猫のTNRの費用って誰が負担するの?補助制度はある?
「TNR」とは、特定の飼い主がおらず外で生きている猫に不妊手術を施し、元いた場所に戻し地域猫として管理していく活動のことです。
その子の状態や性質によっては、そのまま保護して里親を探す場合もあります。
最近では個人で猫の保護ボランティアを行う人も増えてきており、団体だけではなく個人としてもTNRの活動を行う方もいらっしゃいます。
また国や自治体からもTNRの活動を積極的に発信するようになり、それぞれの地域で地域猫に関するルールが決められているところが多いです。
ここで気になることが、手術費用についてです。
最初から自分の飼い猫であれば、不妊手術の費用はもちろん飼い主さんが負担します。
しかし特定の飼い主がいない外猫の場合は、誰が不妊手術の費用を負担するのでしょうか?
今回は「TNRの費用」について「誰が負担するのか」「TNRの補助制度」について解説いたします。
TNRの費用は誰が負担する?
手術を実施する人が負担する必要がある
たとえその猫を飼ってあげられなくても、何とかしてあげたいと思う人は多くいます。
しかし、実際に「なんとかする人」が少ないのは、TNRを含め猫の保護活動には費用と労力の負担があるためです。
それは「なんとかしてあげたい人」が費用と労力の負担をする必要があるということです。
「費用と労力の負担」というハードル
費用の負担があると知ると、
「お金がかかるなら、やらない」
そういって消極的になってしまうこともあります。
また、手術を施すためにはその猫を捕獲する必要がありますが、捕獲器を自治体やボランティアさんに借りたり協力してくれる人を探したり、捕獲に関してのアドバイスをもらったりするという必要もあるでしょう。
TNRの認知度は広まってきているにもかかわらず、このような費用や労力の面で普及に二の足を踏んでしまうことも多いのです。
ボランティアさんに多大な負担がかかっている現状
そのため現状では、保護活動を行うボランティア団体や個人ボランティアさんがTNRの費用を負担することが多いです。
「ボランティアをしたいなら費用を負担して当たり前」と感じる方もおられるかもしれませんが、ボランティア団体や個人ボランティアさんの費用負担がかかりすぎていることは問題です。
TNRの活動は猫のむやみな繁殖という蛇口を締め、猫も住民も地域みんなが幸せになるための活動であるのに、ボランティアさんばかりに費用や労力の負担がある状態であるためです。
不妊手術の負担を軽減する方法
TNR対応の動物病院や自治体の補助金を調べる
猫の不妊手術は動物病院によっても費用が異なりますが、通常オスが10,000~15,000円程度、メスが20,000~30,000円程度です。
ここに検査費用や入院費用がかかる場合もあり、個人にとっては少額とは言えません。
しかし最近では、特定の飼い主がいない猫への不妊治療を格安で行ってくれる動物病院や、TNR専門で手術を行う動物病院も増えてきました。
自治体によっては補助金を申請できるところもあります。
インターネットでお住まいの地域にそのような動物病院や補助金制度がないか調べたり、地域で保護活動を行うボランティアさんにうかがってアドバイスをもらえると、外猫の不妊手術の費用を軽減することができるかもしれません。
協力者を探してみる
1人で不妊手術の費用を支払えば20,000円でも、10人で協力すれば1人の負担は2,000円になります。
その子が今まで地域の方にごはんや居場所をもらえていてあたたかく見守られていた場合、その猫に携わっている地域の方に協力の相談をしてみるのも1つの方法です。
また、猫の捕獲には知識や経験が必要になるかもしれません。
ボランティアさんたちは日々多忙ですが「できる限り頑張りたい」という旨を伝えれば快くアドバイスをもらえるでしょう。
TNRの補助制度について
TNRの活動は「猫を守りたい人」だけにメリットがあるものではありません。
飼い主がおらず外で生きている猫は、そのままの状態でいれば繁殖し続けていきます。
外猫に不妊手術を施すことによって、繁殖という蛇口が締まりやがて外猫はいなくなるでしょう。
そうすると「猫を守りたい人も、猫が苦手な人も」心地良く暮らせる地域になると期待できます。
このように外猫の問題は地域全体の問題であるため、自治体によってはTNRの活動に補助制度が存在します。
