動物病院の仕事のハードな裏側【元動物看護師】が紹介します

犬を抱いている獣医師
ウサギ

動物病院に行ったことがある方は「うちの子、検査大丈夫かな?」「昼の休診時間は何しているの?」「混み合っているな」など様々な疑問やちょっとした不満を持っているかもしれません。

その背景には、動物病院の裏側、つまり飼い主から見えない部分で何をしているかをわからないことが理由の一つではないでしょうか?

そこで今回は、私が実際に勤務していた動物病院の普段の一日を動物看護師目線で紹介したいと思います。

病院によって業務の流れは少しずつ異なりますが、一例として参考にしていただければ幸いです。

動物病院の1日を追ってみよう

時計が置かれたテーブルと犬

全国の動物病院の平均的な従業員数は獣医師と看護師を含めて3~5人くらいですが、私が勤務していた動物物病院にはそれより多いスタッフが在籍していました。

その病院での様子について、飼い主から見える部分とそうでない部分の両面からできるだけ細かに説明していきます。

動物病院の裏側を知ると、獣医師や看護師の見方も変わってくるかもしれませんね。

今回の舞台となる動物病院の詳細は、以下の通りです。

・スタッフ:獣医師8人/看護師6人/トリマー2人
・診察時間:9~12時/昼休憩12~15時/15~20時(土曜・日曜は午後休診)
・診療以外のサービス:ペットホテル/トリミング

【午前の部】9:00~12:00

犬の診察をしている獣医師

1日の始まり

午前の診療開始時間は9時からですが、30分前には出勤していました。

待合室や受付、玄関、駐車場をチェックして回り、受け入れ体制を整えます。

掲示物がその時期に適した内容であるか、待合室が不快な臭いでないかなどは、飼い主がいない時間帯の方が気づきやすいです。

次に、その日に予定が決まっている手術や検査、ペットホテルやトリミングの利用について獣医師やトリマーに確認を取ります。

それらと並行して獣医師と共に行う入院患者のお世話が、朝の中で最も忙しい業務になります。内容は次のようなものです。

・体調管理・報告(尿や便・おう吐の有無、食欲、見た目の元気さなど)
・入院室の清掃
・食事の準備
・治療や検査
・退院予定であればその準備と入院費用の計算

診療開始

9時になると診療が始まります。

朝一は手術や検査予定のペットが来院するほか、前日から体調が優れずに不安を抱えたまま一夜を過ごした飼い主も訪れます。

できる限り早く診察に入ってもらうためにも、受付であまり時間を取るわけにはいきません。そのため、心配するあまり多くのことを話したくなる飼い主もいますが、詳しいことは獣医師に直接伝えるように伝えます。

決して雑な対応をしているわけではないため、気を悪くしないでくださいね。

受付は診察を効率よく回す重要な役割

動物病院を訪れた飼い主に受付をしてもらいますが、先程お伝えした通り要点を絞って話を伺います。

中には緊急性のある疾患や状態が考えられるケースもあり、その際は優先的に診察を行わなければいけません。

最近では予約制の動物病院も増えてきましたが、受付後の待ち時間を減らすためだけでなく、緊急時に対応できる仕組みづくりの一環であるとも言えます。

基本的には受付順の診察になりますが、獣医師が複数人いる場合は診察可能なペットを優先的に案内するのも受付の大切な役割です。

診察室とバックヤードそれぞれの動き

午前の診療は慌ただしくなりがちです。

以前の勤務先では獣医師と看護師が複数人いたため、短時間で終わる簡単な検査や治療の場合は一度預かり、バックヤードで行っていました。

バックヤードが見えないために、わが子が心配になる飼い主もいるかもしれませんが、どうぞご安心ください!

診察室を空けて効率よく診療を進める意味もありますが、飼い主の前だと甘えたり強気になったりするペットもいます。そういった意味でもバックヤードで行った方がよいケースもあるのです。

目の前で治療してほしい飼い主の気持ちももちろん理解できますが、病院が苦手な子の場合は、早く終わらせて帰りたいはずです。ペット目線で見ても、悪いことではないかもしれません。

トリミング・ペットホテルの受付

トリマーに毛をカットしてもらう犬

トリミングは午前に限った業務ではありませんが、一日にカットできる頭数が限られるので、午前中に予約が入っていることがほとんどです。

トリミングやペットホテルを専門で行っているところもありますが、最近は動物病院の中に併設していることも多いです。

その理由として、生き物である以上、預かり中にもしもの事は常に考えられることが挙げられます。病院なら適切な対応をしてもらえる安心感がありますよね。

午前の部・受付終了間際の日常

いよいよ午前の診察が終わりに近づくと、受付時間ギリギリに駆け込む飼い主が多く見られます。

動物病院あるあるかもしれません。

ただ昼の休診中にやらなければいけない予定も考えると、午後の診察に響くため「もうちょっと早く来てくださいね」が本音です!

