【ペットショップ店員が解説】うさぎの巨大結腸症についてと、疑いのある子の見分け方
今回は、うさぎの巨大結腸症とその遺伝的リスクを持つ子の見た目の特徴について解説します。
巨大結腸症とは、うさぎ以外の動物や人間にもみられる遺伝型の腸の病気で、メガコロンとも呼ばれます。
日本ではまだまだ巨大結腸症についての知識が普及していないので、ぜひこの記事で巨大結腸症についての理解を深めていってくださいね!
うさぎの巨大結腸症とは?
巨大結腸症を発症する原因
うさぎの巨大結腸症とは、結腸の蠕動運動が正常に行われず、結腸内に大便が溜まり、結腸が膨れ上がる病気のことを指します。
つまり、腸が内容物(うんち)をお尻側に送るための前後の動きができなくなり、便秘になって腸に異常をきたしてしまうということですね。
うさぎの巨大結腸症の原因は、遺伝的要素が強いと言われています。
後ほど遺伝子については詳しくご説明しますが、特定の遺伝子の組み合わせを持って生まれた子は巨大結腸症になりやすいです。
ある海外の論文では、その遺伝子の組み合わせをもって生まれたうさぎ15羽のうち、15羽すべてに巨大結腸症の傾向が見られたとの記述がありました。
ではなぜその組み合わせの遺伝子をもって生まれると腸の動きが悪くなるのかについてですが、この遺伝子を持ったうさぎは大腸で水分を吸収することが難しいためです。
遺伝子疾患を持つ子は大腸でしっかり水分を吸収できず、それが理由で巨大結腸症になりやすくなる、ということですね。
巨大結腸症の症状
巨大結腸症の症状としては、一番大きなものとして「便秘」があげられます。
しっかりと排泄できないことが引き金となり、食欲減退や毛艶の悪さが現れてきます。
さらに、食欲減退が引き金となり、免疫が落ちて他の病気にもかかりやすくなります。
また、うんちの形状にばらつきがみられるようになります。
通常うんちの大きさは一定であり、形もまんまるです。
しかし、巨大結腸症になったうさぎのうんちは大きさがばらばらになり、形も細長いものなどが出てきます。
便秘やうんちの形状にばらつきがみられるようになったら、巨大結腸症を疑いましょう。
巨大結腸症への対処法
巨大結腸症が疑われる場合は、すぐに動物病院を受診してください。
うさぎの小さな体で便秘になると、すぐに命の危険に関わってきます。
また、特にうさぎは牧草を主食としているため、栄養の摂取には消化器官の役割が不可欠です。
巨大結腸症は風邪でのように免疫力を高めれば治る病気ではないため、自分で対処はできません。
また、巨大結腸症の症状と特徴が似た症状がある場合は、できるだけ巨大結腸症の予防をすることが必要です。
繊維を豊富に含んだ様々な種類の牧草や、ミネラルやビタミンを豊富に与えましょう。
もしうさぎが食べられるのであれば、様々な新鮮な野菜やハーブを与えてみましょう。
巨大結腸症を発症しやすい子の特徴は?
En-En遺伝子を持つ子が発症しやすい
うさぎの遺伝子には、En遺伝子とen遺伝子があり、Enが顕性遺伝子(優性遺伝子)、enが潜性遺伝子(劣性遺伝子)となります。
En遺伝子とen遺伝子は、それぞれうさぎの柄に特徴が現れます。
En遺伝子は黒やベージュなどのまだら模様を発現し、en遺伝子は柄を発現しません。
つまり、en-en遺伝子のうさぎは全身一色(ソリッド)になり、En-en遺伝子のうさぎは顕性遺伝子のEn遺伝子の特徴が出るためまだら模様(ブロークン)になります。
■en-en遺伝子のうさぎは全身一色(ソリッド)
■En-en遺伝子のうさぎはまだら模様(ブロークン)
では、En-En遺伝子のうさぎは柄だらけになるかというと、そうではありません。
柄同士が重なったところは柄を打ち消しあうため、柄の模様が少なく、小さくなります。
このようなうさぎの柄は、鼻の部分にちょび髭のような柄が出ることが多いため、チャーリーと呼ばれます。
■En-En遺伝子のうさぎは柄の模様が少なく小さい(チャーリー)
このチャーリーと呼ばれるEn-En遺伝子のうさぎが、先天的に巨大結腸症になりやすいのです。
それでは、なぜブリーダーのもとではチャーリーが生まれてしまうような交配がされているのでしょうか。
理由は、ブロークンを生ませるためです。
■En-en遺伝子まだら模様(ブロークン)を生ませたい!
ブロークン(En-en)を生ませるには、チャーリー(En-En)とソリッド(en-en)で交配するのが一番効率的です。
■En-en遺伝子(ブロークン)同士だと、En-en遺伝子(ブロークン)が生まれる率が下がる…!
■En-En遺伝子(チャーリー)とen-en遺伝子(ソリッド)をかけあわせれば高確率でEn-en遺伝子(ブロークン)が生まれる!
効率的なブリーディングをするために、チャーリーが必要とされているのです。
■巨大結腸症になりやすいけど、En-En遺伝子(チャーリー)が必要…
この理由から、日本ではチャーリーが生まれてしまうブリーディングが今でもなされてしまっています。
そして生まれたチャーリーは、ブロークンと区別されず、ブロークンとしてペットショップに入荷する場合が多いです。
ペットショップでブロークンとチャーリーを見分ける方法を次の章でご紹介するので、うさぎ選びの際は参考にしてくださいね。
ブロークンとチャーリーの体の柄に注目
ブロークンとチャーリーの見分け方は、主に鼻まわりの柄です。
ブロークンは鼻まわりが蝶々のように色がついています。
■ブロークンの鼻周りの例
これに対し、チャーリーはちょび髭のような小さな柄になっています。
■チャーリーの鼻周りの例
鼻まわりの他には、全身の柄の大きさや多さに注目してみてください。
ブロークンに比べてチャーリーは柄が小さく、少ないです。
柄模様と白地が2:8くらいの割合だと、チャーリーの可能性が高くなってきます。
うんちに注目
チャーリーは、若い年齢で巨大結腸症を発症してしまうことがあります。
そのような子は、うんちの大きさや形がばらばらです。
普通のうさぎは、うんちがまん丸で大きさも一定です。
これに対し、チャーリーのうんちはまん丸の他にしずく型のように、片側または両側がしぼられたようになっていることがあります。
さらに大きさが極端に大きいものが混じっています。
ケージ内に落ちているうんちに着目し、その子が巨大結腸症になっていないかを注意しましょう。
また、巨大結腸症のうさぎは便秘でお腹がはっている場合が多いため、体型にも注意して見てみましょう。
なお、うんちやお腹のはり具合で見分ける方法は、すでに巨大結腸症の傾向がある子しか見分けられません。
幼少期に正常なうんちをしていても、将来巨大結腸症になってしまうことがあるので、上に書いた柄での見分け方と一緒に使ってください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
日本ではうさぎの巨大結腸症についての知識はあまり広まっていません。
しかし、うさぎの健康を大きく左右する重大な病気なので、ぜひこれからうさぎを飼われる方や今飼っている方は正しい知識を身につけておいてくださいね。