犬にも温活!愛犬にもお灸を試してみませんか?棒灸(ぼうきゅう)の使い方をご紹介
お灸が身近でない場合、お灸にはいたずらっ子に「灸をすえる」、「やいとする」という負のイメージをお持ちかもしれません。
でも、お灸は本来、躾の意味ですえるものではなく、大切な子供の風邪の予防や治療の一環として、また、夜泣き・かんしゃく・ひきつれなど「疳の虫(かんのむし)」と呼ばれる症状の治療として用いられてきました。
そんなお灸は世界的にも効果が認められている代替医療の一つ。
人にはもちろん、犬にも効果があります。
一からモグサを捻ってお灸をするのにはそれなりの練習が必要ですが、実は家庭で手軽にできるお灸が幾つかあります。
今回は、そんなお灸の中の『棒灸(ぼうきゅう)』についてご紹介していきます。
お灸とは
お灸は艾(モグサ)を使って、皮膚の上から経穴に対して温熱刺激を与える伝統的な医療の一つです。
モグサは「ヨモギの葉裏にある白い綿毛や腺毛を主成分としたもの」です。
ヨモギの中でもモグサになる成分の中にはチオネール(シオネール)と呼ばれる精油が多く含まれ、このチオネールにはリラックス(鎮静)効果や鎮痛効果、抗炎症効果などがあると報告されています。
お灸をすることで、お灸の温熱効果だけでなく、精油の鎮静・鎮痛・抗炎症効果などが期待できるのです。
ちなみに、ヨモギには止血・鎮痛作用などがあり身体を温める効果もあるため、月経不順や月経痛などに使われる漢方にも活用されています。
日本の『よもぎ湯』や韓国での『よもぎ蒸し』などは、お湯や蒸気の温熱効果とヨモギの様々な効果をお手軽(市販のヨモギを利用しない場合は、摘んで洗って陰干しして、と何かと手間がかかりますが…)に利用できる民間療法ですね。
お灸の効果
冷えからくる痛み、冷え症に効果的
お灸には温熱刺激があるので、冷えによる筋肉の強張り、冷え・寒さからくる痛みやその他の症状をはじめ、冷え症全般に効果があります。
犬に冷え症?冷え・寒さからくる痛み?と疑問に思うかもしれません。
冷え症は四肢末端の血行があまり良くない状態と考えてみてください。眠っている、あるいはくつろいでいる愛犬の肉球が冷たかったら、四肢末端の血行が良くない証拠です。
冷え・寒さからくる痛みや不調がある場合、寒さが厳しくなってくる時期、あるいは、朝や夜間の冷え込む時間帯になると跛行(はこう)やくしゃみ、鼻汁、下痢、膀胱炎といった症状が発現したり悪化したりすることがあります。
こういった冷えや寒さに対する傾向があれば、温めるお灸が効果的です。
むくみの改善に
お灸で血行が促進されれば、むくみも改善されていくのは自明の理ですね。
犬の場合は心臓疾患や腎臓疾患など以外ではあまりむくみが主訴となることはありませんが、お灸を受けた後はトイレに直行しやすいので、余分な水気を排泄させる効果は高いようです。
代謝を活発に
血行が良くなれば、代謝は活発になり、代謝が活発になれば白血球など免疫を担当する細胞たちも元気に活動してくれるように、と負の連鎖ならぬ正の連鎖が始まります。
メカニズムの詳細はまだ解明されていませんが、お灸には免疫力を高め、代謝を活発にするといった効果も認められてきており、最近では西洋医薬の補助や副作用の低減に、と活用されてきています。
家庭でできるお灸、棒灸
お灸の中には家庭で手軽に利用できるものが幾つもありますが、今回は棒灸をご紹介します。
棒灸とは?
モグサを和紙などで棒状に巻いたものです。モグサだけのもの、モグサ以外の生薬を混ぜたもの、煙がでにくいよう炭化したもの(炭化灸)などがあります。
左2本はもぐさを巻いた棒灸で、一番左側は匂いがかなり強く、中央は匂いが少なめです。
右側は炭化灸で、匂いは控えめ。棒灸用の炭化灸は太さが色々あり、これは一番細いものです。
棒灸に必要なもの
① | 棒灸 |
② | ライターやチャッカマンなどの火種 |
③ | 灰皿または耐熱皿 ※棒灸を一時的に置いたり、先端の灰を取り除くために使用 |
④ | 火消用のツボまたは火消用の缶 ※棒灸用フードに付属していることもあります ※無煙灸の場合は、火消用の灰(別途購入が必要)や目の細かい砂を耐熱グラスに入れ、その中にお灸を深く挿入することでも火を消すことができます。 ※火消用の灰は香炉用の灰なので、仏具店でも購入可能です。 |
⑤ | 棒灸用フード(できれば柄付) ※あれば便利ですが、なくても棒灸は可能です。 |
⑥ | ガーゼないし手ぬぐい ※灰で汚さないためのもので、無くても構いません。 |
⑦ | 輪ゴムもしくは髪ゴム |
棒灸の使い方(棒灸フードを利用しない場合)
① | 棒灸の先端にライターで火をつけ、先端が均一に燃えていることを確認します。
炭化灸の場合は先端が均一に燃えていることを確認します。
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② | 愛犬の温めたい部分にガーゼないし手ぬぐいを置き、皮膚から5㎝ほど離した位置に棒灸の先端がくるように利き手で鉛筆を持つように棒灸を持ちます。愛犬の急な動きにも対応できるよう、利き手の小指を愛犬の身体に沿えておきましょう。反対の手は棒灸をあてる部位の周囲を半分囲むようにして愛犬の身体にそっと添えます。
