苦しいわけではないようです。心配する必要はないでしょう。
ただし体を緊張させ連続かつ激しく鼻から息を吸う動作なので、なかなか治まらない場合はそれなりに疲れるかもしれませんね。
逆くしゃみと勘違いしやすい症状
逆くしゃみと似た症状に咳があります。
咳は病気でなくても生理的に起こりますが、病的なものであれば徐々に体へ悪影響が出てきます。
そのため、逆くしゃみとそうでないものの区別は重要です。
咳の他にも、逆くしゃみと勘違いされやすい病気とその症状があるので併せて紹介します。
咳
人の咳と異なり、犬の場合は「カッカッ」「ケッケッ」といった喉に何か詰まったかのような咳が多くみられます。
また咳は口を大きく開けてするため逆くしゃみとの違いが比較的わかりやすいでしょう。
軟口蓋過長症
軟口蓋とは上顎の硬い部分(硬口蓋)よりさらに喉奥に存在する、いわば口と鼻の通路を分けるような役割をする部分です。
軟口蓋過長症はこの部分が通常より長いために呼吸がしにくくなってしまいます。
パグやシーズーなどが鼻をガーガー鳴らして、いびきのような音を出しているのを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この呼吸がしにくそうな状態やガーガーという音から、逆くしゃみと間違われる可能性があります。
しかし軟口蓋過長症は常に呼吸がしにくい状態であるため、ガーガーという呼吸音が日頃から見られるのが特徴です。口を開けたままそのような様子が続くことを確認できれば、逆くしゃみとの区別ができるでしょう。
気管虚脱
空気の通り道である気管は「蛇腹(じゃばら)ホース」に例えられます。
弾力性に富んだ器官ですが、何らかの原因で弾力性を失い押しつぶされたように変形した状態が気管虚脱です。
このホースが空気の通り道なのですが、押しつぶされ狭くなると当然呼吸がしにくくなります。
さらに空気が上手く気管を流れないため、呼吸音がガーガーと聞こえるようになり、逆くしゃみと間違われることがあります。
呼吸音こそ逆くしゃみと似ていますが、落ち着きなくウロウロする、よだれを垂らすなど、逆くしゃみ後のケロッとした様子とは明らかに違うため区別ができるでしょう。
逆くしゃみが起きたときの対処法
逆くしゃみだとわかれば、基本的には心配いりません。
逆くしゃみの対処法はいくつかあるため、愛犬がもっとも落ち着くものを選びましょう。
見守る
基本は見守る姿勢でよいでしょう。
自分がくしゃみをする立場だったなら、慌てられると逆に落ち着かなくなりますよね。
喉、胸をさする
逆くしゃみがなかなか治まらないこともあるかもしれません。
そんなときは喉や胸の辺りを優しくさすってあげると落ち着くこともあるようです。
湿度を管理する
逆くしゃみは鼻や喉の呼吸器経路で起きるため、部屋が乾燥している場合には適正湿度(40~60℃)を保つと頻度が抑えられるかもしれません。
なぜ逆くしゃみは起こるのか
逆くしゃみが起こる原因については、はっきりわかっていないのが現状です。
ただし「これが原因かも」と考えられている説がいくつかありますので、その一部を紹介します。
生理現象説
通常のくしゃみのように、生理現象のひとつとして考えられているものです。
しかし逆くしゃみをする子としない子がいるので、疑問は残ります。
短頭種説
あくまで傾向ですが、パグやフレンチ・ブルドッグ、チワワ、トイ・プードルといった鼻が短い犬種に多くみられることから、体の構造が関係しているのではないかとも考えられています。
アレルギー説
アレルギーに対して使われる薬を投与したところ、頻度が減った・緩和された症例があるようです。となれば何かしらのアレルギー反応で起きているのでは?とも考えられています。
さまざまな説がありますが、通常のくしゃみは体から菌や埃などの異物を体から排除する目的があるのに対して、逆くしゃみの「息を吸う」行為にはどのような意味があるのか未だわかっていません。
まとめ
謎の多い逆くしゃみですが、大切なのはそれが逆くしゃみであるのか否かです。
逆くしゃみとは何かを知り、まずはその様子を動画におさめ、動物病院で診察を受けるようにしましょう。
逆くしゃみと思っていたら大きな病気が隠れていたケースもあるため、十分に注意してくださいね。