保護犬カフェとは?NPO法人キドックス運営『キドックスカフェ』に行ってきました
保護された犬や猫と触れ合いながら自分と相性の良い子を探し、里親希望の相談もできる保護犬・保護猫カフェ。
保護された動物たちも人馴れするトレーニングができ、里親希望者も何度も通って性格を見極められるため、いざ一緒に暮らしてから「こんなはずじゃなかった…」「やっぱり返したい」となるリスクを減らせる素晴らしい試みです。
今回は、茨城県のつくば市にある保護犬カフェの『キドックスカフェ(KIDOGS CAFE)』にお邪魔した様子をリポートします。
保護犬ってなに?4歳児の疑問
我が家の娘は怖がりで、遊園地に行っても乗り物に乗りたがらず、公園でも大きな遊具には近づきません。
そんな娘にどこか行きたいところはあるかと聞くと、必ずと言っていいほど動物がいるところと答えるため、最近では動物園や水族館以外にも小動物カフェや猫カフェを訪れることが増えてきました。
キドックスカフェに初めて伺う前、娘には今度行くカフェには人間が怖い子もいるかもしれない、我が家の愛犬と同様の接し方をしてはいけない、お店の人の言うことをよく聞いて、いつも以上にワンちゃんには優しくするようにと言い聞かせました。
その時に保護されるというのがどういうことなのかも説明したのですが、娘はあまりピンとこなかったようで、実際に保護犬について理解したのはキドックスカフェでむぎちゃんに会ってからでした。
窓の外からむぎちゃんを見た時は可愛い!と興奮していた娘。むぎちゃんを近くで見て、初めて左耳の先がないことに気付いたのです。そして「どうしてお耳がないの?痛くないの?」「可哀想だよ」と涙ぐんでしまいました。
犬生ファイル
『キドックスカフェ』には各保護犬たちのこれまでを綴った「犬生ファイル」が用意されており、これを読むことでその子のプロフィールと、どのような過程で保護をされたのかが分かります。
むぎちゃんはもともと高齢の方が飼育されていて、飼育困難になって保護されたとのことです。自家繁殖をしてしまっていたそうで、そちらのお宅には7頭もの犬がいたと書かれていました。
その中で最も健康状態が良好だったのがむぎちゃんだったそうで、現在はカフェで店員さんとして働けるほど回復しているのですが、これを音読したところで娘からは「一緒にいたむぎちゃんの兄弟はどうしたの?」との質問が。
ファイルの中では兄弟犬について深く触れられていません。しかし、片耳を失い、フィラリアの陽性反応も出ているむぎちゃんが1番健康だったということは、他の子は回復が見込める状態ではなかったのかもしれません。
そのことを噛み砕いて娘に伝えると、「どうしてこんな良い子が酷い目に遭うの?」と、かなりショックを受けていたのですが、そこから他の子達はどうしてここで保護されているのかにも興味を持ち、他の子達の犬生ファイルも見て回りました。
すると今太郎くんやせんじゅちゃんなど、外を1匹で歩き回っていて保護されたワンちゃんが多いことが分かり、娘はここで野良犬という存在を初めて知ったのです。
我が家の近くで野良犬や放し飼いの犬を見ることはありません。そのため私も野良犬は少なくなったのだと思い込んでいましたが、自然が多く残っているような地域では、飼育放棄された犬たちが帰る場所もなく暮らしていることが珍しくないのだという事実にショックを受けました。
キドックスカフェのワンちゃんたち
我が家は10月と11月の初旬に2回『キドックスカフェ』にお邪魔したのですが、その時お店にいたワンちゃんたちは全員で7頭。
出勤する子はその日の体調などの事情で入れ替わりがあり、トレーニングをしてから接客デビューをするそうです。
そのうちの2頭、天真爛漫なキャバリアのでこぽんちゃんと真っ白な毛が愛くるしいせんじゅちゃんはもうお家が決まっており、スタッフとして出勤しているそうです。
そして元気いっぱい、初対面でも一緒に遊んでくれる陽気な幸多郎くん。
■幸多郎くん
幸多郎くんはトライアル先のお家が決まっていて、もう卒業目前とのことです。
他の4頭が新しい家族を待っている子たちで、下の写真のワンちゃんが我が家の娘の大のお気に入りのむぎちゃん。
■むぎちゃん
おっとりゆったりした性格で、可愛くて仕方ないそうです。
ツヤツヤふわふわの真っ黒い毛の美人さん、くるみちゃん。おやつが大好きで、パワフルな女の子です。
■くるみちゃん
小さなお顔とつぶらな瞳、額の模様が印象的なくろまろちゃん。お出迎えとお見送りに出てきてくれる、好奇心旺盛な気配り上手さんです。
■くろまろちゃん
癒し系の穏やかで優しい男の子、今太郎君。
■今太郎君
現在の愛犬の前に私が一緒に暮らしていた子に挙動が似ていて、賢くて独立心の強い子なのかな、臆病ではないけれど慎重派なのかな、と見ていると想像が膨らんでしまいます。
くるみちゃんとくろまろちゃん、でこぽんちゃんとせんじゅちゃんはカウンター前のフリースペースにいて、いつでも遊ぶことができました。
