犬の流涙症の対処法~獣医師からのアドバイス~

涙焼けの犬

涙が目から溢れて流れる状態を『流涙症(りゅうるいしょう)』といいます。

愛犬が流涙症になってしまった時、インターネット上の情報はとてもたくさんあって、どんな対処をすれば良いのか悩む場合が多いのではないでしょうか。

今回、急性・慢性を問わず、流涙症になってしまった愛犬のために取ってほしいお勧め対策と自宅でできる対処法をご紹介します。

愛犬が流涙症になった時のお勧めの対策

まずは動物病院を受診しましょう

診察を受ける犬

犬は鼻がよく効くといいますが、日常生活の中では匂いを嗅ぐより先に目で色々確認し、それからクンクンと鼻で匂いチェックをしています。

目は犬にとっても日常生活に必要な器官なのです。

涙が外へ溢れるということは、その目に何らかの刺激や異常があるということ。

多くの病気は早期発見・早期治療によって治療期間も短くなる傾向があります。

何が原因で涙が溢れているのか、しっかり動物病院で診てもらい、必要に応じた検査や原因に応じた治療を受けましょう。

必要に応じて眼科専門医へ

流涙症に悩む飼い主さんの中には、一度、動物病院で「もう仕方がない」、「そういう犬種だから」と言われて、治療そのものをあきらめ「サプリメントや食事でなんとかしてあげたい」と、考えてしまう方もおられます。

でも、全ての獣医師が眼科疾患やその検査に詳しいというわけではなく、全ての動物病院が眼科用の検査器具を持っているわけでもありません。

また、特殊な手術器具や手技を必要とすることがある眼科手術に対応できるわけではありません。

現在では、獣医療でも眼科専門の獣医師が存在します。

流涙症でお悩みの場合には、眼科に詳しい動物病院で診て頂くのも一つの選択肢として考慮してみてください。

トリミングサロンで被毛の流れをチェックしてもらうのも◎

長毛犬種、中でも短頭犬種はまつ毛やまぶたに問題がない場合でも、目の周りの被毛が目の表面を刺激して涙を流したり、長いまつ毛を伝って外に涙が流れたりすることがあります。

こういった場合はこまめに顔周りの被毛をカットしたり、逆にもっと長く伸ばしたりと工夫する方法があるので、トリマーの方にご相談してみてください。

自宅でできる対処法

フード選び

ドッグフード

何らかの食物アレルギーがある場合や乳糖不耐症、グルテン不耐症といった食物不耐症がある場合、原因となる食物を食べた際にアレルギー症状や下痢だけでなく種々の身体の不調が生じてきます。

食べ物は身体に様々な影響を与えるものなので、日々のフード選びはとても大切です。

アレルギーなどがない場合でも、愛犬の年齢や体調にあった、添加物の少ない、良質な原材料で作られた栄養バランスの良いフードを選ぶようにしてあげましょう。

幾つもの良質なフード市販されていますが、どれが愛犬の体に合ったものかは試してみないとわかりません。

身体にあったフードであれば、愛犬の被毛や涙を含めた便や尿といった排泄物の状態が良い方向に改善していくことが多いものです。

2~4週間ほど同じフードを食べさせてみてください。

ただし、フードを急に替えるとお腹を壊すことがあるので、胃腸が丈夫でない愛犬の場合は1週間ほどかけて徐々にフードを切り替え、完全に切り替えてから2~4週間様子をみてあげましょう。

合っているフードであれば、抜け毛が減ったり、被毛の艶がよくなったり、各種排泄物の状態が良い方向に向かいはじめてきます。

フードも大事ですが、水もやはり身体には重要で必要不可欠なもの。

ドライフードを常食にしていると、食事中から得られる水分が少なめになるので、新鮮なお水をたっぷり飲めるようにもしてあげましょう。

フードの保存法に注意

ドライフードは、他のセミモイストフードやウェットフードに比べて長期保存に向いています。

しかし、開封後に常温で放置しておけば、フードも酸化・劣化してくるだけでなく、フードの中でダニやカビが増殖し、これが不調の原因となってくることも。

ドライフードは、開封後に愛犬が1か月以内に食べきれるようなサイズのものを購入するようにしましょう。

1週間分ずつくらいを小分けに密閉しておくのもお勧めです。フードの保存方法にも注意しましょう。

おやつにも注意

フードに気をつけるのであれば、忘れてはならないのがおやつです。

添加物は嗜好性・保存性を高めるためのものなので、おやつの中にも多く含まれていることがあります。

添加物があっても、開封後は密閉しての冷蔵保存が必要なものが大半を占めているので、保存方法に気をつける必要があります。

添加物をできるだけ避けたい場合は、無添加のおやつを選ぶか、オーブンなどを活用しておやつを手作りしてあげましょう。

我が家では人間がその日の食事に使う食材、例えば、リンゴやお芋、大根、アスパラガス、キャベツの芯、ブロッコリー、肉や魚、レバー、砂肝など、適当に切って160~180度で火が通るまでじっくり焼いたものやレンジでチンしたものをおやつに与えています。

