【元動物看護士が解説】犬の足に異常が?足を引きずる、浮かせる症状がみられたら?原因を探るための手順
散歩の後や遊んだ後、気づくと犬の足の様子がおかしい……。
そんな経験はありませんか?
「いつの間にか治っていた」ということもありますが、症状が出た際に原因を知ることは大切です。
今回は、犬の足の異常からわかる病気や、普段の生活で気をつけたいポイントをお伝えします。
歩き方や立ち方の異常は犬からのメッセージ
犬が片足を浮かせる、引きずる、または足を庇うような歩き方(これら歩き方の異常を「跛行(はこう) といいます」)が見られたとき、真っ先に疑うのは足の怪我や病気です。
しかし足に直接原因があるわけではなく、別の病気の影響で症状が出ていることもあります。
歩き方の異常とは、以下のような様子を指します。
・足を浮かせている
・歩くのを嫌がる
・しきりに足をなめる
・足を引きずっている
・階段やソファなど高い場所への移動をしなくなった
・他の足を庇うような歩き方をしている
・腰を左右に振るような歩き方をしている
いつもと様子が違うので、見逃すことは少ないでしょう。
ただし、翌日には元に戻っていることもあるため、おかしいな?と感じたらその様子をしっかり覚えておくかメモに残しておきましょう。
繰り返し同じ様子が見られる場合は、注意が必要です。
犬が足を引きずる、浮かせている原因を探るための手順
犬が足を引きずったり浮かせたりする原因がわかれば、動物病院に連れて行った際に伝えるべき大切な情報となります。
原因と思われるものとその様子を整理することで検査や治療がスムーズに進み、今後の予防策も立てやすくなります。
単に「足がおかしい」だけでなく、その症状が起きる前後の経過や、足以外の犬の部位も観察しておきましょう。
①足に外見上の異常はないか?
まずは目で見て、足におかしなところがないかをチェックしましょう。
肉球や指の間にガラスや石、木の実などが刺さっていたり挟まっていたりしてないか確認します。
また、足がむくんでいないか、赤く腫れたりしていないか、異様に冷たくないかなども確認しておきましょう。
なお、足を触る際は噛まれないように注意が必要です。
普段は足を触られることに抵抗がなくても、痛みがある場合は別です。
②症状がみられるタイミングはいつか?場所はどこか?
足を引きずる、浮かせている様子が見られるのはどのようなときでしょうか?
散歩中だけ足を地に着けたがらず、ほぼ浮かせている状態なのか。
常に脱力していて、いわゆる麻痺のような状態なのか。
遊んでいるときや興奮しているときは足を気にする様子もなく、普段通りなのか。
外と家の中での様子の違いはないかなど、タイミングや場所による変化を見逃さないようにしてください。
その中に解決の糸口があるはずです。
③犬の元気や食欲はあるか?
跛行の原因が痛みである場合、それに伴い元気や食欲がなくなる子もいます。
元気も食欲もなく跛行(はこう)もみられる場合は、何かしらの病気が隠れているかもしれません。
元気や食欲はあるのに跛行(はこう)がみられる場合は、痛みの少ない初期段階にあるか、もしくはかまって欲しさにそのような行動をしている可能性もあります。
病気でないことに越したことはありませんが、適切な治療判断をするためにも元気や食欲の有無を確認しましょう。
④キッカケとなり得るものは何か?
跛行が起こるキッカケを考えることはもっとも大切です。
キッカケといっても難しく考える必要はなく、跛行の症状が出る前にあった出来事を時系列で書き留めておくだけです。
散歩をした、走り回った、床材を変更した、最近あまり動かなくなった、過去にも同じ症状があったなど、出来事を整理しておけば獣医師の診断材料になり、再発予防にもつながります。
⑤歩き方を動画で撮影する
跛行の様子を動画で撮影しておきましょう。
動物病院では緊張する子も多く、いつも通りに動かずに跛行を確認できないことがよくあります。
言葉説明だけでは十分に伝わらないことや獣医師ならではの気づきもあるため、動画を見てもらうのがよいでしょう。
犬が足を引きずる、浮かせるときの病気や疾患
犬が足を引きずったり浮かせたりする原因はいくつかあります。
動物病院では獣医師による説明を受けますが、事前に知っておくのと知らないのとでは、病気への理解度が違います。
動物病院と飼い主の連携あっての治療だということを忘れずにおきましょう。
外傷
外傷として多いのが、肉球や指の間の怪我です。
鋭利なものや毛虫を踏んでしまった場合以外に、夏場の暑い地面による火傷をした場合でも足裏に刺激や痛みを感じ、足を引きずったり浮かせたりします。
また、小型犬、特に子犬の時期は骨折にも要注意です。
体が成長過程にあり未熟とはいえ、驚くほど簡単に骨折します。