むぎちゃん、幸多郎君、今太郎君は奥の個室にいて、その部屋に案内された時や空室の時に一緒に過ごすことができます。
犬と触れ合ったことがない方でも安心
保護犬カフェと聞くと、動物は好きだけれど一緒に暮らしたことが無いという方には敷居が高く感じてしまうかもしれません。
私も愛猫を迎える前に保護猫カフェの存在をTVで知った時、「素敵な活動だし行ってみたいけれど、猫のことをよく知らないし、保護猫さんが嫌がることを無意識のうちにしてしまったらどうしよう…しかも、猫をお迎えするわけでもないのに」と行くのをためらっていました。
しかし『キドックスカフェ』が用意している犬生ファイルの中には、この子はこういうことが好き、接する時に注意すること等のアドバイスが細かく書かれているため、犬と触れ合った経験が少ないという方でも安心して保護犬たちと関係を築くことができます。
ちなみにくろまろちゃんは男の人が苦手だそうで主人のことを怖がって逃げてしまい、今太郎君は子供が苦手なようで、私と遊んでいたところに娘がやってくると部屋の隅の方に逃げていってしまう様子が見られました。
産まれた時から犬がいる環境で育ち、これまで犬に好かれることが多かった娘はショックだったようですが、どうしたら今太郎君と仲良くなれるのか真剣に考えるようになり、良い経験をさせて頂きました。
保護犬といってもくるみちゃんや幸多郎君のように初対面の人とも仲良くしてくれる大らかな性格の子もいれば、特定の性別や世代の人間に苦手意識のある子もいます。
「あれ?ワンちゃんを困らせてる?」と接し方に不安を感じたら、スタッフさんに相談をすると適切なアドバイスを頂けるので、犬は好きだけれど接したことがあまりない、というお子さんも色々学べますよ。
保護犬と若者自立支援の取り組み
『キドックスカフェ』を運営しているNPO法人キドックス(kidogs)の活動は、保護犬たちのトレーニングや新しいお家探しを行っているだけではありません。
心に傷を負った保護犬のケアや訓練を引きこもりなどの若者に任せ、それをサポートすることで社会と関りを持つ、外の世界に一歩を踏み出す支援も行っているとのことです。
カフェに伺った際に、NPO法人キドックスの活動を取材した書籍『捨て犬たちとめざす明日』を購入、拝読したのですが、外の世界が怖くて働くことができず、焦燥感を抱えていた若者たちが犬たちとの触れ合いを通じて自信を取り戻し、アルバイトを開始するまでが綴られており、犬の持つ力の凄さに改めて驚かされました。
最初は犬の排泄物も触れず消極的だった青年や心療内科に通う程人が怖かった女性が、それぞれ3頭の保護犬たちの訓練を経て変化していく様子に勇気を貰える一冊です。
児童書ですので、小学校の高学年以上であれば内容も問題なく理解できるかと思います。我が家では娘が自分で読める年齢になるまで、大切にしておこうと考えています。
■捨て犬たちとめざす明日 (ノンフィクション知られざる世界)
キドックスカフェの場所
公共交通機関を使用する場合、『キドックスカフェ』へのアクセスは、つくばエクスプレスのつくば駅、もしくはJR常磐線の土浦駅が最寄です。下車後はつくば駅と土浦駅を結ぶ関東鉄道バスに乗り、吉瀬で降りて徒歩3分ほどで到着します。
『キドックスカフェ』には広い駐車場もあり、つくばと土浦を結ぶ土浦学園線の茨城県道24号から見える場所にあるため、車でのアクセスも便利です。
キドックスカフェの営業時間と料金
営業日は月曜日と土日、祝日の11:00~18:30(入店は17:30まで)となっており、臨時休業の情報はキドックスカフェの公式HPから確認できます。
料金は平日が30分900円~、休日が30分1100円~となっており、じっくりワンちゃんのことを知りたい場合は1時間以上の滞在がおすすめです。
基本料金の中には手作りのスイーツとドリンク、ワンちゃん用のおやつの代金も入っています。
スイーツは優しい甘さでとても美味しく、店内の温かい雰囲気と相まって幸せな気分にしてくれます。
ちなみに我が家は祝日に伺って120分滞在させて頂いたのですが、料金は1人あたり2,300円でした。
しかし120分いても4歳の娘は物足りなかったようで、帰り道で「次はいつ連れてってくれるの?」「また皆に会いたい。寂しい」を連呼していました。。。
まとめ
お迎えする犬を探しているわけでもないのに保護犬カフェに行くなんて、冷やかし客みたいで気が引けると感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、『キドックスカフェ』では売り上げも保護犬たちの生活を支える資金になっているとのことなので、犬との暮らしの予行演習をしたい、犬のことを知りたいという方も気負わずに入店できます。
動物と触れ合えるカフェは癒される場所ですが、『キドックスカフェ』では辛い過去を乗り越えて一生懸命生きている保護犬や、保護犬たちの幸せのために邁進するスタッフさんたちから、「自分も頑張ろう!」という前向きなパワーももらえます。気になった方は、是非足を運んでみてくださいね。