犬のリードに付けられた「黄色いリボン」の意味は?イエロードッグプロジェクトを解説!

外を歩いているとき、リードに黄色いリボンを付けた犬を見たことはありますか?
もちろん、おしゃれが目的で付けている飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、黄色いリボンには「愛犬の安全を守るための重要な理由」が隠されています。
今回は、さまざまな事情を抱えた犬たちの心の健康を守る「イエロードッグプロジェクト」についてご紹介します。
黄色いリボンの理由を知ると、今まで見ていた世界がもっと広がりますよ。
犬が付けている黄色いリボンの意味
イエロードッグプロジェクトのサイン
犬が付けている黄色いリボンの正体は、「イエロードッグプロジェクト」に参加している犬のサインです。
イエロードッグプロジェクトが開始したのは2012年6月。スウェーデンの犬の心理学者やトレーナーなどのグループが発端となり始まりました。
創設者であるエヴァ・オリヴァーソン氏が運営する非営利団体「Gulahund Yellowdog」によると、病気・加齢・怪我などの理由で神経質になっている犬が安心できる距離を保つために、「触らないで・近づかないで」のサインとして、黄色いリボンを付けるという内容です。
サインはリボンが基本ですが、イエロードッグプロジェクトに参加していることがわかる黄色いアイテムであれば、とくに規定はありません。
もともとスウェーデンは世界的にもペット先進国として知られており、国内の動物保護法は世界一厳しいともいわれています。(ケージ飼育の禁止や犬のみでの6時間以上の留守番の禁止など)
「動物とは何か・ペットとは何か」を念頭におく、人と動物が共生する国だからこそ生まれた企画だといえるでしょう。
2022年現在、イエロードッグプロジェクトはインターネットを通じて日本・アメリカ・カナダ・フランス・ドイツ・南アフリカ・スペインなどさまざまな国で広まっています。
紹介漫画が16万以上の「いいね」を獲得し話題に
昨今、イエロードッグプロジェクトが日本で認知されるきっかけとなった出来事があります。
2021年11月、ネコロス氏が投稿したイエロードッグプロジェクトについてのツイートが注目を浴び、8万以上のリツイートと16万以上の「いいね」を獲得しました。
[四コマ]
イエロードッグプロジェクトを昨日はじめて知りました。
広まればええなと思います。🐶 pic.twitter.com/tJb3EooRct— ネコロス🐾 (@youyakuya) November 1, 2021
シンプルで可愛いイラストで描かれたわかりやすい漫画は、今までイエロードッグプロジェクトを知らなかったユーザーへの認知を広げる結果になりました。
イエロードッグプロジェクトは世界的に広まっているプロジェクトとはいえ、まだ日本の認知度は低いといえます。少しずつでも知識が広がることで、犬と人間の安全な共生が目指せるでしょう。
犬が黄色いリボンを付けているときに考えられる理由
とても怖がりな性格
人間と同じように、犬の性格もそれぞれ違います。中には人間や外の世界を非常に怖がってしまう臆病な子もいます。
怖がっている状態で人間や犬に近づかれると、さらに怖がってしまったり攻撃的になってしまったりする可能性があります。
人間や犬にトラウマを抱えている
過去に虐待を受けたり他の犬に攻撃的な態度を取られたりした過去が原因で、人間や他の犬にトラウマを抱えている子がいます。
とくに一度手放されてから新しい飼い主に出会った保護犬は、心に深い傷を負っていることも珍しくありません。
自分の心や体を守るために、近づいてきた相手に攻撃してしまう可能性があります。
病気や怪我の治療・リハビリ中
性格的には問題なく散歩ができる子でも、病気や怪我の治療・リハビリ中の場合もあるでしょう。
過度な運動は控えるべき状況でも、気分転換や社会化トレーニングなどのために日々の散歩は必要です。
犬のペースで無理なく歩かせるためにも、「他の犬や人間に近づかれたくない」と思う飼い主さんは少なくありません。
加齢により神経質になっている・疲れている
年齢を重ねた犬は、神経質になったり寂しがり屋になったりします。
中には怒りっぽくなる子や、触ると唸り声をあげるようになる子もいるのです。
気が立っている状態で人や他の犬に近付かれると、トラブルを起こしてしまうかもしれません。
発情期
犬には通常年1~2回の発情期があり、個体差はありますが性格が攻撃的になる子もいます。
メスの場合は散歩中にオスの犬に駆け寄ってしまうことがあり、オスの場合は他のオス犬と喧嘩になる可能性もあるでしょう。
犬の心身を守るためだけではなく、トラブルを事前に回避するためにも他の犬を避けて散歩をしています。
メンタルが不安定
悲しいことがあったり機嫌が悪かったりしてメンタルが不安定な状態の犬は、トラブルを起こす危険性があります。
とはいえ散歩は気分転換の手段でもあるため、精神的に安定していないときこそ飼い主さんとしては「外に出してあげたい」と思うものです。
家に来たばかりの子や引っ越ししたての子など、環境の変化により不安定になることもあります。
イエロードッグプロジェクトを知らないことによるトラブル例
リハビリや訓練が思うように進まない
飼い主さんがイエロードッグプロジェクトを知っていても、周囲の人たちが知らないと犬が人を攻撃したり怖がらせたりしてトラブルを起こしてしまうことがあります。
犬のペースやメンタルが乱されることもあるでしょう。
リハビリや訓練として散歩をしている場合は、進捗が滞ってしまう可能性があります。
「しつけがなっていない」と思われてしまう
イエロードッグプロジェクトに参加している犬は散歩や社会化の訓練中でもあるため、近づいてきた人に吠えてしまうこともあるでしょう。
プロジェクトを知らない人にとっては「無駄吠えの多い犬」「攻撃性が強い犬」に見え、「しつけができていない」と思われてしまうことがあります。
相手の犬や飼い主さんに怪我をさせてしまう
心の準備ができていないときに突然近づかれると、驚いて相手に怪我をさせてしまう可能性があります。
「触ってもいいですか?」と一言聞いてもらえれば回避できるトラブルでも、触りたい気持ちを抑えられない子どもの場合は咄嗟に対応できず、悲しい結果になってしまうこともあるでしょう。
安心して散歩ができないことにより心身に不調が生じる
愛犬が他の犬や人を恐れたまま散歩できずにいると、リフレッシュできずにストレスをためてしまいます。
一日に必要な運動量を確保できなかった場合、心身ともに不調が生じることもあるでしょう。
黄色いリボンを付けている犬を見かけたらどうする?
