犬に噛まれたらどうするべき?何科を受診する?応急処置やしつけの方法も

攻撃的な犬と女性の手

慕ってくれているはずの愛犬に突然噛まれると、驚きのあまり思考が止まってしまいますよね。

体調不良なのか不機嫌なのか、それとも信頼関係が足りていないのか……。さまざまな不安が頭の中を渦巻き、どうすればよいのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。

今回は、犬が人間を噛む理由や対処法などをご紹介します。

愛犬の心理を考えて寄り添い、飼い主として適切な関係性を築きましょう。

犬が人間を噛む理由

人の手を噛む子犬

噛む行為は犬にとってのコミュニケーション手段

突然犬に噛まれると驚きますが、言葉や器用な手先を持たない犬にとって「噛むこと」は重要なコミュニケーション方法の1つです。

人間にとっては手痛い攻撃行為でも、犬にとってはさまざまな心理表現といえます。

警戒や不安や寂しさなど、目には見えない感情を表す手段だと理解しましょう。

攻撃されたと思った

犬は自分が「攻撃された」と感じると、反撃するために噛むことがあります。

例えば飼い主さんが歩いているときに犬が突然横切り、うっかり足が当たってしまったときも噛まれる可能性があるでしょう。

飼い主さんに攻撃の意思があるかどうかではなく、犬が攻撃されたと感じるかどうかが重要です。

身を守るための行動

自分や大切なものを守るために、外敵を遠ざける手段として噛むことがあります。

例えば犬が食事をしているときやおもちゃで遊んでいるときに飼い主さんが触ろうとして、噛まれてしまったことはないでしょうか?

この場合、「自分のごはんやおもちゃが取られてしまう」と警戒して攻撃衝動が芽生えたと考えられます。

歯の生え変わり

生後半年前後の子犬に噛まれた場合は、歯の生え変わりが影響している可能性も考えましょう。

犬の乳歯は、生後6ヶ月~7ヵ月を目途に永久歯に生え変わります。

この時期は口の中がムズムズと痒く、噛むことで違和感を紛らわそうとする傾向にあります。

ストレスや不安・恐怖

人間もストレスや不安を感じると、緊張感が高まったり他人に攻撃的になってしまったりすることがあるでしょう。

犬もネガティブな感情を抱くと、イライラして噛んでしまうことがあります。

飼育環境を見直し、ストレスの原因を取り除いてあげることが求められます。

興奮している

飼い主さんのことが大好きだったり感受性が強かったりする子は、興奮しやすいため噛む回数が増える傾向にあります。

嬉しい気持ちやワクワク感があふれて、つい「噛むこと」で気持ちを表現してしまうのです。

甘噛みの場合は可愛くてつい放置してしまうこともあるかもしれませんが、しつけをしないと噛む強さが増して飼い主さんが痛い思いをしたり、家族以外の人を噛んでしまったりする危険があります。

犬に噛まれることで発症する可能性がある病気

病気の女の子を看病する母親

破傷風

破傷風は、土の中に存在する破傷風菌が体に入ることで発症する病気です。

例えば犬が舐めた土に破傷風菌が含まれている場合、舌に菌が付着し、噛まれた人が感染する可能性があります。

破傷風菌の作る毒素は人間の神経を「活動しすぎる状態」にするため、筋肉の痙攣やひきつけなどの症状を引き起こします。

人間は幼少期に破傷風のワクチンを受けていれば発症の可能性は低いですが、噛まれた後に病院に行くと「念のため」 とワクチンを投与されることがほとんどです。

パスツレラ症

パスツレラ症は、パスツレラ菌に感染することで発症します。

パスツレラ菌自体は決して珍しいものではなく、全体の20~50%の犬が保有している口腔内常在菌です。

感染しても無症状で済むケースが多いですが、免疫力が落ちているときは皮膚の炎症・激痛を伴う腫れなどが現れることがあります。

ワクチンは存在せず、重症になると呼吸器感染症や骨髄炎などの重篤な病気に進行する可能性もあるため、異常を感じたらすぐに病院を受診しましょう。

ワクチンを打っていれば狂犬病の可能性は低い

飼い主の手を噛む犬

「犬に噛まれたら感染する病気」として、真っ先に狂犬病をイメージした人も多いのではないでしょうか?

しかし日本では、飼育している犬への狂犬病ワクチンの接種が法的に義務付けられています。そのため、狂犬病に感染する可能性は限りなくゼロに近いといえるでしょう。

万が一ワクチン未接種の犬に噛まれてしまった場合は、すぐに傷口を水で洗った上で病院に行き、傷の処置とワクチンの接種が求められます。

とはいえ 、近年の患者発生率の低さにより、基本的に日本では噛まれた後のワクチン接種を行いません。狂犬病感染が心配な場合は、医者と相談の上で対処法を決めましょう。

犬に噛まれたときの応急処置

救急箱を持つ女性の手

すぐに水で洗い流す

犬に噛まれたときは、すぐに患部に水をかけて洗い流しましょう。家や公園の水道水で構いません。

できれば5分以上かけて流水を当て、傷口を洗います。

出血がある場合は患部を圧迫する

5分以上水をかけても出血がある場合は、患部を圧迫して血を止めます。

清潔なタオルやガーゼを使うことが望ましいですが、難しければ服やハンカチで圧迫しましょう。

直接血を触ることに抵抗がある場合は、噛まれた部分から体の中心の間にある大きな関節部分を圧迫してください。(例:手を噛まれた場合は脇の下、足を噛まれた場合は太ももの付け根)

病院を受診する

自分でできる限りの処置をしたら、病院を受診します。

この際、消毒は無理に行う必要はありません。

特に外で飼育されている犬や散歩中の犬に噛まれた場合、どのような菌を所持しているかわかりません。

症状の悪化を最小限に食い止めるため、一刻も早く受診をするべきでしょう。

犬に噛まれたら何科に行けばいい?

