【闘病記】急性腎不全が奇跡的に治った猫・ポンちゃんの治療と回復のストーリー【前半】

猫のポンちゃん

「猫の宿命」とまで言われ、猫の多くが発症する病気が腎臓病。

腎臓の機能が悪くなる「腎不全」には、徐々に腎臓の機能が失われていく「慢性腎不全」と、突然腎臓機能が低下する「急性腎不全」があります。

今回は、8年前に「急性腎不全」にかかり生死をさまよったスコティッシュフォールドのポンちゃんと飼い主の田村さん(仮名)の闘病ストーリーをご紹介します。

猫の急性腎不全とは

猫のポンちゃん

急性腎不全とは、腎臓の機能が突然低下し、正常に働かなくなる病気です。進行がとても早く、急速に腎臓の機能が低下するため、症状が現れるのも突然です。

初期症状は、食欲と元気がなくなって飲水量、排尿ともに減り、全くなくなることもあります。症状が進行すると、脱水、嘔吐、体温低下、けいれんなどの症状が起こります。

原因は、腎臓の異常の場合と、別の病気が原因の場合に分けられます。熱中症などの脱水や心不全によって腎臓への血液循環に問題が起こることや、ウイルスなどの感染症やユリなどの中毒によって腎臓自体がダメージを受けること、また尿道閉塞によって排尿ができなくなることなどが考えられます。

猫の急性腎不全は死亡率が高く、安楽死も含めた治療中の死亡率は53.1%にのぼります。しかし、初期の段階で治療すれば、慢性腎不全と違い、腎機能が回復する可能性が残されています。

愛猫が急性腎不全に!発症から回復まで2カ月半の実録ストーリー

実際に愛猫が急性腎不全と診断された田村さんに、発症から回復までの闘病体験談を伺いました。

発病から入院まで

東京都に住むスコティッシュフォールドの男の子、ポンちゃん。たぬきをイメージして名付けられ、健康診断にも通うなど、飼い主の田村さんに大切に育てられていたポンちゃんは、2歳のときに急性腎不全と診断されました。

2014年3月29日。田村さんは当時、切迫早産により長期入院中でした。田村さんのご家族が気づいた病気のサインは食後の嘔吐。ポンちゃんが黄色っぽい吐しゃ物を吐き出す嘔吐を繰り返すことに不安を感じ、よく観察すると、食欲がなく毛づやも悪い気がしたと言います。病院に駆け込むと、急性腎不全との診断でした。

3/29 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 130mg/dl以上測定不能 16-36
CREA(クレアチニン) 12.7mg/dl 0.8-2.4
ALT(アスパラギン酸) 214U/L 12-130
K(カリウム) 6.0mmol/L 3.5-5.6

田村さん「すべての値が異常値を示しており、生命的にも非常に厳しいとのことでした。1週間前の健康診断の結果はすべて正常、3日前までは元気だったと聞いていたので、まさに晴天の霹靂(へきれき)でした。入院中の病院の廊下でもう大泣きしましたね。このまま会えずに、ポンちゃんが死んでしまうのではないかと恐怖を感じました。」

ポンちゃんは即入院となり、ひとまず1週間ほど点滴治療を受けることになったのです。

転院、そこで意外な事実が…

猫のポンちゃん

入院したポンちゃんですが、入院して点滴を受けているにも関わらず排尿の量が減り、容体が悪化していきました。

3/31 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 190mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 16.4mg/dl 0.8-2.4
K(カリウム) 6.6mmol/L 3.5-5.6

田村さん「カリウムの値が悪化するのは悪い傾向と言われました。さらに腎臓から膀胱への通り道に腫瘍があり、それが急性腎不全の原因になっていると言われたんです。急性腎不全の症状も全くよくならなかったので、転院を勧められ、入院5日目に大学病院に転院が決まりました。そこで、思いがけない展開になったんです」

大学病院に転院したポンちゃんの体重は、大量の点滴のせいで、健康時の体重2.95kgに対して4.00kgまで増えていました。これにより、血中のphバランスが致死レベルで偏り、重度の貧血と肝機能の低下まで起こしていたのです。

また、大量の点滴により腹水がたまり、皮膚の状態も悪化していました。急性腎不全の数値にも改善が見られず、診断は「急性腎不全による合併症を起こしている状態」と言われたそうです。

田村さん「体重60kgの人が80kgになるまで点滴を受けた換算です。まずは体にたまった水を除去することが最優先事項と言われました。大学病院では、急性腎不全の原因は、直前に受けたワクチンが引き金になっているのではという所見でした。免疫力が低い状態だったところにワクチンを接種したことで、膀胱炎、腎炎が発生して腎不全となったのでは、と言うのです。腫瘍の話はなんだったの?という感じでしたが、腫瘍がなかったからといって、とても安心する気にはなれませんでした。」

2つの奇跡、ポンちゃん峠を越す

猫のポンちゃん
■立ち上がれない状態のポンちゃん(今晩が峠と言われた日)

ポンちゃんだけでなく、田村さんも切迫早産で入院している状態でした。「今すぐ駆け付けたい」と歯がゆい思いをしていたところ、一つ目の奇跡が起こりました。

それは、田村さんの切迫早産の症状が嘘のように収まり、なんと主治医から退院の許可が出たのです!

田村さん「治療6日目の4月3日、私は自分が退院した足でポンちゃんに会いに行きました。ポンちゃんの意識は朦朧としていましたが、私の顔と声に気づいて、か細い声で『にゃー』と鳴きました。やっと会えたという気持ちと心配とで涙が止まりませんでした。」

その時、先生は「最期は家で家族に囲まれたほうが幸せかもしれない」と切り出したそう。「今夜が峠ですが、生きる可能性のほうが少ない。もし明日までもっても合併症や皮膚の状態が悪いことから、急性腎不全の治療はまだできません」と。

それを受けて田村さんは、「飼い主のエゴかもしれないけれど最期は一緒に過ごしたいと思って、看取る覚悟で連れて帰ることに決めました。」そして、ポンちゃんを連れて帰宅しました。

ところが、家に着くとポンちゃんの少し表情が変わったように思えたのだそうです。

病院では立ち上がれなかったのに、自力で水飲み場まで歩き水を飲み、排尿もありました。残っていた力に驚きつつも安心はできず、その夜は田村さん夫婦でポンちゃんが息をしているか、確認しながら過ごしたと言います。

その後も元気はなくご飯は食べないポンちゃん。電解水と栄養スープを強制的に摂取させつつ様子を見ていたところ、田村さんが食べていたツナサラダに食欲の反応を示したのだそう。

田村さん「なんでもいいから食べてほしいと祈るような思いでツナを出したところ、固形物なのに少し食べたんです!そこからは少し表情もはっきりして、自分でトイレに行くことも。大好きな猫じゃらしを見せたら走って飛びついたときは、走れるの?と、びっくりしましたね。看取る覚悟だった3日前に比べて確実に元気になっていました」。

ツナを食べる猫のポンちゃん

ポンちゃん、峠を越す――。田村さんの切迫早産の解消に引き続いての奇跡を起こしたのでした。

後半に続く

大好きな田村さんと再会し、愛着のある自宅に帰ったことで復活した生命力。ポンちゃんはなんとか命を繋ぎました。

この後急性腎不全はどのように回復していくのか、後半は2021年12月24日(金)に公開の予定です!

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