少し高いところから飛ぶなどやんちゃに動き回ったり、あるいは飼い主が誤って踏んでしまったり重いものを落としてしまったりと、トラブルの種はそこら中にあります。
とはいえ、飼い主の注意次第で防げるものが多いため、生活環境の見直しも含めてアンテナを広く張っておきましょう。
先天性、遺伝性によるもの
先天性や遺伝性とは、跛行の原因になり得る素因を生まれながらに持っているということです。
代表的なものとして、膝蓋骨脱臼 (通称:パテラ)があります。特に小型犬に多くみられる疾患です。
先天性でなくても、外部から強い力が加われば膝蓋骨脱臼を起こします。
膝のお皿といわれる膝蓋骨が外れることにより痛みが生じ、足を地に着けることなくピョンピョンと跳ねるように歩くのが特徴です。
この膝蓋骨脱臼にはグレードがあり、4段階にわかれています。
グレード1では痛みを伴わない場合も多く、獣医師であれば手技で簡単に元に戻すことができます。
症状が進行しグレード4になってしまうと手技で戻すことができないうえに、痛みなどで日常生活に支障をきたします。
その場合は、手術を検討することになるでしょう。
他には股関節形成不全と呼ばれる、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリーバーなどの大型犬に多く見られる、遺伝性要因の強い疾患があります。
膝蓋骨脱臼と同様に、症状が進むと痛みが強くなり歩行困難となる疾患です。
特徴として、モンローウォークと呼ばれる、腰やお尻を左右に振りながら歩く様子がみられることがあります。
関節炎
関節炎はその名のとおり、関節で起きる炎症です。
過度な運動や激しい動きにより起こるほか、先に挙げた膝蓋骨脱臼や股関節形成不全によっても起こります。
また、老齢になれば関節炎の発症が増えることも覚えておきましょう。
腫瘍
腫瘍には良性と悪性がありますが、ここでは主に足に発生する確率の高い、悪性の骨肉腫を指します。
非常に強い痛みを伴う上に、骨肉腫と診断された時点で余命は1年未満の可能性が高く、飼い主は辛い現実と向き合わなければいけません。
椎間板ヘルニア
ダックスフンドやコーギーを飼っているなら知らない人はいないといえるほど、メジャーな疾患です。
椎間板ヘルニアは、背骨(脊椎)の中にある脊髄という太い神経が圧迫されて起こります。
圧迫されるとふらついたり背中を痛がったりなどの神経症状が出ますが、その一つが足を引きずるというものです。
抱っこしたときに痛みを感じ、「キャン!」と鳴くこともあります。
犬の歩き方がおかしなときの対処法
足を浮かせる、足を引きずるなどの不自然な歩き方を目にした場合、大抵の方は戸惑ってしまうでしょう。
そんなときにどうすればよいのか、悪化させないために、再発させないためにも以下の方法を実践してみてください。
早めの診察を心がける
どのような病気であっても、早期発見・早期治療が何より大切です。
特に麻痺のような神経症状が出る病気や骨肉腫は、どれだけ早く治療を開始したかでその後の経過が大きく変わります。
病院に連れていくことを最優先にしましょう。
足に外傷がないかチェックする
足に怪我をしていたり何かが刺さっていたりすれば、目で確認できます。
取れるものであれば取り除き、小さな出血であればガーゼなどで圧迫止血できます。
怪我した部分からウイルスや細菌に感染する可能性もあるため、処置後は病院に連れていきましょう。
安静にする
もっとも簡単にできるうえに、悪化も防げるのが安静です。
跛行の症状がありながら痛みがないケースもあり、犬はいつも通りに歩き回ってしまいます。
けれども跛行で動き回ることは症状のないほうの足の負担となるため、安静を心がけましょう。
靴や靴下を履かせる
ネット通販などで、犬用の靴や靴下を見かけることがあるでしょう。
足を引きずる場合は床に擦ってしまうため、とても効果的です。
ただし、靴や靴下は長時間履いたままにしていると、蒸れてしまう可能性があります。
指の間に炎症を引き起こしてしまうことがあるので注意しましょう。
床材の変更をする
犬にとって滑りやすい床材は、人が思う以上に足に負担がかかることを認識しておいてください。
犬が生活するエリアだけでも滑りにくい床材に変更することは効果的です。
特に高齢犬は筋力が落ちるため、足への負担を減らしてあげましょう。
体重管理をする
肥満になると、当然足に負担がかかります。
犬の体重管理が難しいとされる主な原因は、飼い主の甘さにあります。
犬は体重など気にしないので、太ってもご飯やおやつを要求してくるでしょう。
そこで「少しくらいなら……」と甘い顔をみせてしまうと、体重管理はなかなか上手くいきません。
まとめ
足の異常に気づいたときは、慌てずに様子をしっかり確認しましょう。
環境を整え、適正体重を維持し、再発防止に取り組めば、愛犬の足への負担を劇的に減らすことができ、楽しい毎日を過ごせるはずです。