猫の分離不安の症状・原因は?飼い主ができる愛猫のメンタルケア
自由奔放に見える猫も、人間と同じように心が疲れてしまうときがあります。
とくに飼い主さんが大好きな子や寂しがり屋の性格をしている子は、孤独に強いストレスを感じることがあります。
なかでも、お留守番が多い猫が患うリスクが高い心の疾患が「分離不安」です。
今回は、猫の分離不安の原因や症状についてご紹介します。
愛猫のメンタルケアのために飼い主さんができることを知り、お互いに身も心も健やかなペットライフを送りましょう。
「分離不安」って何?
分離不安とは、ペットが飼い主や同居猫と物理的に離れることで極度の不安を感じ、精神的に不安定になったり問題行動を起こしたりする症状です。
飼い主との結びつきが強い犬の分離不安が有名ですが、猫も同じ症状を引き起こすことがあります。
すべての猫が寂しいと分離不安を起こすわけではなく、もともとの性格や生活スタイル、飼い主さんとの関係性などさまざまな要因が合わさり症状が現れます。
猫の分離不安の症状
破壊行動
猫の分離不安の症状として現れやすいのが破壊行動です。
必要以上の力でおもちゃを振り回したり、家具や壁を傷つけたりします。寂しさや不安から生じるストレスを何かにぶつけることで発散しようとしている状態です。
気を紛らわせるために家中を激しく走り回る行動も見受けられます。
誤飲
分離不安では健康や生命に関わる問題行動が起こることもあります。そのひとつが誤飲です。小さなおもちゃを誤飲したり、糸のほつれからタオルの一部を飲み込んでしまったりすることがあります。
小さな物であれば便と一緒に出てくる場合もありますが、飲み込んだものによっては腸閉塞の原因になったり、開腹手術が必要になったりすることもあるでしょう。
大声で鳴く
普段は物静かな性格をしている猫でも、分離不安の症状が出ると大きな声で鳴くことがあります。
「どこか痛いのかな?」と病院で診察を受けても異常は見当たらず、頭を悩ませてしまうことも少なくありません。
当人が大きなストレスを感じるだけではなく、鳴き声によって飼い主さんがリラックスできなくなったりご近所トラブルに発展したりする可能性もあるでしょう。
過剰なグルーミング
猫はグルーミングをして自分で体を綺麗にする生き物ですが、精神的に不安定になるとグルーミングの回数が過剰になる傾向にあります。
同じ場所を舐め続けることで、皮膚が擦り切れてしまったり脱毛の症状が現れたりすることもあります。
グルーミングをすることで心を落ち着かせようとした結果、新たなトラブルの原因になってしまうのです。
粗相をする
猫は犬と比べ、トイレの失敗が少ない生き物です。しかし分離不安を発症すると、今まで正しくトイレができていた子でも思わぬ場所で排尿・排便をするケースが見受けられます。
トイレを綺麗にしても粗相が続くと、飼い主さんは頭を抱えてしまうでしょう。猫のおしっこやウンチは犬よりも臭いがキツいため、飼い主さんも悪臭によるストレスを感じてしまいます。
分離不安症になりやすい猫の特徴
甘えん坊で飼い主さんが大好き
生まれつき甘えん坊な性格で飼い主さんのことが大好きなタイプの猫は、分離不安症になりやすい傾向にあります。孤独が苦手で、飼い主さんのそばに寄り添うことで大きな安心感を得られるのです。
よく懐いてくれるので可愛らしくはありますが、飼い主と離れることで大きなストレスを感じやすく心が不安定になりやすいでしょう。
もともと留守番に慣れていない
日常的に家に誰かがいる状態で過ごしており、一匹でのお留守番に慣れていない猫は分離不安症になりやすいといわれています。
自分以外誰もいない空間に慣れておらず、物音がしない家にいると言いようのない不安や孤独感に襲われてしまいます。
一匹で気を紛らわせるのが苦手で、おもちゃやおやつを用意してもらっても不安が勝ってしまうのです。
日常的に濃密なスキンシップを受けている
飼い主さんから濃密なスキンシップを受けているのが当たり前の猫は、誰からも触れられない時間を長く過ごすと心が不安定になりやすい傾向にあります。
誰かと触れ合っているという感覚を自分に与えるために、過剰にグルーミングをしてしまう子もいるでしょう。
飼い主さんに触れながら眠るのが日常になっている子は、一匹で眠ることが困難になるケースもあります。
病気がち・高齢猫
病気がちの猫や高齢猫は、体の痛みや不調、老化による変化や違和感に敏感です。
言葉を理解できない猫にとって、体が思い通りに動かなくなるストレスは想像に難くありません。
体調不良から心細さや不安を抱き、飼い主さんを心の拠り所にする子もいます。
孤独は不安を増長させ、問題行動の引き金になるのです。
猫が分離不安を起こす原因
大きな環境の変化
猫の分離不安の大きな原因となるのが、環境の変化です。今までのライフスタイルからがらりと変わると強いストレスを感じ、精神的に不安定になりやすい傾向にあります。
なかでも引っ越しは代表的で、慣れ親しんだ間取りや匂いがなくなることで不安を抱き、ネガティブな感情に支配されてしまう子は少なくありません。
生活環境のストレス
普段から過ごしている生活環境にストレスを感じている子は分離不安になりやすい傾向にあります。
例えば窓から道路が近い家は、車の騒音に悩まされてしまいます。人間にとっては些細な音でも、何倍もの聴力を持つ猫にとっては大きなストレスになるでしょう。
家の中に逃げ場が用意されていないと、ストレスが限界を超えてしまいます。
長時間の留守番
猫は比較的孤独に強い動物ですが、人間と過ごすことが当たり前になっている子にとって長時間の留守番はつらいものです。
飼い主さんがいつ帰ってくるかわからない不安な時間を過ごしていると、孤独に心が蝕まれて不安定な状態になってしまいます。
多頭飼育
物心がついたときから多頭飼育に慣れている猫では問題ありませんが、一匹で生活することに慣れている猫にとって「新入り」の存在は大きなストレスになります。
猫は縄張り意識が強いため、自分以外の猫が同じ空間にいるだけで精神的に不安定になる原因になるでしょう。
もちろんお互いの相性次第ですが、仲がよくない相手と同じ屋根の下で過ごさなくてはいけないのはつらいものです。
同居するペットとの別れ
ペットも人間と同じように、同居する相方を亡くすとペットロス(相方ロス)になる場合があります。
何をするのにも一緒だったパートナーがいなくなってしまい、突然訪れた孤独に心がかき乱されてしまうでしょう。
強烈な寂しさを紛らわせるために問題行動を起こしてしまうのも無理はありません。
愛猫が分離不安になってしまったら?