自分の犬を近づけない
もし愛犬の散歩中に黄色いリボンを付けている犬を見かけたら、自分の犬を近づけないように配慮しましょう。
とくに人懐っこい犬や、人(犬)見知りしない犬を飼っている場合は注意してあげてくださいね。
触らずにそっと見守る
イエロードッグプロジェクト参加中の犬には、基本的に触ってはいけません。遠くからそっと見守り、必要以上のコミュニケーションを取らないように心がけてください。
「それって黄色いリボンのプロジェクトですよね!」のような声かけも必要ありません。
道を開けてあげる
プロジェクトが必要な犬の中には、歩行中の方向転換や一時停止が苦手な子もいます。
シチュエーションにもよりますが、可能な限りこちらから道を開けて相手を通してあげましょう。
道が狭い場合は自分の犬を抱きかかえ、壁側に寄って相手の進行方向を広く取ってあげてもよいですね。
小さな思いやりの積み重ねが大切です。
長時間見つめない
温かく見守ることは大切ですが、相手の犬を長時間見つめ続けないように気を付けましょう。
犬によっては恐怖や緊張を感じ、警戒心を抱いてしまう可能性があります。
イエロードッグプロジェクトへの知識がある人ほど相手の犬が気になるかもしれませんが、見たい気持ちをグッと我慢し、何食わぬ顔で通り過ぎてあげましょう。
イエロードッグプロジェクトのために私たちができること
犬にとっても人にとっても意義深いイエロードッグプロジェクトですが、日本での認知度はまだまだ高くありません。
そのため、知っている人が知らない人に広める口コミが非常に大切です。もしイエロードッグプロジェクトを知らない人がいたら、ぜひ教えてあげてください。ブログやSNSで紹介するのもよいでしょう。
一人ひとりがプロジェクトを認識して広めることで、社会全体に安心と幸せが広がります。
また、自分の犬が臆病だったり攻撃的だったりする場合も「黄色いリボンを付けたほうがいいだろうか?」と悩むこともあるでしょう。
もちろん、人と犬の安全な共生のためにイエロードッグプロジェクトを利用することは推奨されています。
しかし、実行する前に本当に愛犬に必要なことなのかを一度考えてみましょう。安易な参加は愛犬を社会から遠ざけ、問題を悪化させる原因にもなるためです。
不安であればドッグトレーナーや担当獣医師と相談しながら、愛犬にとってベストな社会化の方法を探してみましょう。
黄色いリボンと併用できるアイテム
イエロードッグプロジェクトへの参加を示すサインは黄色いリボンが代表的ですが、「リボンだけで周りに意図を伝えられるだろうか……」と不安な飼い主さんも多いでしょう。
ペットショップや通販では、「さわらないでね」「こわがりです」などのメッセージが書かれたワッペンも展開されています。犬用の洋服に縫い付けることで、プロジェクトを知らない人にも一目で愛犬の状態をわかってもらえるアイテムです。
安全性が守られていれば、手作りのアイテムでも構いません。
不安な方は、ぜひ黄色いリボンとともに取り入れてくださいね。
まとめ
今回は、イエロードッグプロジェクトの内容や、プロジェクト参加犬に出会ったときの注意点などをご紹介しました。
「信号が赤のときは止まる」という常識を皆が知っているように、「黄色いリボンを付けた犬には近づかない」という認識がもっと当たり前になれば、お互いに気持ちよく安心して生活できるでしょう。
まだまだ認知度が低いプロジェクトだからこそ、有識者の啓蒙が欠かせません。
この記事を読んだあなたも、ぜひ身近な人にイエロードッグプロジェクトを教えてあげてくださいね。