【元動物看護士が解説】猫の尿が出ないときの応急処置はある?猫の尿に関する疑問を解決!
猫の飼い主を悩ませる、尿の病気。
心配ですよね。
尿の疾患である下部尿路疾患(膀胱から尿道までの間におこる疾患)は、再発率が58%もあるというデータがあります。
さらに尿が出なくなった場合は緊急性を伴い、命を落とす危険もあります。
幸いにも飼い猫が今日まで尿にかかわる病気になったことがなくても、どのような症状、どのような様子に注意したらよいのかを知っておくことは、飼い主にとって大切なことです。
今回は、猫の尿に関わる病気を始め、尿がまったく出なくなったときの対応、再発予防のためにできることについてお伝えします。
猫がおしっこをする様子から知る怪しい兆候
尿に関わる病気は泌尿器疾患と呼ばれ、さまざまな原因と症状があります。
どのような疾患であっても、まずは飼い主が気づけなければ治療ができません。
以下のような猫からのサインは病気の可能性があるため、見逃さないように注意しましょう。
頻尿になる
頻尿とは、文字どおり頻繁に尿をすることです。
1日に尿をする回数は猫によって違うので、健康時のおおよその回数を把握しておきましょう。
たとえ尿が出ていなくても頻繁にトイレに入っている様子が見られれば、それは尿意をもよおしていることになります。頻尿として扱ってください。
尿量が少ない
日頃猫のトイレを掃除していれば、1回の尿量は何となくわかると思います。
頻繁にトイレに入っているようであれば、トイレから出た後すぐに尿量をチェックしてみてください。
明らかに少ないとわかれば、それは尿がうまく出せないか、残尿感があるのかもしれません。
尿がポタポタと垂れる
尿がポタポタと垂れる他に、トイレでない場所で尿をしている場合も同じく要注意です。
猫の意思とは関係なく尿が漏れてしまっている可能性があるからです。
神経系の病気の可能性もありますが、まずは結石や膀胱炎などの泌尿器疾患を疑ったほうがよいでしょう。
しきりに陰部を気にする
犬や猫は身体に痛みや痒み、違和感を覚えると、その箇所を舐めたり噛んだりします。
同じように、泌尿器疾患からくる尿意や腹部の痛みから、陰部を気にして頻繁に舐める様子が見られることがあります。
毛づくろいにしては様子がおかしいな?と感じるようであれば、それは病気のサインかもしれません。
排尿時に鳴く
猫が排尿中に鳴く場合、それは痛みによるものです。
普段の可愛らしい鳴き声とは違うため、すぐに気づくでしょう。
初めて聞いた方は驚くかもしれませんが、慌てず早めに動物病院に連れて行ってあげてください。
猫の尿に関する主な病気
泌尿器疾患の中でも特に症例の多いものについて解説します。
いずれも猫には比較的身近な病気のため、猫を飼っている人は簡単にでも理解しておくことをおすすめします。
特発性膀胱炎
膀胱炎は細菌や結石などが原因となり、膀胱内の粘膜に起こる炎症です。
中でも、はっきりとした原因がない場合に起こる膀胱炎を「特発性膀胱炎」といいます。
猫にはこの原因不明の膀胱炎が多く、再発も多く見られます。
放っておくと猫も辛いでしょうし、結石をつくる原因にもなるため、早めの治療が大切です。
尿石症(尿路結石)
尿石症(尿路結石ともいう)とは、腎臓から尿道までの尿が流れる経路の中に、石のような硬い結石と呼ばれるものができ、それにより頻尿や血尿、膀胱炎など様々な症状を引き起こすものをいいます。
この尿石症はどこに結石があるかによって呼び名が変わり、猫の場合の多くが「膀胱結石」と「尿道結石」です。
尿道結石では、尿道が結石により塞がれてしまうことがあり、尿が完全に出なくなると緊急を要します。
腎臓病
腎臓病は、腎臓の機能が正常に働かなくなる病気です。
老齢の猫は年齢とともに腎臓の機能が落ちるため、慢性腎不全の発生率が高くなります。
一方、何らかの原因により腎臓へのダメージが発生した場合に起こるのが急性腎不全で、その原因の一つが結石症です。
尿毒症
尿毒症は、本来腎臓の機能により体外に排出されるはずの老廃物や毒素が体内に残ってしまい、その結果様々な障害を引き起こす病気です。
治療をしなければ短期間で命を落とす危険があります。
慢性腎不全や急性腎不全はこの尿毒症を引き起こす原因になるため、飼い主は猫の異常をいち早く察知してあげることが大切です。
尿が出なくなる原因
泌尿器疾患は多様で複雑なため、何をどうしたらよいのかわかりにくいかもしれません。
そこで重要なポイントである「尿が出なくなる」ことに着目してみましょう。
尿が出ないのは、非常に危険な状態です。
尿が出ない原因は、主に2つあります。
尿の通り道が塞がれている
尿の通り道が塞がれるとは、そこに何かしらの「栓」がされている状態を指します。
栓となるものの中には、結石の他にも膀胱炎などによる剥がれ落ちた粘膜のかけらなどがあります。
また、尿の通り道が狭くなってしまうことも原因になり得ます。
結石により尿道が塞がってしまうのは、ほぼオス猫です。
オス猫の尿道はメス猫に比べて細く長く、結石が詰まりやすい構造になっているためです。
尿がつくられていない
尿が出ないときに考えられるもう一つの原因は、そもそも尿がつくられていないということです。
尿をつくる腎臓が機能していない、または尿は血液が濾過されてつくられるものであることから、血液そのものの流れが悪いなどの可能性が考えられます。
尿がまったく出ていないときの応急処置はあるのか?
