愛犬が吐いた!?病院へ行くべき嘔吐と自宅でできる対処法は?
愛犬が突然吐き出したらすごく心配になりますよね。
こんな時、できたらすぐに病院へ連れて行ってあげたいものですが、土日や祝日、病院の定休日に吐いたら!?
ちょっと高いけれど、いや、かなり高いかもだけれど救急病院へ行くべき?
それとも家でしばらく様子をみていて大丈夫?
しばらく様子を見て大丈夫かどうか、その見極め方について、多様な嘔吐歴のある愛犬や愛猫たちと暮らした経験と獣医師としての経験から解説していきます。
しばらく様子をみてみる嘔吐~状況に応じて病院へ行こう~
吐いた後も元気がある、吐いた後も食欲がある、吐いた後に少しずつ元気や食欲が回復している、連続して何度も吐いていない、といった場合は様子をみることもできます。
犬によくみられるしばらく様子をみる嘔吐例をこれから3つ挙げてみましょう。
吐く直前まで元気で、吐いた後はケロッとしている
愛犬が食後すぐから1時間程度の間に吐いていて、吐いたらすっきりとした顔をして元気がある場合。
吐いた物を食べたり、吐いた分のご飯を食べたがったりするようであれば、フードの一気食いやお水の一気飲みによる一時的な嘔吐の可能性が大です。
続けて吐かないか、お水やフードをしばらくあげずに様子をみてみましょう。
■我が家の体験談■
我が家の愛犬は食後にミルクを飲み過ぎた時、ハウスに入って伏せをした衝撃でケフッと少量ミルクを吐き戻すことがあります。
これは完璧飲み過ぎ…与えすぎですね。
ちなみに、乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)の犬にはミルクは厳禁。
愛犬の中で1頭だけ乳糖不耐症の子がいて、初めてミルクで飲ませた直後から数時間下痢が続き、以後ミルクは与えず、食後はヨーグルトとなりました。
白い泡状の胃液だけを吐いたけど、その後はそれなりに元気がある
朝の食事前や寝起きに白い泡状の胃液や、少し黄色がかった胃液を少量だけ吐いた場合は空腹時嘔吐、いわゆる胆汁嘔吐症候群(たんじゅうおうとしょうこうぐん)と呼ばれるものかもしれません。
これは、食事回数が日に1~2回の成犬や食事回数が日に2~3回の幼い子犬や高齢犬にみられます。
予防法はとても単純で、1日の食事回数を1~2回増やしてあげること。
但し、回数は増やしても、1日に与える食事量は適正なカロリー範囲内に抑えるよう注意しましょう。これを守らないと肥満街道まっしぐらです。
空腹時嘔吐だからといって、嘔吐直後から普段通りにフードやお水を与えると嘔吐の連鎖が起こることがあるため、後に紹介する自宅でできる対処法を実践してみてください。
車酔い・乗り物酔いによる嘔吐
犬にも車酔い・乗り物酔いがあるのをご存知でしょうか?
車や他の乗り物に乗るのが好きかどうかには関係なく、車酔いしやすい子・しにくい子がいます。
車の乗るのが大好きなのに、乗って30分もしないうちに吐く子もいれば、車が大嫌いなのに、何時間乗っても吐かない子も…。
原因がはっきり車酔いとわかっていて熱中症の疑いもなければ、嘔吐後は後に紹介する自宅でできる対処法を出先でも実践してあげてみてください。
ただし、車酔いの症状が激しく嘔吐が何度も何度も繰り返すようであったり、熱中症の疑いがあったりする時は動物病院で診てもらいましょう。
自宅でできる対処法
胃を休ませるための絶食と絶水
どのような原因であれ、嘔吐直後に食べ物を欲しがっていても、少なくとも1~2時間はお水やフードをあげないようにしましょう。
吐き気がありそうな様子
・口をくちゃくちゃさせる
・口の周りを頻繁に舐める
・床や周囲のものをぺろぺろ舐める
などがあれば、それが治まるまでお水や食事は控えた方が安全です。
吐き気が無くなったようであれば、ひと肌程度のお水を少量与え、吐き気や嘔吐がでないか様子をみて、ないようなら15分程おいてもう少し与えてみましょう。
吐き気や嘔吐の状態がなければ、フードを少量ずつ頻回に与えていきます。
フードをお湯でふやかしたものや普段あげているウェットフードをお湯でのばしたもの、あるいは手作りのスープやお粥などを普段の1回量の1/4~1/5程度を与え、以後は同量を3~4時間後に。
その後は徐々に与える量を増やして、与える間隔を伸ばしていきます。
軽度の嘔吐であれば、1~2日、ふやかしたフードなどを普段より少なめに、そして頻回に与えていればその多くが改善していきます。
環境を整えてゆっくり休ませてあげる
嘔吐がある時は、体力を消耗し、多量の胃液を失ってしまうことから脱水しがちになり、栄養も摂取できないため体温も低下しがちです。
この対策として、お部屋を暖かく保ち、保湿をしてあげること。