手を治療してもらう患者

基本的には緊急外来

犬に噛まれたら、基本的には緊急外来を受診することをおすすめします。

「外傷なら整形外科じゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、日本の緊急外来には内科や外科などのさまざまな分野の医師がいるため、止血や感染症対策の処置がスムーズです。

受診時には特に外科の先生がいるかどうか確認しておきましょう。

受診時に伝えること

受診時には怪我を見せるだけではなく、いつ噛まれたか・出血の具合・噛んだ犬のワクチン接種状況・どのような応急処置をしたか・発熱の有無・皮膚感覚など、わかる情報をすべて伝えるよう心がけてください。

特にひきつけや息苦しさがあるときは、必ず自分から伝えましょう。

免疫力が下がっている人は重症化する傾向にあります。糖尿病を患っている人やステロイドを服用している人は免疫力低下が懸念されるため、医師にその旨を伝えてください。

病院での処置内容

病院では、噛まれた部分を十分に洗浄した上で抗菌薬を処方されるでしょう。

また、破傷風のワクチン(保険適用可)を接種したり、免疫力をカバーする免疫グロブリンという注射を打たれたりすることもあります。

傷が深い場合はレントゲンで検査をする可能性もあります。

傷の大小にかかわらず洗浄の必要があるため、「すぐに血も止まったし、大したことないだろう」と楽観視せずに受診をすることを心がけてくださいね。

噛み癖のある犬の対処法

飼い主の服を噛む犬

犬が噛む根本的な理由を解決する

噛み癖のある犬をしつけるためには、まずは「なぜ噛んでしまうのか」を考えましょう。

飼い主さんに構ってもらいたくて噛んでいる場合は、十分なコミュニケーションを取るだけでも噛みたい欲求が和らぐかもしれません。

また、人間が気付かないような音や臭いなどが原因となり、ストレスがたまっている可能性もあるでしょう。

無闇にしつけるよりも、飼育環境や犬の性格・性質と向き合うことで、お互いにストレスのない生活につながります。

噛みたい欲求をおもちゃで満たす

犬にとって、噛むことはフラストレーション発散の手段でもあります。

人間を噛んでしまうことが多い子には、噛む専用のおもちゃを与えて欲求を満たしてあげましょう。

今までもおもちゃを与えていた場合は、飽きてしまっていたり口の大きさに合っていなくて噛みづらかったりする可能性があります。

サイズ感の合うおもちゃを与え、噛みたい欲求を満たしてあげましょう。

しつけアイテムを利用する

噛み癖対策に使える、口輪や超音波アイテムのようなしつけ用のグッズも多く展開されています。

口輪は噛んだときだけしつけとして嵌めることで「人を噛んだら嫌なことが起こる」と覚えてくれるため、抑止力になります。水や食事はできる程度に空間に余裕がある口輪もありますよ。

超音波アイテムは、飼い主さんがスイッチを入れることで「人間には聞こえないが犬には嫌な音が聞こえる」仕組みのしつけグッズです。

据え置きタイプや首輪タイプなどさまざまなデザインがあるため、ライフスタイルに合わせて購入してくださいね。

ただし、口輪や超音波アイテムは犬に適度なストレスを与えてしつける道具であるため、「犬が噛む理由を考えたけれどわからない」という場合にだけ使うようにしましょう。

噛まれても決して手を上げない

どんなに小さな犬が相手でも、ガブッと噛まれると思わず声を上げるほど痛いですよね。

飼い主さんもついカッとなってしまうかもしれませんが、犬に噛まれたとしても決して手は上げないように心がけてください。

体罰を与えると、恐怖心から噛み癖が悪化する可能性があります。

それだけでなく、飼い主さんとの信頼関係にも亀裂が入ってしまうでしょう。

口としつけで言い聞かせ、うまくできたらご褒美をあげることの繰り返しを忘れないでくださいね。

しつけ教室を利用する

どうしても噛み癖が直らない場合は、しつけ教室を利用するのも1つの手段です。

何回かに分けて通うため費用と期間を必要としますが、プロのトレーナーの教えを受けながらしつけられるため、高い効果が期待できます。

まとめ

飼い主の手を噛む子犬

今回は、犬が噛む理由や噛まれたときの対処法、しつけの方法をご紹介しました。

犬と人間が強い信頼関係で結ばれていれば、よほどのことがない限り噛まれることはありません。

だからこそ、犬が噛むという手段で何らかのメッセージを伝えてきたときは、飼育環境やコミュニケーション方法に不備があると考えられます。

犬の体調や心を気遣いながら、今一度ペットとの共生について考えましょう。

もちろん、自らの健康のために、噛まれた部分のケアは最優先で行ってくださいね。