尿がまったく出ていないとき、尿路が塞がっているか尿がつくられていないことが考えられます。
解決するためには、排尿させること、そして腎臓の機能を回復させることが必要です。
つまり、自宅でできることは残念ながらほぼありません。
ではどうすべきなのか、その方法について説明します。
至急動物病院へ!
繰り返しになりますが、尿がまったく出ていないのはとても危険な状態で、緊急性のあるものです。
尿は24時間の中で必ず出るものですが、トイレにその痕跡がない、どこかに粗相をしている様子もない、さらに元気がないとなれば、一刻も早く動物病院に連れて行ってあげましょう。
「かかりつけの動物病院が時間外だから」「気づいたのが夜中だから」と、しばらく様子を見ようと考えるのは危険です。
命にかかわる事態だと認識しましょう。
とはいえ、時間外は診てくれない動物病院もあります。
飼い主にできるのは、緊急事態に備え、夜間対応の病院など第二・第三の病院を事前に探しておくことです。
尿が出ていない時間や状況の把握をする
尿が出ない状態になってどのくらい時間が経過しているのか、おう吐や血尿が出たりしていないかなど、動物病院に到着するまでに情報を整理しておくことも大切です。
的確な情報は獣医師の迅速な診断に役立ち、猫の命を助けることにも繋がります。
下腹部を触らないように注意
尿がまったく出ていないとなると、膀胱は風船のようにパンパンに膨らんでいる可能性があります。
その風船が破裂してしまうと尿が体内に漏れ出し、非常に危険です。
猫も痛みがあるため、膀胱のある下腹部を触れられるのを嫌がるはずです。
圧がかかると破裂する危険もあるため、極力触らないように注意しましょう。
普段の生活で気をつけること
猫の泌尿器疾患は、普段の生活を見直すことで発症や再発のリスクを軽減できます。
見直すポイントをお伝えしますので、ぜひ実践してみてください。
トイレの回数と1回量
泌尿器疾患になると、頻繁にトイレを出入りする様子や、1回でする尿量の減少が見られます。
その変化を見逃さないためにも、正常時の回数や尿量を把握しておきましょう。
トイレの回数や量を計測するのに便利なトイレもあるので、活用するとよいですよ。
食事管理
結石や膀胱炎などの治療の一環として、動物病院から療法食を渡されることがあります。
再発を繰り返すような場合は、市販のフードではなく療法食のみを生涯続けなければいけなくなることもあります。食べてくれなかったり経済的に負担だったりして、飼い主としてはなかなか難しいかもしれません。
しかし、再発防止のためにミネラルバランスや尿のPH調整が調整されている、尿が出やすくなる効果が期待できるなど、市販のものにはない特別なフードです。
どうしても続けることが難しいときは、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
十分に水を飲める環境づくり
飲水量が少ないと排尿回数も減り、結石や膀胱炎を引き起こしやすくなります。
また、慢性腎不全の場合は頻繁に尿をするため、飲水量を確保できないと脱水になってしまいます。
猫によって飲み場や水の温度、新鮮さなどの好みが違うため、その子にあった水と飲みやすい環境をつくってあげてください。
肥満
肥満は万病の元です。
肥満になってから、病気になってから食事を変えることは、飼い主にとっても猫にとっても大変なものです。
ダイエット方法や適性体重の維持方法は、動物病院に相談してみてください。
負担なく続けられることが何より大切です。
まとめ
今回は結石や膀胱炎、腎不全といった、猫の泌尿器疾患についてお伝えしました。
再発が多い病気ではありますが、リスクを軽減する方法はあります。
日頃から食事や飲水、生活環境、そして尿のチェックをして、猫の健康を守る生活を心がけましょう。