冬場であれば20~25度前後、湿度は50~60%前後がお勧めです。
寒がりな子は暖かめに、暑がりな子は控えめに保温してあげましょう。
愛犬が自分で体温調節できるよう、ペットヒーターや湯たんぽなどをハウスに入れてあげるのも一つです。この時、低温やけどを起こさないよう、ペットヒーターであればハウスの下半分くらいの面積に置くようにしましょう。
病気の時はつい心配で眠っている愛犬をかまいがちになることがありますが、愛犬が寝付いたら起きるまではそっとしておくことも大切です。
健やかな寝息をしているか、ハウスで吐いていないか、などはチェックしておきましょう。
緊急性が高い嘔吐
次のような場合は、救急対応をしている動物病院を探して連れて行くようにしましょう。
こんな吐き方・症状がある時はすぐに病院へ
胃腸炎や膵炎、異物の誤食などから嘔吐が起こることもあれば、全身の感染症や急性の泌尿器疾患、急性緑内障といった胃腸とは別の原因から嘔吐が起こることもあります。
また、嘔吐が酷い場合は脱水を生じ痙攣を起こすことなどもあります。
このため、次のような症状が一つでもある時は命にかかわる可能性もあるため、すぐに病院へ行かれることをお勧めします。
・数時間にわたって何度も何度も吐く
・嘔吐だけでなく頻回の下痢もある
・尿の量が極端に少ない/でていない
・お腹にそっと触れた時、嫌がる/痛がる
・お腹が板のように硬くなっている
・お腹が膨れてくる
・吐こうとしているのに、ほとんど何もでてこない
・40°前後まで発熱している
・吐いた物に便のような匂いが混じっている
・目が酷く充血し、白目のところに血管が浮いて見えている
この他、異物や毒物を食べた、あるいは食べた疑いがある時は、異物や毒物の残りないし画像も持って大至急動物病院へ。
生後数か月の子犬(特に小型犬種)では、嘔吐によってご飯が食べられない状態が続くと低血糖や脱水、低体温に陥ってしまうことがあります。
病院へ行くときは温かくしながら連れていくようにしましょう。
吐き気がある時に使えるかもしれない経穴(ツボ)をご紹介
吐き気がある時に使い勝手の良い経穴(ツボ)は胃に関係する足三里穴(あしさんり-けつ)があります。
古来、「吐腹は足三里に留む(とどむ)」とあり、足三里は吐き気をはじめとする胃腸症状に効果があると言われてきました。
犬の場合は、足が4本あるため、足三里は後三里(ごさんり)とも呼ばれています。
足三里穴の見つけ方
後足の外側にあります。
後足の前面(頭側)を人差し指で足首からさすりあげていくと骨のでっぱりに触れます。
そのでっぱりに触れた指を少し外側にゆっくりずらすとクボミが、ついで筋肉の盛り上がりに触れます。
最初に触れたクボミが足三里穴です。
吐き気がある時、この部位を指圧したりお灸したりしますが、お灸が難しい時は熱すぎない蒸しタオルで5分程温めてあげるのもお勧めです。
■赤いシールを貼っている部分が足三里穴です。
車酔い・乗り物酔いに効くかもしれない経穴(ツボ)は耳にある!
2016年に鹿児島大学が車酔い・乗り物酔いに対する鍼治療について報告しています。11頭の様々な年齢・犬種の犬が、この治療により乗り物酔いによる嘔吐を予防できていました。
この時に使われた経穴(ツボ)は耳尖穴(じせん-けつ)と呼ばれています。
耳尖穴は耳介の尖端にある経穴(ツボ)で、耳介の血管の上に1~3か所あります。
酔い止めの方法は、乗り物に乗る30分以上前にセイリンの円皮鍼(1.5mm)を耳尖穴に貼り、乗り物から乗ったら剥がすというものでした。
円皮鍼とは直径1.5㎝程度のシールの中央に、とても細く短い鍼が付いているもので、通常の鍼灸治療だけでなく、美容鍼灸やスポーツ鍼灸など分野でも使用されています。
耳尖穴は血管の上にあるので、毛が密集している子ではわかりにくいかもしれません。
その場合は耳介の内側あるいは外側から懐中電灯を当ててみてください。耳介の血管が浮かび上がってわかりやすくなります。
嘔吐や吐き気がある時、やさしく揉んであげると良いでしょう。
円皮鍼は医療器具なので、車酔い・乗り物酔いに試してみたい方は動物病院にご相談してみてください。
まとめ
吐き気や嘔吐は続くと辛いだけでなく体力も水分・ミネラルもどんどん失われていきます。
中々治まらない時は、動物病院で診てもらうのが一番の早道ですが、開いている動物病院が無い場合で、症状が軽いようであれば今回の方法を試してみるのも良いかもしれません。
ちょうど、この文章を書いている時、我が家の愛犬が嘔吐をしてしまいました。
「原稿の呪い?言霊??」と思いつつ、自宅でできる対処法を実践。
幸い、症状は悪化することなく次の日には回復しましたよ。