犬の白内障の治療法は?予防法や進行を穏やかにする方法ってあるの?
前回の記事では、犬の白内障の概要や原因などについてまとめました。
では、犬の白内障はどのように治療するのでしょうか?
白内障の予防法や、進行を穏やかにする方法はあるのでしょうか?
今回は、犬の白内障の「治療法」や「予防法」、「進行を穏やかにする方法」についてまとめました。
白内障の治療方法は?
根本的な治療法は「手術」のみ
白内障のステージが「1(初発期)」「2(未熟期)」の場合は、点眼薬やサプリメントの処方で進行を遅らせる方法が取られます。
「3(成熟期)」「4(過熟期)」になると手術が検討されます。
一度濁ってしまった水晶体はタンパク質が変異している状態なので、元の透き通った状態に戻ることができません。
そのため「進行をできるだけ遅らせる」か、根本的な治療法は「手術で水晶体を取り除く」ことしかないのが現状です。
手術をするメリット・デメリット
手術を受けると
・視力が回復する可能性がある
・合併症のリスクを軽減させる可能性がある
といったメリットがあります。
白内障の根本的な治療法は今のところ外科手術しかないので、水晶体が濁ってしまった愛犬の視力回復を望むのであれば外科手術の選択は有効です。
しかし、一方で手術には
・全身麻酔のリスク
・合併症のリスク
・手術費用が高額である
・手術後には徹底的な合併症予防が必要
・必ずしも視力が回復するわけではない
などのデメリットも存在します。
網膜や視神経にダメージがあると、手術をしても視力が回復しない場合があります。
人間の場合、白内障の手術は日帰りで行うこともできます。
しかし犬の場合は全身麻酔となり、合併症のリスクを抑えるために術前術後は集中的なケアを行う必要があります。
そのため犬の白内障の手術には3~7日の入院が必要になる場合があります。
白内障の手術は入院日数の多さもあり高額になりやすいため、手術をするかしないかで悩んでしまう飼い主さんも多くおられます。
合併症のリスク
犬をはじめ、動物の眼は人間の数倍の免疫システムが働くと言われています。
そのため手術で眼を触ることで、強い炎症が起こりやすいと言えます。
しかし、手術をしなくても水晶体のトラブルが他の部分の炎症に繋がる恐れがあり、合併症を起こすリスクは高いため、唯一の根本的治療である手術を受けた方が、合併症のリスクを軽減できる可能性があると言えます。
手術を受けられる条件
愛犬が白内障の手術を受けるには、
・全身麻酔に耐えうる体力がある
・エリザベスカラーが装着できる
・顔や体を触らせてくれる
・網膜や角膜に重度の疾患がない
・術後も定期的な健診を受けられる
などの条件があります。
術前術後には合併症予防対策のため、こまめな点眼やケアが必要になります。
そのため身体を触ると怒って暴れてしまう子は手術が難しい場合があります。
術後は目を傷つけないためにエリザベスカラーの着用が必要となることが多いため、エリザベスカラーに強い抵抗感がある子も注意が必要です。
白内障を予防するには?
白内障を確実に予防する方法は今のところありません。
しかし何もしないよりは、少しでもリスクを減らす「愛犬の眼に優しい生活」が大切です。
・定期的な眼健診
・異変の早期発見
・糖尿病の予防や早期治療
・強い紫外線を浴び続けない
・バランスの良い食生活
・目を傷つけない
などを意識して、愛犬の眼を守る意識を始めましょう。
白内障は早期の発見と治療開始によって、進行を遅らせることができる可能性が高まります。
愛犬が白内障を起こしやすいといわれる犬種の場合は特に、健康で若いうちから定期的な眼検診を行っておくと良いでしょう。
糖尿病を患うとほぼ白内障を起こすと言われていますので、糖尿病の予防や早期の治療も大切です。
また目を傷つけることで白内障のきっかけとなることもあるため、お散歩時に草むらや垣根の小枝などで目を傷つけないように注意してあげましょう。
紫外線が強い夏場には、できるだけ紫外線が少ない時間帯にお散歩をするようにしましょう。
白内障の進行を穏やかにするには?
点眼薬の処方
犬の白内障の進行を遅らせるために、点眼薬が処方されることが多いようです。
一般的な白内障の点眼薬には、タンパク質の変性を防止する効果があると言われている「ピレノキシン」が使用されています。
しかし獣医師によっては「明らかな効果が実感できない」という意見もあり、点眼薬の効果には賛否両論あるようです。
飼い主さんの中には「点眼し始めて3年になるが、濁り度が進行せず維持されている」と効果を実感している人方もいるようなので、愛犬の様子を観察し獣医師と相談しながら選択していくと安心ですね。
抗酸化作用のある成分を摂取する
初期の白内障の場合、点眼薬とともに抗酸化作用のある成分のサプリメントが処方されることもあります。
今のところ、白内障に効果があると明言できるサプリメントはありません。
しかし白内障は「酸化ストレス」の影響があることから、抗酸化作用のある成分を摂取することで進行を遅らせることができるという希望はあります。
抗酸化作用が期待できる、ビタミンC、ビタミンE、アスタキサンチンなどの成分を意識的に食事に取り入れると良いでしょう。
手作りフードの場合はこれらの成分が豊富な食材を選んだり、市販フードの場合はこれらの成分が含まれているかチェックしてみましょう。
サプリメントはあくまでもサポート役ですので、むやみに多用すると身体に負担がかかることもあります。
処方以外のサプリメントを取り入れる前には獣医師と相談してからにすると安心です。
まとめ
犬の白内障の治療法は手術しかなく、効果があると明言されている投薬による治療法やサプリメントがまだ無いのが現状です。
そのため「早期発見と治療開始」を意識し、愛犬の定期的な眼検診がとても重要になります。
眼を傷付けることも白内障のきっかけになると言われているため、愛犬の眼を傷付けないようにすることや皮膚炎による掻きむしりにも注意が必要です。
また白内障は糖尿病や甲状腺機能低下など他の病気が原因となる場合もありますので、眼だけでなく全身の健康診断も定期的に行っておきましょう。
点眼薬や抗酸化作用のあるサプリメントの効果には賛否両論ありますが、実際に効果を感じているという意見もあります。
愛犬の眼の様子を見ながら、獣医師と相談しながら進行を穏やかにする方法を試してみると良いでしょう。
犬は優れた鼻や耳がありますので、たとえ視力が低下しても飼い主さんのサポートや生活環境の工夫があれば安全に暮らすことができるでしょう。
視力の低下よりも、合併症による強い痛みを防いであげることが重要です。