豆好きな愛犬なので炒り豆だけでなく、納豆やお豆腐もおやつに。

犬によっては思わぬものが好物だったりするので、納豆やお豆腐もよければ試してみてください。

涙をこまめに拭く

涙の中に含まれる成分は太陽の光や酸素が原因で着色してしまいます。

涙に気づいた時はすぐ拭いてあげましょう。

犬猫の涙やけ用に販売されているシートもありますが、我が家ではアルコール無添加の赤ちゃんのお尻拭き用シート(ムーニーおしりふき)でそっと押さえるように拭いています。

涙に気づいたらすぐにシートが引き出せるだけでなく、費用的にも手軽で使い勝手が良いです。

拭く時の注意点はシートの端が目に触れないよう、目をつむらせてそっと押さえるように拭くこと。目やにが溜まる前に拭けば、ゴシゴシ擦る必要はありません。

目の周りのツボ刺激

涙を拭く時、目の様々な症状に対する特効穴と言われている睛明穴(せいめい-けつ)や四白穴(しはく-けつ)をついでに指圧してあげるのも◎。

睛明は目頭の少し鼻側の上の方に、四白は黒目の真下の少し下にあるクボミのところにあります。

犬の目のツボ
■睛明は目頭の少し鼻側の上、四白は黒目の真下の少し下にあるクボミ

これらのツボに指をあてて1・2・3と数を数えながらゆっくりと押し、そこで3秒キープし、1・2・3と数を数えながらゆっくり力を緩めます。

押す時より力を緩める時の方が大事です。

力加減は自分にする時よりも少なめで、愛犬が気持ちよさそうな程度に。

愛犬が嫌がらないなら、3~5回続けてあげてください。

目が赤くなっていないのであれば、蒸しタオルで目の周囲の血行を促進してあげるのもお勧めです。

厚手のハンドタオルを濡らして4つ折りにし、耐熱皿の上に置いてレンジで40秒~1分ほど加熱。ぬるければ10秒ずつ加熱してください。

自分の顔において気持ち良いくらいの温度になったら、愛犬の目の上にあててあげます。

目安は5分前後ですが、最初は短めの時間で慣れてもらうことから始めましょう。

折りたたんだタオルの内側は熱くなっているので火傷しないようにご注意ください。

住環境を清潔に

ハウスダストや環境中のダニに対するアレルギーがあってもなくても、こういったものは無い方が目には優しい環境になります。

特に愛犬たちは床に目が近いので、ホコリの影響を受けやすいので、こまめにお掃除してあげましょう。

また、空気清浄機を活用してみるのも一つです。

適度な運動も

目と運動には何の関連が?と思われるかもしれませんが、東洋医学では、目や涙は肝という臓府に関係しています。

そして、この肝はイライラしたりストレスが溜まったりするとダメージを受けてしまうのですが、溜まったストレスの発散には身体を動かすことが良いとされています。

実際に我が家の愛犬は、お留守番などでストレスがたまると、それを発散するかのように駆け回ったり、ボール遊びを何度もしたがったりします。

イライラ・ストレスが溜まらないよう、日々適度な運動をさせてあげ、「溜まってるかな?」と思った時は沢山運動させたり遊んであげることも目にとっては大切なことかもしれません。

肝に関連がある膈兪(かくゆ)や肝兪(かんゆ)といった背中にあるツボを指圧してあげるのもお勧めです。

膈兪は写真で指圧されている部分に、肝兪はそこから肉球1個分ほど下の赤丸の部分にあります。

犬のツボ位置
■膈兪(かくゆ)や肝兪(かんゆ)

まとめ

愛犬の流涙症が「うまれつきだから」、「犬種特有だから」と言われたとしても、実は治療できるものかもしれません。

もし、普通の動物病院でそういわれた時は、眼科に詳しい動物病院で診て頂くのも一つの選択肢として考慮してみてください。

万が一、治療できない流涙症であっても、犬それぞれに応じて専門家ならではの対策方法を教えてくれるかもしれません。

流涙症に対して日常生活でできることは、その多くが基本的なこと。

生活習慣病という言葉があるように、基本をきちんとすることこそ難しいのかもしれませんので、できることを無理のない範囲で試してみてください。