【昼休み】12:00~15:00

朝食が置かれたベッドで休む猫

休憩は大切ですが……

体力と集中力を切らさないためにも休憩は大切です。

医療におけるミスは取り返しのつかない事に繋がりかねないため、休憩の重要性はよく認識しています。

とはいえ、動物病院では決まった時間に充分な休憩を取ることが難しいケースが多くあります。

仕事相手は病気やケガで苦しむペットです。休憩を返上してでもこの昼の休診時間帯にしかできないことをしなければいけません。

獣医師も看護師も大忙し

休診時間がゆっくり流れることは本当に稀で、その日に入った緊急の手術や検査に加え、以前から予定されていた手術もあり慌ただしく過ぎます。

入院患者のお世話や業者対応、薬剤や療法食の在庫管理などは、この時間に行うことがほとんどです。

手術・検査の実施

検査用の試験管と犬

手術自体は1~2時間程度で終わることが多いですが、術前の準備や麻酔の導入、術後の様子を見ることを考えればそれ以上の時間が必要です。

手術を診察時間中に行うのは、よほど大きな病院でなければ難しいでしょう。

検査についても、血液検査からレントゲン検査、超音波検査、その他症状に応じて必要な検査をすべて行う場合、診察と並行して行うのは効率がよいとは言えません。

大掛かりな検査は、ペットに負担やストレスを与えることもあります。休み休み検査をする必要があり、それも診察時間に行うのが難しい理由です。

往診

往診はそれほど多くありませんが、依頼や必要性があれば昼の休診時間に行くことがあります。

獣医師と看護師の2人で向かうため、診察時間中に人員が抜けてしまうと来院する患者にしわ寄せが来てしまうためです。

在庫管理と業者対応

薬剤や療法食は、業者が昼の休診時間に持ってきます。

業者も新商品の案内などの営業があるため、商品を運び入れて「はい終わり」ではありません。

忙しいときは丁重に断ることもありますが、お世話になっている者同士、良い関係性を作ることは大切です。

午後へ向けての清掃

医療現場において清潔感は大切です。

診療時間中だけでなく、午前・午後の診療開始前、診療後の清掃は必須です。

【午後の部】15:00~20:00

動物病院の待合室で過ごす犬と女性

午後の診療開始

午後の診療開始とともに来院される患者数は、午前と比べて少なめです。

そのため15~17時の時間帯は、看護師は事務処理をする、獣医師は受け持つ患者の治療方針を考えるなど、落ち着いて過ごせる貴重な時間です。

事務処理(DM作成・レセプト作成など)

犬や猫は定期的なワクチン接種が必要なため、飼い主に時期が迫っていることを知らせるためにDMを作成し、送付します。

また春先には狂犬病ワクチンやフィラリア・ノミ・ダニ予防が始まるため、この時期は事務処理に多くの時間を費やすことになるでしょう。

その他、「レセプト」と呼ばれるペット保険会社への請求書も作成します。

手術や検査の結果説明

昼の休診時間中に行った手術や検査の結果説明を行います。

飼い主にはしっかり理解してもらわないといけないため、比較的ゆっくり話せる午後の時間帯に来院してもらうことが多いです。

結果次第でそのまま入院になる子もいるので、このあたりから忙しくなり始めます。

入院患者のお世話

既に入院している患者のお世話の他、新しく入院となった子の追加検査や治療を行います。

午後の診療と同時並行なので、獣医師・看護師共に気合の入れどころです。

カルテの共有

一日の終りが近づくと、その日にあった診療の中で共有すべき内容を話し合います。

継続治療が必要な患者や入院している患者について今後の方針を共有し意見の交換を行うことは、質のよい治療のため非常に重要です。

受付終了間際の混雑

仕事が終わってから来院する方もいるため、18~20時は混み合うことが多いです。

できるだけ早く帰れるようにスタッフそれぞれが連携して、次の日の予定とそれに伴う必要な準備、レジ精算や清掃を行います。

【当直の部】土曜・日曜12:30~20:00

木製の時計とカレンダー

動物病院によって、休診日を設けているところもあれば夜間診療を行うところもあります。

以前の勤務先には休診日はなく、土曜・日曜の午後を休診としていました。

急患に備える

土曜・日曜の午後は休診でしたが、当直として獣医師と看護師が待機していました。

その役割は、入院患者のお世話と急患対応です。

あくまで急患としての対応になるため、事前に連絡をもらった上で診察に来院してもらうか否かを決めることになります。

少人数での対応

当直中は大抵の場合獣医師と看護師の2人体制なため、多くのことはできません。

そのため自分のかかりつけの動物病院がどのような対応をしているのか、事前に確認しておいた方がよいでしょう。

場合によっては緊急時の動物病院を探す必要があります。

まとめ

診察を受ける犬と飼い主

今回は、元動物看護師として動物病院の一日を紹介しました。

どのような仕事でもその裏側を覗いてみると「結構大変なんだな」と思いますよね。

この記事を読んで、何かしら気づきを得てもらえたなら幸いです。