生活必需品を複数用意する
もしも愛猫が分離不安になってしまったら、生活必需品を複数個ずつ用意してあげましょう。
ごはん用のお皿やトイレ、水飲み場などを家の中にいくつも用意してあげることで、そのときの気分に応じた欲求を発散しやすくなります。
安心できるスペースを確保する
家の中に、猫が安心してリラックスできるスペースを設けましょう。
日当たりのよい場所や静かで涼しい場所など、複数ヵ所用意してあげるのが望ましいです。
信頼できる人との落ち着いた時間を確保する
心が不安定なときに必要なのは、信頼できる人との安心する時間です。
飼い主さんや家族と穏やかに過ごせる時間を設け、メンタルを癒してあげましょう。
猫が安心して眠れるように、寝室を一緒にしてあげるのもおすすめです。
気を紛らわせられる環境を作る
寂しさや不安をいつでも紛らわせるように、キャットタワーやおもちゃなどストレス発散アイテムを導入しましょう。
お気に入りのおやつを入れて遊べる知的玩具は、気を紛らわせやすくおすすめです。
匂い面でのケアをする
人間にとってはよい匂いでも、猫にとってはストレスの原因になることがあります。家の中で香り系のアイテムを使っている場合は無臭のものに変えましょう。
出かける際の香水もドアの外で使用するなど、猫の五感に配慮した環境づくりをしてあげてくださいね。
動物病院で医療的なケアをする
分離不安は、動物病院で医学的なケアをしてもらえます。行動学的なアプローチや投薬により、猫のメンタルを少しずつ安定させる治療が行われます。
環境を変えても猫の状態に変化が見られない場合は、獣医師に相談してみましょう。
過剰なスキンシップは控える
飼い主さんとの定期的な触れ合いは精神安定のために必要ですが、過剰なスキンシップは猫の精神的自立を妨げてしまいます。
四六時中飼い主さんに寄り添っているような猫の場合は、心を鬼にしてスキンシップの回数を少しずつ減らしてみましょう。
飼い主さんが分離不安を予防するためにできること
環境は少しずつ変化させる
分離不安を予防するためには、環境の変化を緩やかにする必要があります。
部屋の模様替えをする際も1日ですべて終わらせるのではなく、数日から数週間の期間をかけて少しずつ変えていきましょう。
日々の変化が少ないほど、猫へのストレスも緩和されます。
引っ越し時は前の家の要素を多く残す
引っ越しをする際は、可能な限り前の家の要素を多く残してください。
例えばごはんエリアとトイレエリアの距離感を同じにしたり、前の家で使っていたタオルやおもちゃをベッドエリアに置いたりなどの配慮が挙げられます。
完全に再現するのは難しいからこそ、慣れ親しんだ空間を彷彿とさせる環境を作って安心感を与えてあげましょう。
2匹目以降のお迎えは慎重に
将来的に多頭飼育を考えている人は、2匹目のお迎えは慎重に進めましょう。
いきなりお迎えをするのではなく、トライアル期間を設けることをおすすめします。
どんなに穏やかな子でも、自分以外の猫を目の前にすると突然攻撃的になる可能性があります。
「うちの子なら大丈夫」と過信せず、常に先住猫ファーストの行動を心がけてください。
定期的なスキンシップを心がける
過剰なスキンシップはNGですが、飼い主さんが家を空けることが多い場合は少しでも多く触れ合う時間を設けたいものです。
ただ一緒の時間を過ごすだけではなく、おもちゃで遊んであげたりゆっくり撫でてあげたりなど、愛猫が安心できるように寄り添ってあげましょう。
生活空間の変化に応じて猫の環境も変える
近所で工事が始まった、季節が変わったなどの環境の変化に応じて猫の生活環境にも手を加えてあげましょう。
例えば騒音が気になる場合は静かな場所にベッドを増やしたり、寒い季節にはペット用のホットカーペットを用意してあげたりなどのケアが挙げられます。
愛猫にとって常に家が一番心地よい空間になるように、柔軟に対応してあげてくださいね。
まとめ
今回は、猫の分離不安の原因や症状、飼い主さんができることなどをご紹介しました。
愛猫の心の変化に気付くためには、普段からのスキンシップが大切です。平常時の様子をよく観察できているからこそ、様子がおかしいときにすぐに気付けて早めの対処ができます。
愛猫の健康状態に問題がないと感じていても、言葉が通じない相手の心身のコンディションを完全に把握することは難しいものです。
日々しっかりと寄り添いながら、小さな変化も見逃さないようにコミュニケーションを取っていきましょう。