各自治体によって内容が異なるため、ここでは3つの自治体の例を挙げてみます。
例)東京都北区の場合(最終更新日2019年5月)
【条件】
・北区在住であること。
・北区内に生息する飼い主のいない猫への不妊手術を区内の動物病院で実施すること。
【助成額】
オス猫5,000円メス猫10,000円を上限に、手術費の3分の2を助成(1円未満切り捨て)する。
予算に達したらその年度の受付を終了する
東京北区HP:https://www.city.kita.tokyo.jp/seikatsueisei/kurashi/dobutsu/nakosyujutu.html
例)大阪府大阪市の場合(2019年12月掲載)
大阪市では「所有者不明猫適正管理推進事業」を実施しているようです。
【支給内容】
飼い主のいない猫の不妊手術について
・自民負担1匹2,500円で手術が受けられる。
・大阪市はオス7,500円メス10,500円を負担する。
【条件】
「所有者不明猫適正管理推進事業」の適応を受ける必要がある。
・対象となる地域住民1人を含む3名以上のグループを作る。
・地域の方に活動について伝え、知ってもらう。
・ごはんやトイレなど猫のお世話に関するルールを作り地域の合意を得る。
このような手続きによって事業の適応を受け、不妊手術となります。
また手術の前に登録が必要で、手術実施後の申請は受け付けていません。
対象となる地域の特性などによって状況が異なるため、まずはその地域の保健福祉センターに問い合わせることを推奨しています。
大阪府大阪市HP:https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000020313.html
例)熊本県の場合(2020年度)
【補助対象者】
・熊本市を除く県内に生息する飼い主のいない猫
・動物病院で避妊去勢手術を行った県内在住の個人または団体
【補助金額】
オス1頭5,000円、メス1頭10,000円
(この額に満たない場合は手術費用が補助金額となる)
【手続きの流れ】
①保健所に交付申請書を提出。
②保健所から交付決定通知が来る。
③区長や自治会長などに「飼い猫ではないことの証明」を依頼する。
④「飼い猫ではない」証明を受ける。
⑤手術を実施する(「さくら耳」の耳カットが必要)。
⑥手術実績報告書を保健所に提出する。
⑦交付確定通知書が保健所から来る。
⑧交付請求書を保健所に提出する。
⑨保健所から補助金が支払われる。
熊本県動物愛護HP:https://www.kumamoto-doubutuaigo.jp/news/detail/38
東京都北区、大阪市、熊本県を例に挙げましたが、それぞれ補助金額や内容が異なっています。
大阪市では1頭2,500円という大変安価な費用で不妊手術を受けられるところが大きなポイントです。
熊本県では区長や自治会長などの公的第三者に「この猫は誰かの飼い猫ではない」という証明をしてもらう必要があるところが特徴的です。
例に挙げた補助内容は変更がある恐れがありますので、まずは地域の自治体のホームページをチェックして問い合わせてみると確実です。
このようにお住まいの地域の情報をチェックしてみると、負担を軽減する方法があるかもしれません。
まとめ
最近では積極的にTNRを推奨している自治体も増えてきました。
TNRの活動には賛成意見ばかりではなく、否定的な意見もあります。
不妊手術には麻酔のリスクや、捕獲や手術によって猫に多大なストレスを与えるリスクもあります。
しかしただ1つ言えることは、私たちが親しんでいる猫は「イエネコ」であり、人間の飼育管理が必要な動物であるということ…猫は野生動物ではないということです。
もしおうちの周辺に不妊手術済みの印である「さくら耳」ではない外猫がいる場合、まずは近隣住民の方と猫のTNRや里親探しについて話し合えると理想的です。
公的第三者である自治会の方に相談してみたり、地域で活動している保護ボランティアさんに相談してみるのも猫と地域を守る第一歩になるでしょう。
現状では保護ボランティアさんがTNRの費用と労力を負担をしていることが多いのですが、自治体の補助制度に申請したり格安で外猫の不妊手術を行ってくれる動物病院を探したりするなど、個人でできることが増え始めています。
外猫の問題は猫が好きな人だけではなく、その地域で暮らす全ての人に関わる問題としてみんなで考えていきたいことですね。