棒灸の皮膚からの位置は、最初は高めにとりましょう。飼い主さんが棒灸の扱いになれてくれば、愛犬の気持ち良い高さを探してみてください。 気持ちよく感じている時は張りつめた筋肉がゆるんできたり、目がとろんとしてきたりします。 |
③ | 温めたいところを中心におおよそ半径2~3cmの円の範囲で渦巻き状に回しながらあてていきます。棒灸をあてる時間は1部位につき、5~20分。初めての時や高齢・幼齢の場合は時間を短めにし、飼い主さんと愛犬が互いに棒灸に慣れてきてから徐々に時間を長くしていくようにしましょう。
※渦巻き状に回すのは低温やけどを回避するためです。愛犬の皮膚がほんわか温かくなるよう、かつ、一か所に長くあてすぎないよう注意しましょう。 |
④ | 十分に温まったら別の場所に移動し、③の動作を繰り返します。棒灸の先端が燃えて灰になってくると、灰が周囲に落ちて汚れてしまいます。時々灰皿の隅に棒灸をトントンとあて灰を落とすようにしてください。 |
⑤ | 終わったら、火消用のツボまたは火消用の缶に入れて火を消します。これらが無い場合は、アルミホイルを巻き付けて空気を遮断し火を消すことで代用も可能です。
※すぐには消えにくいので、次回使うときまで火消ツボや火消用缶の中に入れたままにしておくのでも大丈夫です。
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棒灸はAmazon等で購入できます。
棒灸の使い方(棒灸フードを利用する場合)
※棒灸フードに添付の使用説明書の使い方に従ってお使いください。
① | 棒灸の先端にライターで火をつけ、先端が均一に燃えていることを確認します。 |
② | 棒灸フードの中に棒灸を入れます。
※フード上部がゴムのものはフードに棒灸を入れてから火をつけるか、火がついた棒灸をフードの中から逆向きに入れ、棒灸からの高さを調節します。 ※飼い主さん自身の身体にあて、熱すぎないことを必ず確認してください。 |
③ | 愛犬の温めたい部分にガーゼないし手ぬぐいを置き、その上から棒灸フードをあて少しずつ円を描くように棒灸フードをずらしながら温めていきます。
フードをずらしていく際に、棒灸をあてていた部位が熱くなりすぎていなかを手で確認しましょう。 熱すぎる場合は、ゴム付きの棒灸フードであれば棒灸の位置を調節し、それ以外の棒灸フードは下の手ぬぐいを厚めにするか少し浮かして使用してください。 ※棒灸フード自体にガーゼをあて、輪ゴムで止めて行う方法もあります。この時、棒灸フードの空気穴を塞がないようにしましょう。
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棒灸フードはAmazon等で購入できます。
家庭でお灸をする時の注意点
家庭でお灸をする時は、まず火の取扱いに注意し、愛犬・飼い主さんともに火傷しないよう注意しましょう。
顔面部や化膿が酷い部分は避け、現在なんらかの疾患で獣医師の治療を受けている場合は、獣医師にお灸が可能かご相談ください。
お灸をするタイミング
基本、愛犬がリラックスしている時がタイミングです。
ただし、空腹時・満腹時は負担となるため、ご飯の前後1時間は控えましょう。
運動直後も同様です。逆に運動前・散歩前の血行促進に活用してください。
入浴やトリミングなどで普段よりかなり疲れている時は丸一日避けた方がお勧めです。
愛犬がリラックスできる体勢で
愛犬の体勢は棒灸をあてたい部位により変わりますが、基本的には愛犬がリラックスできる体勢にしてあげます。
リラックス状態にあれば、立っていても横になっていても伏せになっていても、眠っている時でも構いません。
膝の上で抱っこしながらあてるのも可能です。ちょっと煙たいですが・・・。
お灸が必要ではない犬も
冷え症とは無関係な犬の場合、お灸を好まないことがあります。
そんな犬は何度棒灸を試してもお灸でリラックスできず、緊張した様子をみせます。
換気扇を必ず回しておきましょう
棒灸の中にはかなり匂いが強いものがあります。棒灸をすると数時間~半日以上、部屋にお灸の匂いが留まることも。
使う前後にはしっかりと換気扇を回しておくか、窓を開けしっかり換気しておきましょう。
棒灸の種類によって匂いの強さは変わりますので、幾つか試してみると良いかもしれません。匂いの強さと棒灸の価格はだいたい反比例しています。
まとめ
お灸は人間だけでなく、犬や猫、馬や牛、鳥にまで活用されています。興味がある方は手軽にできる棒灸から始めてみませんか?
棒灸や棒灸フードには犬用・人用という分別は全くないため、兼用できます。最初は、飼い主さんご自身が棒灸の温かさや使った感じを確かめてみてください。
愛犬に棒灸をあて始める時は、温めたい皮膚のまわりを自分の利き手ではない手で囲み、熱すぎない距離&愛犬の皮膚・筋肉の反応をチェックしていきましょう。
距離や時間が把握できるようになったら、棒灸フードを使うと腹部などにも手軽にできるようになります。
柄付きの棒灸フードを用意すれば、飼い主さんご自身の腰や背中にあてることも可能です。温めると痛みが和らぐ肩こりや腰痛、生理痛などがあれば、日常的にお使いになるのもお勧めです。
棒灸はお灸関係の中でも匂いが強いもの。これがダメな場合、台座灸(だいざきゅう)や電気をつかった温灸器などを活用することもできます。
愛犬に合ったお灸を是非探してみてください。