猫の育児放棄は過酷な自然界の影響だった!?育児放棄をする理由とは
母猫が子猫に母乳をあげている姿を見ると、ほっこりしますよね。
ただ、すべての母猫が子猫のお世話をするわけではありません。
出産後に母猫が育児放棄をして、野放しにされる子猫もいます。
母猫にとってやむを得ない事情があり、育児放棄に繋がっていると考えられます。
母猫と子猫を助けるためにも、猫が育児放棄をする理由をしっかり把握しておきましょう。
猫の育児放棄の見分け方
猫の育児放棄とは、子猫が生きていくために必要な育児、つまりお世話を放棄することです。
以下のような行動がみられたら育児放棄といえるでしょう。
・授乳をしない
・排せつを促さない
・自分の体温で温めようとしない
・子猫が動いても自分のところに連れ戻そうとしない
など
猫の育児放棄の原因は?
猫の育児放棄の原因は何なのでしょうか?
暮らしている環境によって原因は異なりますが、いずれの場合もやむを得ない理由があったと考えられます。
自然界の過酷な環境
外で暮らす野良猫は、以下のような過酷な状況で生活をしています。
・食事が手に入るかどうかわからない
・寒さや暑さ、雨をしのぐ場所を確保しなくてはいけない
・車との衝突など事故のリスクがある
さらに母猫は出産を終えて体力が落ちた中で、子育てをしなければいけません。
猫は確実に子孫を残すため、一度に2〜6匹程度出産する動物です。
子猫たちに授乳することになりますが、乳首の場所によってはミルクがたくさん出たりほとんど出なかったりします。そのため、体が弱い子はミルクがよく出る乳首にたどり着けず、さらに弱ってしまいます。
弱っている子猫を育てた結果亡くしてしまうことは、母猫にとって「命を削りながら育てたのに子孫を残せなかった」ということです。そのダメージは大きいため、自然界では体の弱い子が育児放棄の対象になるのです。
つまり、この場合の育児放棄は「種を残す」という本能からの行動だったといえます。
室内猫の場合でも体が弱い子は育児放棄の対象になりやすいですが、野良猫のほうが育児放棄をする可能性は高いでしょう。
初めての出産で育児方法がわからない
猫は生後6ヶ月頃から発情期を迎えるため、子猫のうちに母親になることもあります。
子猫でなくても、初めての出産は未知のものです。育て方がわからず、育児放棄に繋がる場合があります。
人のニオイがついてしまった
猫はニオイに敏感なので、生まれた時の子猫のニオイを覚えています。
そのため、人が子猫に触ることでニオイが移ってしまうと、母猫が自分の子どもではないと判断してしまうことがあります。
子猫に何かトラブルがない限り、人の手助けは不要です。手を出さずそっとしておきましょう。
出産後すぐに妊娠した
母猫は、子猫が離乳したらすぐに妊娠できる状態になります。
妊娠すると自分の体力を維持しようとするため、いま育てている子猫の育児を放棄することがあります。
子猫が育児放棄された場合の対策は?
育児放棄の原因によっては、元となる問題を改善することで育児を再開する可能性もあります。
それでも育児を再開する様子がない場合は、人の手助けが必要です。
生後3週間までが子猫の命が落としやすい時期です。注意して観察しましょう。
育児放棄の原因を探り改善する
子猫は母猫に育児をしてもらうことが一番です。
まずは母猫を見守り、問題点を見つけましょう。改善できれば、子猫をお世話するようになるかもしれません。
例えば、暮らしている場所が賑やかすぎるなど環境が悪いことが原因で育児放棄している場合があります。
その場合は、母猫が安心して育児できるように静かな環境を作ってみてください。
窓やカーテンを閉める、テレビや音楽を消す、大きな声を出さないなど、一つずつ試してみましょう。
その上で、猫が好きそうなダンボールで部屋を作り、温かい毛布を用意してあげるとよいですよ。
環境が整ったら、子猫の元に行くよう誘導してみましょう。
子猫にミルクを与える
子猫は生まれた直後に飲む「初乳」で栄養と免疫力をつけ、生後6週間くらいの離乳期まで母猫のミルクを飲んで成長します。
原因と思われる問題点を改善しても育児を再開しない場合は、人が手伝ってあげるしかありません。
人がミルクを与える場合は、子猫用の哺乳瓶や針のついていない注射器、スポイトなどを使います。
ミルクを与える目安は、生後1週間頃までは2時間おき、生後2週間頃までは3時間おき、生後3週間頃までは4〜5時間おきです。
生後間もない頃は一度に飲む量が少ないため、頻度が多くなります。
数時間でもミルクを飲めないと命にかかわるため、時間の間隔を守ることが大切です。
子猫の排せつのお手伝い
生後間もない子猫は自力で排せつできません。
本来ならば、母猫が子猫の下腹部を舌で優しく舐めることで排せつを促します。
人が手伝う場合は、ミルクを与える前後にガーゼやティッシュなどやわらかいものを使って、お尻をポンポンと叩き排せつを促しましょう。
ただし、お尻を強くこするのはよくありません。デリケートな皮膚を傷つけてしまうこともあるため、気をつけましょう。
もし一週間以上便が出ないようであれば、動物病院へ連れて行ってくださいね。
子猫の体温管理をする
生まれたばかりの子猫は皮下脂肪がないため、体温を維持することができません。
育児放棄されたままだと、低体温になり死んでしまいます。
生後1〜2週間までの快適な温度は32〜34℃、それ以降は24〜27℃です。
本来ならば、子猫は母猫に抱かれたり兄妹猫同士で猫団子になったりして温まります。
人が手伝う場合は、ふわふわの暖かい毛布や湯たんぽなどで温かくして快適な温度を保ちましょう。
母猫の体温(約37.5度〜38.5度)以上の高温に長時間あたると低温やけどをする可能性があるため、注意してくださいね。
【保護猫団体】多頭飼育崩壊で育児放棄された子猫の現実
私が活動している保護猫団体で実際にあった「多頭飼育崩壊に陥ってしまったお宅」の話をしたいと思います。
「多頭飼育崩壊」とは、飼い主が管理できなくなるほどペットが増えてしまい、経済的にも飼育ができなくなる状況のことです。
そのお宅では、野良猫にごはんを与えたのがきっかけで猫が集まるようになりましたが、不妊・去勢手術は行っていませんでした。
その結果、猫はどんどん繁殖して増えていきました。
与えていた食事量では足りず、母猫が飢餓状態になり子猫を育てるどころではありません。自然界でなくても、過酷な環境であれば母猫は自分を守るために育児放棄をするのです。
むしろ弱ってしまった子猫を食べて、栄養補給にしてしまうこともあります。
行政から依頼を受けて現場に駆けつけた時には、衰弱死した猫や食べられてしまっている猫もいました。
こうした母猫と子猫の悲劇を繰り返さないためにも、不妊・去勢手術をうけることが重要です。
もし、いま同じように悩んでいるのであれば、まずは自治体や近くの保護猫施設に相談しましょう。
まとめ
育児放棄と聞くと、母猫が悪いようなイメージを持ってしまうかもしれません。
ですが、自然界における厳しい環境で生き残るため、そして子孫を残すためにはやむを得ないときもあります。
状況を把握した上で、環境を整えるなどの手助けしてあげましょう。